天文学者って何考えてるの?

国立天文台 平成9年度 一般公開 企画
1997年11月8日(土)


「質問コーナー」への御招待


ようこそ国立天文台の一般公開へいらっしゃいました。本日は私達の総力を 挙げた様々な企画が 催されていますので、ゆっくり楽しんで見学して行ってください。そうした 企画の中でもひときわ有意義で充実しているのが「質問コーナー」です(受け付け の近く、あるいは玄関ロビーで行っています)。ここでは、バリバリ現役で 研究を進めている天文学者が天文学や宇宙現象に関するあなたの素朴な質問に 何でも答えてくれます。日頃から疑問に思っているあれやこれやをこの機会に 何でも尋ねてみてください。親切に教えてもらえることでしょう。
今年はそれに加え、天文学者自身が質問したいこと---天文学者達が今いちばん 知りたい ことは何なのかについてアンケートを行い、この冊子にまとめてみました。 天文学者自身が知りたいことですから、もちろん明解な答のある質問ではありません。 次のページからは、 「私は○○○について知りたい。だから□□□□□をやっ ている」という形式で 132個の疑問とそれに対する取り組みが並んでいます。中には専門用語が そのまま出て来るようなものもありますが、あなたもぜひこれを読んで、最先 端の天文学に関心を持ってください。そして、この冊子の内容でわからないこ とがあればすぐに「質問コーナー」に行って質問を浴びせてください。現代の 天文学が何を目標に進められているのかの一端を垣間見ていたければ嬉しく思います。
この冊子を作るにあたっては、国立天文台の職員・大学院生などの方々に 大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。表紙の 写真については、国立天文台広報普及室、天文学データ解析計算センター、 およびJPL/NASAのWWWページから引用させていただきました。

平成9年11月8日 谷川清隆・伊藤孝士 1. わたしは (太陽という身近な星で)「太陽フレア」という突発的な 磁気エネルギー解放が起こるメカニズムを理解したい。

だからまず、太陽フレアの結果起こるプラズマの熱化過程(こちらの 方が観測しやすい)を理解しようと、フレアの流体計算を行い、 観測と比較しながら熱化過程のシナリオを考察している。

2. わたしは星生成のメカニズムを理解したい。

だから赤外線観測装置を開発して観測的研究をしている。

3. 私は、一般相対論の効果(重力レンズ)を直接観測したい。

だからいま(超高精度角分解能を実現できる)光赤外干渉計を開発している。

4. 私は恒星や惑星系の誕生過程を明らかにしたい.

そのために最先端の観測設備で新しい観測をしたい.
そのためにすばる望遠鏡の赤外性能を良くするための 技術開発や基礎実験をしている.
(書類書きもしている, ですが.)

5. 私は宇宙の塵を調べたい(惑星や生命のもとになるので)

だから,すばる望遠鏡に積もる地球の塵を払う仕事をする

6. わたしは宇宙の雲を調べたい (分子雲が星の生まれる現場なので)

だから,大望遠鏡の鏡が曇らないよう工夫をしている

7. わたしは彗星の起源を理解したい。

そのために、彗星や関連する天体の観測研究を行っている。

8. 私は「宇宙の膨張が止まるかどうか」を知りたい。

だから、「VLBI観測で減速定数の計測」を行っています。

9. わたしは星形成を理解したい。

だから星形成の材料となる分子雲がいかに作られるかを 物理法則を使って理論的に説明しようとしている。

10. わたしは今までよく見ることができなかった宇宙の現象を見たい.

だから光赤外干渉計を作っている.

11. I want to understand the stellar populations in barred galaxies.
(わたしは棒状銀河内の星の種族を理解したい.)

So, for the present, I am studying their chemical composition and trying to interpret their chemical evolution.
(だからいまのところ棒状銀河の化学組成を調べ, 化学進化を理解しようとしている.)

12. I want to understand if the basic idea of homogeneity and isotropy of Big Bang theory can be justified by light element abundances observed at high redshifts and in halo population II stars.
(ビッグバン理論の一様性と等方性という基本的発想が高赤方変位天体や 銀河ハローの種族II星で観測される軽元素の存在量から正当化されるかどうか 理解したい.)

