日本書紀天文記録の信頼性
国立天文台報, 5巻, 145 - 159, 2002 (河鰭公昭, 谷川清隆, 相馬 充)


『日本書紀』(『書紀』と略す)の日月食および星の掩蔽(えんぺい)記録を調べた. 地球の自転速度の長期変動に関する疑問に答えるのにこの調査が有用である ことを示した. 結果によると, 記録の信頼性は『書紀』の巻に依存する. すなわち, β群に属する巻, 巻22 (推古紀), 巻23 (舒明紀)および巻29 (天武紀 下)の記録は信頼性が高いことがわかった. この分類は森博達によるものである. 『書紀』および隋書で皆既食とされた日食および 『書紀』の火星の掩蔽記録からすると, 七世紀の日本と中国の歴史書の記述は よく一致し, 潮汐項への補正を-2.0角度秒/世紀/世紀と取って地球時間遅れ TT-UT=3000秒を採用すると計算も合う. 巻24 (皇極紀) と巻30 (持統紀)の 日月食の記述は観測に基づいておらず, 予測である. 彗星, オーロラ, 火山 噴火, 地震および津波の記録はすべてβ群の巻に記述されている.

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