講演概要

9月14日
セッション1 星形成1 (座長:TBD)
13:00 - 13:30富田 賢吾Non-ideal MHD effects and Early Formation of Circumstellar Disks
TBA
13:30 - 14:10松本 倫明高解像観測時代の高解像シミュレーション - 高密度分子雲コア MC27/L1521F のモデリング(招待講演)
ALMA 望遠鏡の運用がはじまり、観測は高解像の時代に突入した。他方数値シミュレーションも適合格子細分化法(AMR法)によって高解像時代になった。観測とシミュレーションの両者が高解像になったことにより、両者の結果を直接比較することができる。国内の高密度シミュレーションは富阪(1996)の2次元入れ子格子にはじまる。本公演では階層格子による高解像シミュレーションの歴史を外観しつつ、講演者自身による高密度分子雲コア MC27/L1521F のモデリングの研究を紹介する。この研究ではALMA望遠鏡を用いて得られたアーク状の構造を、流体シミュレーションで再現した。シミュレーションでは複数のガス塊に分裂し、質量降着の様子は競争的質量降着シナリオに類似した。
14:10 - 14:50西合 一矢理論と観測による観測的ミッシングリンク段階の解明(招待講演)
高密度分子雲コアから原始星へと進化する星形成の極初期段階の進化は、観測的な情報が著しく欠落しているために、事実上の観測的ミッシングリンクとなっている。理論的には、その間にファーストコア天体が形成され、それが重力崩壊することで星コア・原始星円盤系が形成されると予想されている。ファーストコアとその直後の進化段階の天体は、連星分裂、アウトフロー放出、原始惑星系円盤の形成にかかわるため重要であると思われているが、いまだに観測的に未発見である。本講演では、まず我々が行ってきたファーストコア天体の力学進化と観測の理論予測の研究を紹介し、つづいて、ファーストコアから星コアが形成された直後と思われる天体の発見について紹介する。この天体は、我々の理論予測計算と卓越した能力を持つALMA/JVLA望遠鏡などの観測データを組み合わせることで発見されたものであり、観測的特徴はファーストコア天体とほぼ一致する。しかし、同時に星コア起源と思われるX線も同時に検出された。この天体の観測的特徴はファーストコアからの星コア形成について新しい描像を示すものであり、理論研究へのフィードバックが期待される。
14:50 - 15:10古屋 玲ファーストコア候補を含む低光度天体からの分子流の観測的特徴
原始星形成の最初期段階を調べるために、我々は非常に若いと考えられる天体のサブミリ波干渉計観測を行った。その結果、非常にコンパクトな分子流を検出した。この分子流がもたらす情報を解釈するためには、これまでに観測されている同様の天体との比較も行う必要がある。なぜならば、光度やSEDだけからはファーストコアの候補天体と褐色矮星へ進化するであろう原始星は区別できないからである。現時点では、観測的に同定されている両者の候補天体の数は多くはない(特に前者がたくさんあっては困る!)。つまり、ファーストコア候補と当初は考えられながらもその後、それを否定する状況証拠が積み重なった天体がある。その意味で「真のファーストコア候補天体の数」は数天体に絞り込まれ、候補天体に関する多数の論文が出版された7-8年前のバブル的状況は健全な状態に落ち着いた。だからこそ、今、「これまでに観測されている同様の天体」の統計的性質をまとめる義務が観測家にはある。今回、ファーストコア候補天体と褐色矮星へ進化するであろう原始星からの分子流の統計的性質を中心に講演を構成する。時間が余れば、そのなかで我々が同定した天体の位置づけをお話する(統計的性質と個別観測の結果から構成される論文を準備中です。)
15:10 - 15:30大橋 聡史星形成直前のコアからのwing成分の検出とコアの形成シナリオの考察
分子雲コアは乱流が散逸することで非平衡状態へと進化し星形成を始めることが示唆されている(e.g., Nakano 1998)。我々はVLAを用いてオリオン座AGMCの星なしコアTUKH1222をCCSとNH3輝線で観測した。その結果、NH3コアをCCSが囲むように分布していることが明らかになり、さらに線幅は0.2 km/sと狭く、熱的運動が優勢である。これは原始降着運動を示すL1544と類似しており、星形成直前のコアと考えられる。今回新たに野辺山45m望遠鏡によるNH3の1点観測を行った結果、0.2km/sの熱的線幅だけでなく、wing成分も検出した。NH3輝線からメイン成分は回転温度が9.2 Kと見積もることができ、wing成分はupper limitで20 Kと導出できた。これはwing成分はメイン成分に比べて高温であることを示唆している。さらにCS(1-0),(2-1)の観測では乱流が卓越していることから、まわりのガスの乱流がショックを通過することで空間的に素早く散逸し、高密度コアを形成している可能性を示している。
15:30 - 15:50大屋 瑶子若い低質量原始星に付随するエンベロープガスの速度構造の解析
原始星円盤は惑星系の母体と考えられ, その物理的・化学的性質を探ることは, 惑星系の起源を理解する上で重要な情報源となる。しかし, 低質量原始星の形成過程において, 円盤がいつどのように形成されるのかについては, 未だ解明されていない。我々はこの問題に取り組むため, おうし座にあるL1527やおおかみ座にあるIRAS 15398-3359などをALMA (Cycle 0/Cycle 2) で観測した。L1527の観測ではBand 6でCCH, H2CO, c-C3H2, CSなどの分子が, IRAS 15398-3359の観測ではBand 7でCCH, H2COなどの分子が検出された。我々は, これらの観測データに加え, へびつかい座にあるClass 0低質量原始星IRAS 16293-2422のSMA, eSMAおよびALMA (Cycle 0 SV, Cycle 1) のアーカイブデータの解析を行った。ALMAで観測した2つのClass 0低質量原始星は, いずれも原始星付近の暖かい領域に炭素鎖分子を豊富に含むWarm Carbon-Chain Chemistry (WCCC) 天体である。一方IRAS 16293-2422は, 多様な飽和有機分子 (COMs) を含む典型的なHot Corinoとして知られる。