So, now I am investigating the spectral line formation processes in turbulent media to estimate quantitatively the spread of the abundances caused by correlation effects in random velocity fields.
(だからいま, わたしは乱流媒質中のスペクトル線形成を調べ, ランダムな 速度場内の相関効果に起因する存在量の広がりを定量的に見積もっている.)

13. Watakusi wa hosi fu to AGNs jets wo riyu ga wakaritai.
(わたしは星風とAGNジェットの原因を理解したい.)

Ima, watasi wa riron to sugaku MHD sitsiumontati ga kenkyu-site iru.
(いま, わたしは理論的にまた数学的にMHDの問題を研究している.)

14. わたしは、銀河系全体にひろがる星間分子雲の地図をつくりたい。

だから、電波望遠鏡をチリのアンデス山中に置いて、日本からは 見えない南の天の川を観測している。

15. わたしはどのように、地球やほかの太陽系の惑星ができたのかを理解したい.

だから今は特に質量が大きい木星型の惑星が生まれる過程を、計算機を使って 数値シミュレーションを行う事で調べている.

16. 私は恒星系の振動現象を理解したい.

だから数値シミュレーションや振動の解析をしている.

17. I want to understand Where we are and Why we are there.
(我々がどこにいるのか, またなぜそこにいるのか理解したい.)

So, for the present, I am investigating the evolution of galaxies.
(だからいまわたしは銀河の進化を研究している.)

18. わたしは銀河系内のガスの性質を理解したい。

だから電波望遠鏡を使って、銀河系のいろいろな場所のガスを観測している。

19. わたしは、宇宙の塵に阻まれてこれまであまり奥深くまで見えなかった活動現象 (星生成活動、活動銀河核など)を理解したい。

だから赤外線の観測装置開発と観測を行なっている。

20. I'm interested in the furthest objects ever seen, the so called QSOs.
私は、何よりも遠方にある天体(クエーサ)に興味を持っています。

At present, I'm doing model calculations of QSOs.
現在は、クエーサのモデル計算に取り掛かっています。

21. 天王星と冥王星の横倒し自転、金星の逆行自転、木星・土星・海王星の衛星の 逆行公転の起源を知りたい。

講義等でこの話題を取り上げ、この問題にチャレンジする学生を探している。

22. I just interested in some general properties of motion of asteroids and Nereid.
(わたしは小惑星やネレイドの運動の一般的性質に興味があります.)

For the present I'm trying to construct a semi-analytical theory of motion for the latter.
(いまのところネレイドの運動の半解析的理論を作っています.)

23. 私は銀河の進化過程を知りたい。

そこで、QSO吸収線系の電離状態や化学進化について、 理論計算結果と観測を比較、シナリオを検討している。 また、観測データを自給自足するため、 すばる望遠鏡の高分散分光器の開発に参加している。

24. わたしは重力波で宇宙を眺めてみたい.

だから重力波検出用のレーザー干渉計(TAMA300)を開発している.

25. わたしは星がものを放出するしくみを理解したい.

だからいまいろいろな星の赤外スペクトルの特徴を調べている.

26. わたしは小さい恒星が質量放出を起こす過程を理解したい.

だからいま球状星団の晩期型星の赤外観測をしている.

