『日本書紀』成立に関する一試案
日本書紀研究, 30冊, 67 - 99, 2014年11月
(谷川清隆)
はじめに
一 『書紀』区分論
二 『書紀』の天文記録
三 研究の動機と目的
四 『書紀』中国人述作説(森説)を分析する
五 『書紀』成立試案\\
先行論文(1)、(2)において、筆者らは時代範囲を七世紀に絞って
『日本書紀』(以下、『書紀』と略す)の巻の「地・天・泰」分類を
提唱し、分類に合致する「ことば」を探し、例を示した。本論文では、
先行論文(1、2、3、4)の成果に基づいて、
『書紀』成立に関する試案を提唱する。
その前に文献(5、6)で展開された森博達氏(以下、敬称を略す。ほかの人も
同様にする)のα・β分類を紹介し、
それに続く『書紀』成立論 (森説と呼ぶ)を筆者なりにまとめ
その内的および外的な弱点を数え上げ森説が成立しないことを示す。
本論文で提案する『書紀』成立試案はα・β分類も含めて
、七世紀『書紀』の性格を取り入れる。
すなわち、筆者らの導入した天群と地群では、使用情報が違い、
漢字・漢文への態度が違い、語彙が違い、そして組織が違う。
この性格の違いを同時に満たそうとすると、『書紀』を
執筆する二つのグループとそれを支える人々がいたはずとの発想に至る。
試案はその発想を取り入れる。論文の後半では、試案そのもの、その根拠、
前提条件などを述べる。
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