いずれの観測でも, 100 AUスケールの高い分解能が実現されている。解析の結果, これらの天体のエンベロープの速度構造が, 回転しながら落下するガス円盤のモデルによって説明されることがわかった。このモデルにおけるガスの運動は, エンベロープガスのもつ比角運動量と, 中心星の質量によって決定される。ここで, エネルギーと比角運動量の保存のため, ガスは近日点 (遠心力バリア) より内側に落ち込むことはできない。上記の天体について, 原始星付近でのガスの速度場とモデルとの比較から, 遠心力バリアの位置と中心星の質量を推定した。また, 2つのWCCC天体では, アウトフローの速度場を放物面モデルを用いて解析した。本解析により, 異なる化学的特徴を示す天体間であっても, エンベロープガスの物理的構造はよく似ていることが明らかになった。また同時に, 各分子の速度構造から, 分子毎に異なる特徴の分布をもつことがわかった。このことは, WCCC天体やHot Corinoを特徴付ける化学組成の進化を追う手掛かりになると期待される。
セッション2 円盤1 (座長:TBD)
16:10 - 16:50相川 祐理Astrochemsitry in star-forming cores and protoplanetary disks(招待講演)
分子雲中のガス、氷、ダストは星形成過程において円盤に取り込まれ、惑星系の材料物質となる。我々は星・惑星系形成過程における分子組成・同位体比進化の数値計算を行い、その結果を天文観測と比較することで、星間物質から惑星系物質への進化の解明を目指している。 分子雲での化学反応の時間スケールは、ほとんどの場合、系の動的進化の時間スケールと同程度か長い。よって化学進化は非平衡であり、重力収縮などの動的進化に沿って反応速度方程式を解く必要がある。現在では、高密度分子雲コア、原始星コア、原始惑星系円盤等について、それぞれ系の動的な進化や物理構造を考慮した組成モデルが多数出版されている。一方最近、これら各天体の組成進化を解く際の「初期組成」の重要性も認識されてきている。例えば、原始星コアの組成は、その前段階である高密度分子雲コアで生成された氷の組成に大きく影響される。よって、星・惑星系形成領域での分子進化の解明には、分子雲の形成から原始惑星系円盤までの進化全体を視野にいれて研究を進めることが重要である。 講演では、分子雲形成から、高密度分子雲、原始星、原始惑星系円盤までの組成進化モデルを概観し、これをALMAなどで得られている観測結果と比較する。
16:50 - 17:10花輪 知幸原始惑星系円盤HL Tau の多色輻射平衡モデル
紫外線からmm波までの波長域を226色に分解し、それぞれの波長ごとに輻射平衡を求めた数値モデルと ALMAにより得られた撮像結果の比較から 原始惑星系円盤 HL Tau の構造を議論する。高い輝度分布を説明するには、星からの放射の約7割が円盤で一度は散乱吸収されるぐらい膨らんでいる必要がある。一方で sub mm 波で明るく輝く部分は幾何学的に薄くなければならない。mm波 sub mm波で明るい円盤とするためには、この波長帯で 吸収の opacityが高い必要がある。成長したダストであればこの条件を満たすが、同時に散乱の opacityも高くなる。散乱の opacityが大きいと麺輝度は下がり、観測と合わなくなる。
17:10 - 17:30高橋 実道原始惑星系円盤の自己重力的分裂に対する現実的条件
近年の系外惑星の直接撮像観測により、中心星から離れた位置に巨大ガス惑星が形成されているのが発見されている。このような惑星は従来のコア集積モデルで形成することが困難であり、原始惑星系円盤の重力不安定性による分裂が有力な形成シナリオだと考えられている。また、原始惑星系円盤の分裂は連星系や褐色矮星の形成過程も説明する可能性があり、星と惑星の形成と進化を考える上で非常に重要である。そのため、円盤の分裂過程についてこれまで多くの研究がなされてきた。円盤が重力的に不安定な場合は、円盤に渦状腕が形成され、この渦状腕が分裂すると考えられる。これまでは円盤の分裂条件として、Gammie(2001)で提唱された冷却率に対する条件が広く用いられてきたが、この条件を満たしていないにも関わらす円盤が分裂する数値計算結果が多く存在し、この条件では不十分であることがわかっている。そこで本研究では、原始惑星系円盤の大局的な数値計算を行い、分裂する条件と渦状腕の構造の関係を調べた。その結果、渦状腕内部のQ値と分裂条件に対応があることを発見した。この結果は渦状腕をフィラメントとして扱った場合の線形解析から得られる分裂条件として解釈可能となり、渦状腕の内部で最大成長波長程度の幅でQ<0.6を満たすことが円盤分裂の条件であることがわかった。この結果から、円盤の分裂過程を渦状腕の形成と分裂の2つに分離することができ、円盤の分裂条件をQ<0.6の渦状腕を形成する条件へと帰着させることが可能となった。
17:30 - 17:50百瀬 宗武Detailed structure of the outer disk around HD 169142 with polarized light in H-band
Coronagraphic imagery of the circumstellar disk around HD 169142 in $H$-band polarized intensity (PI) with Subaru/HiCIAO is presented. The emission scattered by dust particles at the disk surface in 0.2"< r < 1.2", or 29 AU< r <174 AU, is successfully detected. The azimuthally-averaged radial profile of the PI shows a double power-law distribution, in which the PIs in r=29-52 AU and r=81.2-145 AU respectively show r^{-3}-dependence. These two power-law regions are connected smoothly with a transition