27. わたしは銀河のもつ多様な性質の因果関係を理解したい。

そのために多数の銀河のデータの収集及び統計解析を行なっている。

28. 私は宇宙の中で銀河がいつ誕生し、どのような道を歩んできたかを 理解したい。

だから楕円銀河・銀河群・銀河団における重元素の起源を調べ、 宇宙の各階層の化学進化の研究をしている。

29. わたしはいま大質量星周辺の物理状態を理解したい。

だからいま近赤外光分散分光器を開発して、観測している。

30. わたしはニュートン力学で宇宙を説明したい。

だからわたしはニュートン力学で説明できる現象ばかり追いかけている。

31. わたしは地球の起源と進化の必然性を理解したい。

だからいま惑星形成の数値シミュレーションを行っている。

32. 私は宇宙の起源と生命の起源、その進化と互いの関連を理解したい。

だからいま、宇宙の起源と多少とも関わりのあることをしている。

33. 私は、宇宙を理解したい。

けれど、難しいから、その一部分だけ研究している。

34. 私は、まだ誰も見たことのない微小な小惑星の分布を知りたい。

これをスバル望遠鏡で観測するべく、シミュレーションなど、 色々準備を進めています。

35. 私は宇宙を理解したい。

だからマッチョを調べている。

36. I want to understand the motion of a close binary system.
(私は近接連星の運動を理解したい.)

So, for the present, I am doing to study the effects of the disturbing forces of the system (e.g. tide, rotation, drag, radiation pressure, .........).
(だからいま私はこの系に働く摂動力の効果(たとえば, 潮汐, 自転, ガス抵抗, 放射圧など)を調べています.)

37. もっと広く遠くを見たい.

で、広視野撮像装置をつくってま.

38. 私は時間的にも光度的にも、いつ変光するか予測出来ない 「不規則型変光星のカオス的振る舞い」を調べたい。

だから、世界中から過去に観測されたこれらの星のデータを集め、時系列解析、 パワースペクトル等による解析法を駆使し、 「不規則型変光星の振る舞いの中に秘められた規則性の有無を探る」ための観測と 研究を行っております。

39. わたしは太陽系についてもっと詳しく知りたい。

だから彗星の観測をしています。

40. わたしは、銀河系に分布するX線プラズマや星間ガスの起源や運動を理解したい。

だから、今のところは計算機で数値シミュレーションをしている。 将来は、観測の役に立ちたい。

41. 私は宇宙の過去、現在、未来を知りたい。

だから遠方の天体と近方の天体の構造をVSOPを用いて調べ、 宇宙の膨張する速度を調べている。

42. 私は銀河の形成と進化の過程を理解したい。

そのために、銀河の光度進化および化学進化を理論的に計算し、それを 観測と比較する研究を行なっている。
同時に、この結果を用いて宇宙論パラメータ に制限を与えるテストについても研究している。

43. わたしは引力で相互作用する多体系のカオスを理解したい.

だからいま三体問題の運動を計算機シミュレーションで観測している.

44. わたしは 太陽からはるか遠方にある「エッジワース・カイパーベルト」 について探究したい.

だからいま 太陽からわずかな距離にある地球上で数値計算と観測準備に 情熱を燃やしている.

45. Yo estoy interesado en entender c\'omo se formaron las galaxias.
(私は銀河がどのようにできたか、に興味があります.)

Para tal prop\'osito es necesario estudiar las poblaciones estelares de las galaxias de tipo temprano (ell{\'{\i}}pticas y lenticulares), en particular conocer los principales par\'ametros que caracterizan dichas poblaciones, como son el contenido met\'alico, la edad, la proporci\'on entre estrellas enanas y gigantes y si los distintos elementos qu{\'{\i}}micos se encuentran en las proporciones distintas a las de nuestro entorno solar.
(だから早期型銀河(たとえば楕円銀河やS0銀河)の星の種族を調べる必要があり ます. 私はとくに種族の特徴となる金属量, 年齢, 矮星と巨星の存在比などの パラメータを決めることに興味があり, 太陽近傍の金属量と違っているかどうか を知ろうとしています.)

46. わたしはあらゆる元素がどこからやってきたか知りたい。

だからいま新星、超新星などによる元素合成を調べている。

47. わたしは宇宙をもっとはっきり見たい。

だから地球大気のゆらぎを補正する補償光学(AO)を作っている。

48. 私は銀河がどうやってできたかを知りたい。

だからすばる望遠鏡を作っている。

49. わたしは人類の未来について知りたい。

だから、地球外文明の存在に興味を持っているが、いま何もしていない。

50. わたしは宇宙の始めの様子を知りたい。

だから、それが観測できる手段である重力波検出法の開発を進めている。

51. わたしは銀河の中心核の活動の様子や、周辺の物理状態を理解したい.

だからいま銀河の中心核のまわりのガスやプラズマを観測している.

52. 私は生命の起源を知り, 宇宙生命の可能性を研究したい.

従って電波望遠鏡による分光観測によって星間物質中の有機物を探している.

53. 私は自分の体を作っている元素の起源を知りたい.

