オールト雲の起源と原始銀河環境
The formation of the Oort cloud and the primitive Galactic environment
Julio A. Fernandez, Icarus 129(1997), 106ー119
降着中の外惑星によって散乱される氷微惑星からオールト雲ができるための条件
を解析する. 惑星摂動と外部摂動の結合効果が, 生誕惑星領域からオール
ト溜めへ彗星を移動する機構であると考えられる. 原始銀河環境からの主たる
外部摂動(すなわち通過星および銀河円盤の潮汐力)が現在と同じであったなら,
得られるオールト雲はゆるく束縛され過ぎて巨大分子雲内を通過する際に
その破壊力をもちこたえられないであろう.
それに加えて, 外部惑星領域で形成した物体の多くは, 天王星や海王星でなく,
土星や木星によって最終的に系外に放り出され, 惑星領域からオールト雲領域へ
物体を運ぶ過程は非効率的になってしまう. 木星と土星の摂動は強すぎて,
これらに散乱された物体の多くは現在のオールト雲の狭いエネルギー範囲を飛び
越えて星間空間に逃げていってしまう.
太陽系がもっと濃密な銀河環境, おそらく分子雲内部あるいは散開星団の内部で
できるなら, 惑星摂動と外部摂動の結合によってもっと強く束縛された彗星溜め
ができることが示された. 分子雲や星団の中で星が誕生するのが普通に思われ
る. その上, 水素やヘリウム含有量かたすると, 天王星と海王星の形成時間
スケールはかなり短い(数千万年以下).
このことからすると, 外部惑星領域における微惑星の大量の散乱現象は太陽系が
まだ生まれ故郷の環境にいるとき生じたはずという発想が強く支持される.
星団中の星あるいは分子雲自体の潮汐力による強い外場がもっと強くオールト雲
を数千AUの距離に束縛した可能性も見つかった.
さらに, オールト雲溜めのエネルギー幅が広ければ, 木星や土星に散乱された
物体も捕らえやすくなり, 物質移動過程も効率的になる.
彗星をきつく束縛されたオールト雲に送り込むために必要な強い外部摂動
は, 分子雲(または散開星団)が散逸してすぐに働かなくなり, 出来上がった
オールト雲を破壊することもなくなる.
このようなきつく束縛された彗星雲は太陽系の年齢にわたって外部オールト雲の
補給源であった.
はるかに濃密な銀河環境を採用したわれわれのシナリオの副産物として,
天王星や海王星の降着ゾーンからの物体ばかりでなく, 木星, 土星の降着ゾーン
の生き残り微惑星のかなりの部分がオールト溜めに組み入れられたらしいことが
挙げられる. 新彗星の物理的--化学的性質を調べれば, それらの起源場所が
異なることがわかるかもしれない. それらは太陽系が生まれた銀河環境に
ついて知るための情報の断片を構成する可能性がある.
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