zone (TZ), exhibiting an apparent gap in r=40-70 AU. The PI in the inner power-law region shows a deep minimum whose location seems to coincide with the point source at λ=7 mm. This can be regarded as another sign of a protoplanet in TZ. The observed radial profile of the PI is reproduced by a minimally flaring disk with an irregular surface density distribution or with an irregular temperature distribution or with the combination of both.
17:50 - 18:10スン カンロウModeling of Dust Emission from Disk Surrounding HD 142527
 We model dust continuum at 0.9mm from the azimuthally-asymmetric disk around HD 142527 obtained with ALMA Cycle 0. The disk is inflated and inclined by 27$^{\circ}$ to the line of sight, and its major axis is aligned along PA = 341$^{\circ}$. High resolution images in NIR scattered light (Fukagawa et al 2006) and MIR thermal radiation (Fujiwara et al 2006) indicate that the eastern side (PA = 341$^{\circ}$ - 161$^{\circ}$) is farther while the western side (PA = 161$^{\circ}$ - 341$^{\circ}$) is closer to us. In our model, we assume surface density distribution of the dust disk is gaussian in radial direction, size distribution of dust grains follows a$^{-3.5}$ with a$_{max}$ = 1mm, and mass scattering coefficient is 10 times larger than mass absorption coefficient at 1mm (Aikawa & Nomura 2006). Density and temperature structure of the model disk is determined by radiative transfer calculations called M1 method (Kanno, Harada, Hanawa 2013). The peak surface densities of dust at PA = 21$^{\circ}$ (the brightest region) and PA = 221$^{\circ}$ (the faintest region) are derived to be 0.8 gcm$^{-2}$ and 0.008 gcm$^{-2}$, consistent with Muto et al (submitted to PASJ). We cannot reproduce, however, the observed surface brightness in northwestern region (PA = 291$^{\circ}$ - 351$^{\circ}$ ), i.e., the near side with ~80% brightness of PA = 21$^{\circ}$, even with surface density exceeding 1 gcm$^{-2}$, which is more than dust-brightest region PA = 21$^{\circ}$. This is because emission from the hot inner wall of the near side is heavily scattered by dust particles at outer radii within the disk along the line of sight, a situation contrary to the far side where the inner wall can be observed directly. The surface brightness in the northwestern region, as well as other PA directions, can be reproduced when we reduced the mass scattering coefficient to 1/10 of its original value. In this case, the peak surface densities of the brighter lopsided region (PA = 291$^{\circ}$ - 71$^{\circ}$) of the disks vary smoothly in azimuth direction, and the peak surface density at PA=21$^{\circ}$ is derived to be 30% lower than the above value. We will present how such a mass scattering coefficient can be realized.