だから星の大気や星周物質の組成を可視光や赤外線分光観測によって調べている.

54. 私は地球以外に植民する可能性を探りたい.

だから系外惑星の探査をするため高分解能の観測装置を作ろうとしている.

55. 私は宇宙で一番小さい星(恒星)を発見したい.
それは褐色矮星の最も小さいものだろう.

だから赤外線で高分解能の観測をしようとしている.

56. 私は原始惑星系円盤の組成と星間物質との関連を知りたい.

だから彗星と星間雲について分光観測を行い, 組成や変成の状態を 調べようとしている.

57. わたしは「宇宙でなぜジェットが噴出しているか」を理解したい.

だからいま「電磁流体力学の方程式」をこねくり回している.

58. わたしは「宇宙になぜブラックホールがあるのか」を理解したい.

これはいたずら好きの神様が宇宙に落し穴を掘ったのでにゃかな.
神様のなかにもドジなのがいて落ちちゃったかも.

59. 私たちの大先輩である江戸幕府の天文方が、西洋の天文学をいかに 苦労して吸収しようとしたかを知りたい。

だから、私も苦労して天文方の古文書を判読しています。

60. わたしはすべての経験科学をつくる方法をつくりたい。

だからいま認識方程式を作っている。

61. わたしは円盤を理解したい。

計算機の中で円盤を作って調べています。

62.私は2つの恒星が、お互いの共通重心の周りを運動する事に よって起こる星食関係を利用して、恒星の大気構造をしらべたい。

だから、測光観測や偏光観測を協同研究者と行っている。

63. 私は初期の銀河や宇宙を知りたい。

だからいま遠方の天体を研究している。

64. わたしは、天文現象のすべてを予報したい。

だから、いろいろな天体の位置と運動を調べている。

65. 私は、新しい装置の``目''で、まだ見ぬ宇宙の姿を見てみたい。

だから、すばる望遠鏡用観測装置の開発をしています。

66. わたしは、太陽フレアの発生機構を理解したい。

だからいまX線コロナ・ループの時間変化を調べている。

67. わたしはダークマターが何で説明できるかを理解したい.

だから褐色わい星の研究をしている.

68. わたしは宇宙の化学分析からその生成と進化を理解したい.

だから分光学の研究を進めている。

69. わたしは星の外層大気構造を理解したい。

だからISO (赤外線宇宙望遠鏡)などで星の赤外線観測を行なっている。

70. わたしは 「宇宙には地球のような惑星がどれくらいたくさんあるのか?
どのような物理条件がそろえば地球ができるのか?」 を理解したい.

だからいま 「惑星系の形成過程」 を「理論計算および、太陽系や生まれた ばかりの星の観測」を行なってしらべている。

71. わたしは太陽系の起源を知りたい.

だから太陽系の始源天体の観測的研究を行っている.

72. わたしは太陽系天体がどのような物質からできているかを知りたい.

だから太陽系の小天体の物質科学的研究を行っている.

73. わたしは惑星地球の起源を知りたい。

だから惑星科学的見地から地球科学を研究している.

74. わたしは、天文や物理を記述する数学をあみだした人々の思考過程を理解したい。

だから、いつか科学史を勉強したいが、今そこまで手が広げられない。

75. わたしは惑星系の誕生過程を理解したい。

だから惑星形成の母体となる星周円盤の進化を調べている。

76. 私は、この宇宙がどこから来たのか、何なのか、どこへ行くのか を理解したい。

だから、今 原始宇宙の手がかりとなる AGN, Quasar の研究を進め、 この宇宙の運命を決める宇宙論パラメータの手がかりを探っていま す。手がかりを増やすために、いろいろな波長域でのスペクトルを 解析しています。

77. 私は、愛と友情の真実を確かめるために宇宙の果てを探っている。

と思ったら、人生の果てが見えてきたような気がするが、まだ 真実はつかめていない。人生は希望に満ちていることを観測したい。

78. I am interested to understand how the different elements (oxygen, iron etc) that compose the various objects in the universe came into being,
(私は宇宙のさまざまな天体を構成する異なる元素(酸素, 鉄等)がどのように 生まれたのか知りたい.)

that is why I am studying stellar nucleosynthesis (the sequences of nuclear reactions taking place in hot stellar interiors during the various phases in the lives of stars);
we know that almost all elements, except the lightest ones, are produced by stars.
(だから私は星の中での元素合成(星の一生の間に星の内部の高温部分で起こる 連鎖核反応)を調べている. 軽元素を除くほとんどの元素が星の内部で作られたことが わかっている.)

