歴史天文学, ときどき歴史
天文月報 104巻, 343 - 353, 2011 (谷川清隆, 相馬 充)
地球自転は昔ほど速かった.
逆説的だが, そのため地球自転時計は昔ほど
遅れていた. 歴史時代の地球自転時計の遅れの経年変化を求めるための
唯一の史料が日月食や掩蔽(えんぺい)などの天文古記録である.
これらの記録を使って時計遅れを求める分野は歴史天文学に属する.
正確な時計で現象の時刻を記録していれば, その記録がもっとも役に立つ.
2000年前の時計はたいへん不正確であった。次に時計がなくても, 皆既日食を
見た記録なら十分役に立つ. 地上の皆既帯の幅が狭いからである. 部分食は
広い範囲で見えるので, 時刻が記されていないかぎり, 普通は役に立たない.
だが工夫次第によって部分食でも使える場合がある. 月による星の掩蔽も
多くは使えないが, まれに使えるものがある. 本報告では, 使える資料を増やし,
狭い時間範囲で生起した複数の日食や掩蔽を, 誤差含みで同時の現象と
見なし, 時計遅れの範囲を決める. 複数皆既食の使い方, 部分食の使い方,
日入帯食の使い方, 掩蔽記録の使い方を紹介する.
pdf ファイル
谷川のホームページに戻る
国立天文台のホームページに戻る