18:10 - 18:30塚越 崇原始惑星系円盤からの[CI] 3P1-3P0放射の検出
 原始惑星系円盤中のC原子の分布や構造を観測的に明らかにすることは、円盤進化の研究において重要な情報をもたらす。C原子は円盤上層において豊富に存在する種の一つと考えられており、円盤散逸や進化のトレーサーとして、近年[CI]による原始惑星系円盤の観測が着目されている。しかしながら、観測装置や大気条件の厳しさから、これまで検出例が見られなかった。 このような背景の元、近傍星形成領域に存在する3つのTタウリ型星、DM Tau、LkCa 15、TW Hyaに対して、[CI](3P1–3P0)輝線を用いた観測を行ってきた。サンプルはケプラー回転円盤の存在が既知である天体を選定した。加えて、強度比較の為、有名な2つの原始星L1551 IRS5およびHL Tauの観測も行った。観測はチリにあるサブミリ波望遠鏡ASTEと、それに搭載されたBand8QM受信機を使用して行った。 観測の結果、DM Tauに対し原始惑星系円盤からの[CI]輝線の検出に成功した。原始惑星系円盤からの[CI](3P1–3P0)放射としては初検出である。ケプラー回転を示唆するダブルピークは見られなかったが、星の中心速度付近にピークを持っており、[CI]放射が円盤外側まで広がっている事が期待される。原始星に対しても比較的強度の大きい[CI]放射が検出された。受かった[CI]放射は光学的に薄く、C原子の平均柱密度は、Tタウリ型星および原始星サンプルに対しそれぞれ、10$^{16}$ cm$^{-2}$および~10$^{17}$ cm$^{-2}$と見積もられた。 C原子質量とダスト質量の比(M(C)/M(dust))を調べたところ、Tタウリ型星の比は原始星よりも一桁小さくなっていることが分かった。これは原始星からTタウリ型星に渡る、系の密度上昇に伴うC原子存在量の減少で解釈出来る。また、未検出となった他Tタウリ型星も同様に、時間進化に伴う円盤表層からのC原子存在量の減少を示唆しており、近年の理論的予測と矛盾しない。
9月15日
セッション3 星形成2 (座長:TBD)
09:20 - 10:00川邊 良平ミリ波サブミリ波で探る低質量星の形成(招待講演)
TBA
10:00 - 10:40大橋 永芳Disk and star formation around low-mass protostars(招待講演)
I will review observational results of disk and star formation around low-mass protostars, with an emphasis on those using ALMA.
10:40 - 11:00國友 正信降着を考慮した低質量前主系列星の進化
これまで,星は大量のエントロピーを保持することで膨張して形成され,その後輻射冷却により準静的に収縮し,主系列に至ると考えられてきた.特に低質量星の内部構造は,初期に全対流しており,収縮に伴い輻射層が発達すると考えられてきた.そのため,降着により星に取り込まれるエントロピーが前主系列進化を規定する.近年の3次元磁気流体力学計算から,物質は星周円盤を通して星に降着することが明らかになった.これは球対称降着を仮定していた古典的な描像とは異なる.円盤降着の場合は,円盤および星の表面から効率的な輻射冷却が起こり,降着物質のエントロピーは低くなることが期待される.そこで本研究では低エントロピーな降着を考慮して原始星および前主系列星の進化を計算した.降着物質のエントロピーは降着物質の重力エネルギーを用いてモデル化し,オープンコードMESAを用いて星の構造,進化を計算した.計算の結果,降着物質のエントロピーが小さい場合,従来の理論に比べ前主系列星の半径が約1桁,光度が2桁も小さくなることがわかった.さらに,小さい半径はビリアル定理から高温を意味するため,輻射層が発達しやすくなり内部構造進化にも影響する.従って,従来の描像では2千万年程度かかる輻射層の発達が,低エントロピー降着では2百万年程度となることがわかった.これは原始惑星系円盤の寿命よりも速いため,降着流の組成次第では星の表面組成が変化することが期待される.そこで,様々な設定で表面対流層が収縮する時刻を求め,太陽の表面組成の異常問題および原始太陽の形成環境について議論する.