79. 私は、活動銀河核の謎を解明したい。

だから、太陽フレアの研究をしている。

80. 私達人間はなぜこうして存在しているのだろう。
私達のまわりの花や鳥、この地球はどうやって生まれてきたのだろう。
夜空に輝く星ぼし、その集団である銀河、そして
そもそもこの宇宙は、どうしてできたのだろう。

どうしたら、この問に答えられるでしょう。
判らない。でも天文の研究をします。

81. わたしは恒星の内部を観測的に理解したい.

だから恒星の振動を調べている.

82. わたしは口径8mの「すばる」望遠鏡を使って宇宙の元素の歴史や 原始天体(銀河)の形成過程を観測したい。

だから高分散分光器を製作している。

83. すばるの高分散分光器の性能を完全に引き出したい.

だから高精度の視線速度(1cm/s)の計測で恒星の惑星系を探したい。

84. 私の人生は、なぜ、どうして、このように陰惨で暗澹たるものに
落ち込んでしまったのか。その縁(えにし)を知りたい。

だが、それを知ったからと言って人生をやり直せるわけでもあるまい。
それでも私は問い続ける。
あの時あの場で私はどうしてあのようにしか振舞うことができなかったのか?
どうしてあの時もう一歩踏み出して勇気を振り絞ることができなかったのか?
どうしてあの場で今一歩踏み堪える力を持つことができなかったのか?
その答を探しながら屍のように生きる日々。
もしも居られるなら神よ、私に平安を与えたまえ。

宇宙の研究は私にとって、再生への希求そのものである。

85. 宇宙の果てで、星が生まれはじめた直後の、若い銀河をみつけたい。

巨大電波干渉計を地球上でいちばん空気の澄んだところに建設すべく、 南米はアンデス山脈の標高5000mにある砂漠地帯を放浪している。

86. さまざまな銀河の中心核に潜むブラックホールの「食生活」について知りたい。

ブラックホールの「主食」であると思われる星間ガスを、野辺山の電波干渉計で くわしく調べている。

87. 銀河にも「派手な人」「地味な人」いろいろなタイプがいるのはなぜか知りたい。

銀河を形づくる星を生み出す母胎(高密度ガス)がどうなっているのか、 野辺山の電波干渉計で観測している。

88. 空気があっても、ゆらゆらと像がボケない、シャープな電波画像が欲しい。

ゆらゆらと像をボカす原因の「水蒸気」がリアルタイムで測定できるように、 高精度の大気放射量測定装置を作っている。

89. 月は地球の子供、兄弟あるいは他人という色々な説がある。
わたしは月と地球の本当の関係を知りたい。

だからその鍵となる月中心核の大きさを知るために月の重力を 人工衛星をつかって測ろうと計画している。そのために2003年 の月探査周回衛星計画に向けて機器の開発や計算機プログラム の開発を行っている。

90. 西日本の大地に働いている東西方向の圧縮力が一昨年の兵庫県 南部地震を引き起こした。なぜこんな力が日本に働いているか を知りたい。

私はその原因はインドのユーラシア大陸への衝突にともなって東アジアの陸塊が 東へ毎年1 〜 2センチづつ押し出されているせいだろうとにらんでいる。 それを証明するため天然の電波星や人工衛星の電波を使って西南日本の 大地の動きと中国や韓国の大地の動きの関係を調べている。

91. あるはずなのにどうしても観測できない地震(silent earthquake) をとらえたい。

地震がみえない原因は断層運動がゆっくりすぎて地面が揺れない せいであろうと私は考えている。だから私は地面の揺れを観測す る地震計ではなく、天体観測によってゆっくりした地面の動きを 観測してそのしっぽをつかまえようと思っている。

92. 私は地球の内部構造と中で起こっている運動を知りたい.

