小分母に無縁の人工衛星中間軌道

                                   井上

 

 人工衛星の主問題を対象とする。それは主問題に限定しても「臨界軌道傾斜角の困難」の問題を論ずる上では「充分」と考えられるからである。通常は「楕円軌道」の軌道要素を新たな変数に据え、「要素変化の式」を摂動の手法に依って解いて、近似解を求めて居る。

我々は、楕円軌道を与えるのとは異なる「力の場(人工系)」を導入し、此の軌道を表わす

軌道要素を変数とする「要素変化の式」を立てた。所謂「中間軌道」の方法の活用で有る。

当該軌道には「要素の資格」を有する未定定数を含ませて置いた。それは、此の定数に「適切な値を取らせる」事に依って「要素の摂動」を短周期変化】のみに限定する事

が可能となるからで有る。本法に於いては、「長周期摂動(長周期変化)」なるものは一切

現われる事は無いので有る。従って、「臨界軌道傾斜角」の存在の故に出現して来る「小分母」なるものは、完全に姿を消して居る。近似解を構成して居るのは、積分定数〗〖永年変化及び短周期変化の三種のみで有る。本法に基づいて、より高精度の運動理論を建設する事は、勿論、可能で有る。