プレスリリース

ハイブリッド・ブラックホールジェット:
スーパーコンピュータが解き明かした新タイプのジェット

*2010年10月21日の読売新聞朝刊をはじめ, 15紙以上の紙面および多数のwebニュースで紹介されました。ニュートン(2011年1月号), 日経サイエンス(2011年1月号), ブラックホールとタイムトラベル(ニュートン別冊)にも掲載されました。

国立天文台天文シミュレーションプロジェクト(CFCA)の大須賀健助教、京都大学大学院理学研究科宇宙物理学教室の竹内駿氏(元大学院生、現富士通)および嶺重慎教授の研究チームは、国立天文台のスーパーコンピュータ(Cray XT4)を用いた大規模シミュレーションにより、新しいタイプのブラックホールジェットを発見しました。

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 ブラックホールはガスを吸い込むだけでなく、光の速度に近い速度で、細く絞られたガスの流れを噴出することが知られています。この噴出流(ジェット)は宇宙で最も激しいガス噴出現象の一つですが、強力な重力で周囲のガスを吸い込むブラックホールが、なぜ逆にガスをジェットの形で噴出するのか、未だに解明されていません。本研究では、光の圧力と磁場を巧妙に組み合わせるシミュレーションで、このジェットの形成メカニズムの解明に挑み、新しいタイプのジェットを世界で初めて発見しました。
 よく知られているようにハイブリッド車とは、その動力源としてガソリンと電気をうまく組み合わせることにより、環境にやさしくしかもパワフルで実用的な車を実現したものです。研究チームが提唱したモデルは、ジェットの駆動メカニズムとして従来から有力視されていた光の圧力と磁場の力という二つの力を巧妙に組み合わせることにより、従来のジェットモデルに比べ、より高速でかつ細く絞られたジェットを生み出すという画期的なモデルです。ハイブリッド車にちなみ、この新タイプの、ブラックホール近傍から噴き出すジェットは、ハイブリッド・ブラックホールジェットと名付けられました。
 より正確には、このジェットは、磁場の力で細くしぼられ、光の圧力で加速されるタイプのジェットです。多量のガスがブラックホールに吸い込まれる際、ガス中の磁場が増幅され、バネのようにぎっしり巻いた磁場構造が形成されます(図)。この構造は磁気タワーと呼ばれ、ジェットを細く絞りこみます。同時に、ガスが放射した光の圧力が噴出ガスを加速するため、細く絞られた高速ジェットが発生するのです。この研究により、宇宙で知られている最もパワフルなジェット噴出を自然に説明することに成功しました。
ブラックホールに吸い込まれるガスに働く光と磁場の力を同時に解くのは、高度な計算テクニックと超高速計算機を必要する計算であり、これまでは実行が困難でした。研究チームは国立天文台CfCAが有するスーパーコンピュータ(Cray XT4)を約2週間動かすことにより、はじめて新タイプのジェットの発見にいたりました。
 研究チームは、さらに大規模なシミュレーションを実行し、ジェットが周囲の星や銀河の進化に与える影響を解明することを計画しています。
 本研究は2010年10月25日発行の「日本天文学会欧文研究報告(PASJ)」に掲載されます。

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Ken OHSUGA