だから超伝導重力計の国際観測網を作り,観測する.

93. 私は、人類が宇宙へ進出するのは自然が我々に課した責務だと考えている。

だから、そのための基礎となる宇宙の知識を広めるために日夜天文学を 研究している。

94. 私は、自分が知っていることを他人に伝えるのが好きである。

だから、自分が天文学の研究で得た知識を人々に知らせるために 広報活動にも力を入れている。

95. 私は、人類が宇宙進出するに当たって、そのガイドマップを作りたい と思っている。

だから、宇宙のどこでどのような星がどのようにできるのかを調べる ために、銀河系や銀河での星間分子ガスの様子を調べている。

96. 私は、昔から地図を見て、そこがどのようなところか想像するのが好きだった。

だから、いままで誰も見たことがない場所の地図を作るために、天体の 観測をして、「天体の地図」を作っている。

97. 私は、いろいろなところへ出かけるのが好きである。特に、「探検」が してみたい。しかし、地球上はもはや探検し尽くされてしまった。

だから、宇宙を探検するために、天文学の研究を行ない、想像の上での 探検を行なっている。

98. 私は太陽系外に人類が居住可能な惑星があるのかどうかに関心がある。

だから、ドレークの式で示される因子を確定するために、星の周りで 惑星がどのようにできるのかの手掛かりを電波を使って探している。

99. 私は手軽に天体のデータを扱えるソフトウェアを使いたいが、 思うようなものが手近にない。

だから、自分で、希望に合う天体データ処理用ソフトウェアを作っている。

100. 私は機械が動くのを見るのが好きである。

だから、望遠鏡を動かすためのソフトウェアを作っている。

101. 宇宙パラメータを測定したい。研究者になりたい。

だから今MAGNUMプロジェクトをやっている。

102. 私は、どうして世界がf=maという微分方程式で構成されているのかを知りたい。

しかしこれは物理学だけでは解決できそうにないので、いずれは 出家して仏陀の教えの中からその理由を見い出すつもりである。 天網恢恢疎にして漏らさず。呵呵!

103. わたしは星の生まれる所の詳細な構造を理解したい.

だからいま国内VLBIネットワークを使って水メーザーの観測研究をしている.

104. わたしは我々の銀河系の本当の姿(形と運動)を理解したい.

だからいまVERA計画実現に向けて準備をしている.

105. わたしは膨張宇宙の中で銀河がどうやって形成されるのか理解したい。

だから、銀河の観測データを調べたり、銀河形成のモデルを考えたり している。

106. わたしは、Saha and Tremaine (1992, Astron. J. 104,1633--1640, Symplectic integrators for solar system dynamics) の1636ペー ジ左段の(19a)(19b)式の次のパラグラフにある記載 ``Since J is fixed in the surrogate system (tilde{H}), and J is fixed in the real system H, ...''の真意が図りかねるので、これを明解にしたい。

なぜなら、``fixed''を『不動の、一定した』という意味だと思えば、 正準変換を行う以前の変数であるtilde{J}やJは周期項を含んでいるのだか ら、これらは明らかに``fixed''ではない。従って、上記で用いられている tilde{J}, Jは、本来は短周期成分に関して平均化された変数tilde{J}*, J*を 意味しているはずだからである。

107. 銀河はどのように生まれてくるのだろう。

銀河誕生のシミュレーションをしている。

108. わたしは宇宙プラズマがなぜ爆発するかを理解したい.

だからいま人工衛星や電波望遠鏡を使って太陽フレアを観測している.

109. わたしは他人があっと驚く性能の望遠鏡を実現したい.

だから「ようこう」衛星の硬X線望遠鏡を提案・設計した.
(ほぼ目標を達成できた。次は何にチャレンジしようかな?)

110. わたしは クェーサーなどの活動銀河核が、太陽の1兆倍ものエネルギーを どのように作りだし、光速の90 %を越えるジェットをどのように加速している のか、また、これらの天体がどのようにして生まれるのか を理解したい.

だからいま VSOP(電波天文衛星「はるか」)を使って、若いクェーサーの 中心核を精密に調べる観測 をしている.