11:00 - 11:20黒瀬 一平原始星L1448-mmの解析
TBA
11:20 - 11:40徳田 一起ALMAによる原始星形成極初期の分子雲コアMC27/L1521Fの詳細観測
原始星は分子雲コアが重力的に収縮することによって形成される。しかし、星形成の研究において、形成される星の質量分布や連星の形成機構など、本質的な課題が未解決である。これは、分子雲コア中で原始星が形成される直前と直後に対応する星形成の初期状態がほとんど観測されていないことに対応している。本講演では、原始星形成初期段階に近い分子雲コア MC27/L1521F(e.g., Onishi et al. 1999)に対するALMA Cycle0,1による観測について紹介する。Cycle0の観測では、極めて密度の高い(~10^7 cm^-3)星なし分子雲コア(MMS-2)、非常にコンパクトで若い(~200 年)アウトフロー、2000AUスケールのアーク構造など総じて非常に複雑な構造が明らかになった。これらは原始星や複数の分子雲コアが動的に相互作用し、連星形成を進行させるという描像を示唆するものでる(Tokuda et al. 2014, Matsumoto et al. 2015)。Cycle1の観測では、コンパクトアレイを含めたダスト連続波(1.1mm、0.87 mm)等の観測により、数1000 AUから数10 AUに渡る連続的な分布を明らかにし、MMS-2が2つのピークを持つことや、中心天体から3000 AU付近で柱密度のベキ指数が異なっている(内側~r^0.4, 外側~r^1.3)ことなどを見いだした。Cycle0で検出した複雑な構造は内側の柱密度分布がフラットな領域で見られることから、この柱密度分布はこの系の力学状態を反映していると思われる。
11:40 - 12:00今井 宗明ペルセウス座分子雲の原始星天体に対する重水素濃縮度のサーベイ観測
これまでの研究で、低質量原始星天体の化学組成は同一の進化段階にあっても多様性が見られることがわかってきた。飽和有機分子に恵まれるホットコリの天体と、炭素鎖分子に恵まれるWCCC天体が代表例である。我々は、この多様性の起源を調べるために、1つの分子雲複合体(ペルセウス座分子雲)で、無バイアスに星形成領域の化学組成を調べる観測を行っている。その中で、本研究では重水素濃縮に着目し、原始星天体が置かれている環境との関係を調べた。野辺山の45 m電波望遠鏡を用い、ペルセウス座分子雲のClass0/Iの低質量原始星のDNC(J=1-0)輝線とHN13C(J=1-0)輝線を32天体で観測した。それらの強度を比較し、各天体の重水素濃縮の程度を見積もった。各天体の位置と重水素濃縮度から、クラスター中心部に属する原始星天体では重水素濃縮度が高く、クラスター周囲などの星形成が疎な部分では重水素濃縮度が低い傾向があり、また、DNCの強度が低いほど濃縮度が低くなることがわかった。重水素濃縮度は、分子雲コアが形成されてから時間とともに増加していくことが知られている。DNC/HNC比のような中性分子の重水素濃縮度は、星形成が起こってもしばらくは保存すると考えられるので、その天体ごとの違いはコア形成から星形成に至る時間を反映している可能性がある。クラスターに属する原始星天体で重水素濃縮度が高いことは、周囲の原始星からのフィードバック効果により分子雲コアの収縮が遅くなっているためと考えられる。
セッション4 惑星 (座長:TBD)
13:00 - 13:20谷川 享行ガス惑星の質量:原始惑星系円盤中におけるガス捕獲過程の長期進化モデル計算
ガス惑星は、原始惑星系円盤ガスを捕獲して大きく成長する。惑星が大きくなるにつれて、その強い重力により惑星軌道上にギャップ(原始惑星系円盤中の低ガス密度領域)を形成し、自ずから成長を止めると考えられているが、その止まり方についての詳しい研究は少ない。その主な理由は、ギャップ領域の面密度が、惑星の成長につれてどのように変化するかが分かっていないからだが、近年、数値流体計算結果を元にギャップ領域の面密度についての経験式が提案された。そこで、本研究では、そのギャップ領域の面密度に関する経験式を使って原始惑星系円盤から惑星へのガス降着率をモデル化(定式化)し、ガス惑星成長過程の長期進化を調べた。その結果、標準的な原始惑星系円盤モデルの場合、容易に10木星質量を超えてしまう事が分かった。また、太陽系(~5AUに木星サイズの天体)を再現しうるシナリオについても検討を行ったので、それも報告する。
13:20 - 14:00小久保 英一郎太陽系形成の標準シナリオとその課題(招待講演)
太陽系は惑星とその衛星と環、そして無数の小天体(小惑星、太陽系外縁天体、彗星)から構成されている。惑星は組成から地球型(岩石)惑星(水星、金星、地球、火星)、木星型(ガス)惑星(木星、土星)、海王星型(氷)惑星(天王星、海王星)の3種類に分類される。これらの惑星は組成だけでなく、質量範囲と存在領域も異なっている。小質量の地球型惑星は惑星領域内側に、大質量の木星型惑星は中間に、そしてそれらの中間の質量の海王星型惑星は外側に存在する。これらの惑星の軌道はほぼ同一平面上にあり、同方向でほぼ円軌道になっている。太陽系形成の標準シナリオでは、太陽系は太陽形成の副産物として形成されるガスとダストからなる原始太陽系円盤から形成される。シナリオは、(1)微惑星形成、(2)原始惑星形成、(3)惑星形成の3段階に分けられる。(1)ではダスト層の重力不安定もしくはダスト粒子の付着成長によって、固体惑星の構成要素になる微惑星が形成される。(2)では微惑星の衝突合体によって成長する。微惑星は暴走的成長、寡占的成長を経て原始惑星となる。(3)は惑星の種類によって異なる。地球型惑星は原始惑星どうしの衝突(巨大衝突)で完成する。十分大きく成長した原始惑星は自己重力によって円盤からガスをまとい木星型惑星となる。成長時間が長過ぎてガスが散逸してしまい、ガスをまとえなかった原始惑星が海王星型惑星となる。標準シナリオは、微惑星形成、海王星型惑星形成時間などの重要な未解決問題が残されているが、太陽系の基本的構造の形成を説明できている。また、質量の違う原始惑星系円盤や惑星の軌道進化を考慮することで、多様な系外惑星系の形成にも応用されている。ここでは惑星系形成の素過程を概説し、残されている問題について議論する。
14:00 - 14:40田村 元秀SEEDSによる系外惑星と円盤観測のまとめ(招待講演)
第一回すばる戦略枠観測として2009年に開始したSEEDSサーベイは、大きな問題なく2015年1月にほぼサーベイを完了した。年齢が約100万年から約10億年の太陽型あるいはそれより重い近傍恒星約500個のまわりの巨大惑星と円盤の探査を行う事ができた。その結果、4個の惑星(候補)の直接観測による発見・確認、約30個の円盤の微細構造の直接撮像、傾いた軌道を持つ惑星・大離心率惑星のまわりの伴星の撮像など、先行研究と比べても数多くの成果を挙げることができた。本講演では、サーベイの概要と最近の結果をむくむその主な成果について解説する。
14:40 - 15:00野村 英子氷微惑星衝撃波加熱のALMAによる観測的検証法
原始惑星形成後、周囲の氷微惑星は重力相互作用により軌道進化し、円盤ガス中に衝撃波をおこす。この衝撃波により氷微惑星は加熱・蒸発すると考えられ、氷微惑星の蒸発率や軌道進化に関する研究が行われてきた(Tanaka et al. 2013, Nagasawa et al. 2014)。本研究では、微惑星内の氷分子の気相への蒸発を初期条件とした非平衡・時間発展する気相化学反応計算を行い、氷微惑星の蒸発により気相に放出された分子およびその娘分子をALMAで観測することにより、氷微惑星の衝撃波加熱を検証する可能性について調べた。その結果、ガス・氷惑星形成領域においては、通常は気相に存在しないH$_2$SやSOの輝線が氷微惑星蒸発のよいトレーサーとなることが示された。これまでの電波観測では、H$_2$S, SO 輝線は原始惑星系円盤からは未検出であったが、モデル計算の結果、ALMAによる高感度・高空間分解能観測では、これらの輝線の検出が可能になる可能性が示唆された。
15:00 - 15:30片岡 章雅分子雲コア及び原始惑星系円盤におけるミリ波偏光
TBA
セッション5 星形成3 (座長:TBD)
15:50 - 16:30工藤 哲洋磁場と乱流が強い分子雲における星形成時間の理論(招待講演)
分子雲から星が誕生するまでの時間は、星形成率などを見積もる際に重要なパラメータとなります。私たちは強い磁場を持つ分子雲から星が誕生する直前までの数値シミュレーションを行い、分子雲から星が誕生するまでの時間がどのような物理過程で決まっているのかを考察しました。シミュレーション結果と準解析的な考察の結果、強い磁場を持つ分子雲では、星が誕生するまでの時間は分子雲が持つ大スケールの乱流速度の2乗に反比例することを示しました。
16:30 - 17:10新永 浩子Magnetic Field in The Isolated Massive Dense Clump IRAS 20126+4104(招待講演)
We report on a study of the magnetic field structures of IRAS 20126+4104, a massive dense clump in which the rotation axis and the magnetic field axis are misaligned. In order to study the role of magnetic field in high mass star forming regions in detail, we investigate magnetic field of the object in a high spatial dynamic range. The data sets that we use include interferometric data taken with the Submillimeter Array (SMA) and single-dish data with 9 arcsec beam taken with the SHARP/CSO (Shinnaga et al. 2012) and with 15 arcsec beam taken with SCUPOL at the JCMT telescope (Matthews et al. 2009). Comparing the above results with the VLBI spectropolarimetric observations by Surcis et al. 2014, these four independent data sets allow us to investigate the magnetic field structures across a high spatial dynamic range (5 × 10^(3)), between 1 pc scale and down to 20 AU scale of the massive dense clump - massive (10M_sun) (proto)star system. The magnetic field lines measured in these four different spacial scales turned out to be consistent with each other.