111. わたしは全宇宙の大きさを正確に測りたい。わたしは天文学を精密科学にしたい。 わたしは楽しい天文学をやりたい。

だからVLBIを天文の装置にしようと大変苦労している。

112. わたしは10年スケールの気候変動のメカニズムを理解したい.

だからいま,地球表面上の水の質量移動によって生じる極運動を計算し, 地球回転の立場から見た,海洋と大陸間に存在する10年スケールの水循 環について研究している.

113. わたしは日本において, 地球温暖化に伴う海面上昇のシグナルを検出したい.

だからいま, 検潮所の地殻変動を精密に監視するGPS測位の精度向上のため, GPS測位の大きな測定誤差要因である水蒸気の動態について研究している.

114. 私は宇宙の構造を理解したい。

だからたくさんのデータを集めたデータベースを作っている。

115. わたしは、日本地図を描くがごとく、私たちの銀河系の精密な 三次元立体地図を作りたい。

だからいま、「宇宙の灯台」とも言うべき宇宙メーザーを見て、 どうしたらそれらの位置と距離を正確に測定できるのかを、研究している。

116. わたしは、予測できない未知の天体現象を 自分で見つけてみたいと思っている。

だからいま、国立天文台水沢観測センター10m電波望遠鏡での観測に使用する 電波分光計を立ち上げている。
なかなか立ち上がらなくていらいらするが、毎日夜ぐっすり眠っている。


117. 私は将来、国立天文台の台長になりたい。

そのために研究のみではなく、日頃の政治活動も抜かりなく行っている。
ちなみに、天文台長を退官したら文部省の審議官になるつもりである。

118. わたしは電波を使って未知の天体を発見したい。

だから人類として究極の電波望遠鏡を作りたい。そのために現在南米チリ の5000m高地でさまざまな調査をしたり、装置の検討を行っている。

119. わたしは宇宙の仕組みと今後の進化を理解したい.

だからいま天体の形成過程を研究している.

120. わたしは、何でもいいから誰も見たことがないような変なモノを観測してみたい。

だからすばるの初期に使う観測装置を製作している。

121. わたしは宇宙がどのようにでき、銀河が作られ、星が生まれ、惑星ができ、 生命が発生したのかを理解したい.

だから銀河が生まれる様子や銀河の赤ちゃん(原始銀河)また 惑星系の赤ちゃん(原始惑星系)を調べている.

122. わたしは「LMSA」を使って原始銀河や宇宙のはてを観測したい.

だからその計画の実現のために、計画の立案、推進、装置の開発を行っている。

123. わたしは、地球がどこまで理想的な弾性体であるかを知りたい。

だから、長周期の潮汐現象を調べている。

124. わたしは、海面が本当に上昇しているのか知りたい。
三陸のリアス式海岸が今でも沈降し続けているのか知りたい。

だから、海面の高さを測る検潮所の位置変化を、GPSとVLBIを使って 見張っている。

125. わたしは、地球の内部の流体核と固体核の動きを知りたい。

だから、重力計を使って微細な重力加速度の変化を観測している。

126. わたしは小惑星というものが何であるかを理解したい。

だからその軌道進化を調べるためにいろいろな計算をしている。

127. わたしはカオスの本質およびその扱い方を理解したい。

だから膨大な量の数値計算をしている。

128. わたしは太陽系の起源や太陽系外の惑星系の形成過程を理解したい。

だから、いつか本格的に惑星系形成について勉強したいが、まだ小惑星 についての解析に留まっている。

129. わたしは、アインシュタインの一般相対性理論が正しいかどうか確かめたい。

だから、一般相対性理論から予言される重力波を見つけるための装置 (TAMA300)を開発している。

130. わたしは、電磁波では見ることのできない宇宙の姿を観てみたい。

だから、重力波検出装置の感度を高めるために日夜奮闘している。

131. わたしは、宇宙の始まりを重力波を通して直接観てみたい。

だから、ちょっと難しいものがあるかもしれないとは思いながらも、 重力波検出装置の感度をより一層高めるために粉骨砕身の努力をしている。

132. わたしは宇宙ではどういう環境で分子が作られるのかを知りたい。

だからいろんな分子を観測して、分子雲の化学組成と物理状況の 関係について研究している。

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