17:10 - 17:30塚本 裕介ホール効果によって引き起こされる2種類の円盤進化過程
本講演では円盤形成におけるホール効果の影響について報告する。分子雲コア内のガスは弱電離プラズマであるため、非理想効果(オーム散逸、ホール効果、両極性散逸)が重要な役割を果たす。このなかでホール効果はpoloidal 磁場からtoroidal磁場を作りガスの回転を誘起するという興味深い性質があり、円盤形成過程に大きな影響を与える可能性がある。しかしながら、ホール効果の円盤形成に対する影響についてはほとんど調べられてこなかった。 講演者は3 つの非理想効果と輻射輸送を考慮した3D シミュレーションを行い、特にホール効果の円盤形成に与える影響について研究を行った。その結果、分子雲コアの回転ベクトルと磁場ベクトルが平行の場合、1 AU 程度の円盤しか形成しなかったのに対して、反平行の場合は20 AU 程度の重力的に不安定な円盤が形成することがわかった。この結果は回転ベクトルと磁場ベクトルが平行か反平行かといういままで重要視されてこなかった条件が円盤形成過程を大きく変えるという点において極めて興味深い。また、中心で回転が促進されることによって角運動量保存からエンベロープが円盤回転方向に対して逆向きに回転する現象が見出された。このような逆回転するエンベロープは観測可能であると考えられる。もし観測された場合、ホール効果が円盤の形成進化において重要な役割を果たすことの証拠となると考えられる。
17:30 - 17:50内山 瑞穂メタノールメーザーの強度変動を伴う大質量原始星の近赤外線モニター観測
 大質量星形成を解明する上で、原始星や原始星にごく近い領域(<100AU)で起きる現象の観測は非常に重要である。しかし、一般に大質量原始星は遠方にあり、原始星にごく近い領域を空間分解観測することは、一部の近傍天体を除き困難である。直接撮像観測以外で天体の近傍で起きる現象を調査する手法として、変光観測が挙げられる。大質量原始星に時間変動現象が存在すれば、そこから質量降着率の変動や星周構造の変化を探査できる。 大質量原始星にはよく6.7GHzメタノールメーザーが付随しており、このメーザーは原始星周辺の降着円盤に付随していると考えられている。このメーザーの一部について数十–数百日の周期変動が報告されている(Goedhart+2004など)。変動要因としては、Colliding-wind Binary(van der Walt 2011)由来の変動や、原始星脈動による光度変動(Inayoshi+2013)などが提唱されているが、メーザー観測以外で変動が未検出のため情報が少なく未解明である。 我々は既知のメーザー変動現象を伴う大質量原始星Mon R2 IRS3の近赤外線撮像モニターを鹿児島大学1.0m望遠鏡赤外線カメラで行い、光度変動の有無を調査した。結果、132日間のモニターで観測に使用したJ,Hバンド共に単調な光度減少を検出し、これは茨城32-m電波望遠鏡でのメーザーモニターで得られた一部速度成分の単調な強度減少傾向と一致した。また、観測中に0.1mag程度の赤化を検出した。本発表では観測結果の詳細と、同時期に行ったメーザーモニターとの関係から、光度変動要因の考察について主に述べる。
17:50 - 18:10元木 業人Mutli-scale view of the face-on accretion system around a high mass young stellar object
Recent theoretical works have suggested that detailed evolution of a protostar depends strongly on the effective accretion rate and the exact accretion geometry. Observational studies of the innermost (<< 1000 AU) accretion properties are, thus, an essential task for quantitatively understanding cluster formation. But such studies are difficult, since the high mass envelope and accretion disk are so dense and the innermost region easily becomes optically thick. If one hopes direct observations, a face-on source must be selected, where such a self-shielding effect can be minimized. Several candidates of a high mass accretion system were reported in this decade, however, all of them were in a nearly edge-on geometry. On the other hand, our target source, G353.273+0.641, is the best candidate of a nearly face-on object at present. We have found a signature of kinematic connection between the extended envelope (~3000 AU) and the innermost accretion system (~100 AU). I will report on recent progresses in our multi-scale (10000 - 10 AU) imaging studies using several VLBI and connected arrays.
18:10 - 18:40富阪 幸治TBD
9月16日
セッション6 分子雲・銀河 (座長:TBD)
09:20 - 09:40馬場 淳一非平衡化学反応を考慮したシミュレーションよる星形成銀河の多相星間ガスの性質
近年の可視・近赤外線サーベイにより,z>1の星形成銀河の多くが現在とは異なりクランピーな形態を示すこと(e.g., Murata et al. 2014)や,その電離ガス成分(H$\alpha$輝線観測)は非常に激しい乱流状態にあることも明らかになった(e.g., Forster Schreiber et al. 2009).さらに,最近ではALMAなどによるz ~ 1 - 3の星形成銀河の分子ガス輝線やダスト連続光の観測も急速に進み,これらの銀河は大量のガス成分を含むことが明らかになりつつある (e.g., Tacconi et al. 2013; Soville et al. 2014).一方で,理論シミュレーションも空間・質量分解能が向上し,星間ガス(ISM)の詳細な構造や運動を調べることが可能になりつつあるが,今後観測が期待される低温ガスの性質はまだ十分に研究が進んでいないのが現状である.そこで我々は,N体/SPHシミュレーションコードASURA-2に,Wolfire et al. (1995)に基づくISMの主要な電離/再結合・分子形成/解離の非平衡化学反応と,それに伴う加熱/冷却過程 (e.g., 衝突電離・励起冷却,再電離冷却,[CII]158um/[OI]63um微細構造線冷却,光電離加熱,光解離加熱,光電効果加熱など)を組み込んだ.このコードでは,化学反応の硬い常微分方程式を時間刻みにサブサイクルを実装し,LSODAライブラリを用いて解いている.また,化学反応に重要な星間遠紫外線を,銀河内の星からの寄与をSobolev的近似 (Gnedin et al. 2009) により評価し,その空間的・時間的変動を考慮している.このコードを用いた近傍星形成銀河モデル (天の川銀河) のシミュレーションにより多相ISMの観測的性質 (面密度--分子ガス比関係,星形成率--速度分散関係など) の再現に成功した.さらに,遠方星形成銀河モデル(ガス質量割合が50%の円盤銀河)のシミュレーションを行い,多相ISMの熱的・運動学的性質を調べた.今回は,これらの初期成果および今後の展望について講演する.
09:40 - 10:20犬塚 修一郎銀河スケールの星形成シナリオ:分子雲の質量関数・星形成の加速・星形成率・シュミット則の起源について(招待講演)
 銀河系円盤部における統一的な星形成シナリオを提案する.弱電離した星間媒質中での輻射加熱・冷却・熱伝導を含む非理想磁気流体力学的研究により,星間雲の形成機構が解き明かされてきた.まず,熱的不安定性を伴う相転移現象により低温の中性水素ガス雲が生成される.これらが多数回の衝撃波により圧縮されることにより,分子雲が形成される.また,できた分子雲が衝撃波によって再度圧縮される場合に,フィラメント状の分子雲が生成される. 本講演では,この知見に基づいた星形成シナリオにより,銀河系円盤部における星形成活動に関する多数の観測事実を説明することができることを報告する.膨張する電離水素領域や充分冷却した超新星残骸により圧縮された球面(以下,バブルと呼ぶ) には乱流状態の低温の中性水素分子雲が形成される.その雲が多数回圧縮されて分子雲が形成されるため,分子雲は球面上の一部のみに存在する.また,分子雲の形成には数千万年かかるため,百万年程度しか持続しない電離水素や超新星残骸のほとんどはその痕跡を同定することが困難になる. 分子雲では十分大きな線密度のフィラメントが形成されることで星形成は始まり,数千年程度の時間スケールで加速する.バブルとバブルの衝突面に相当する特別な領域においては分子雲同士の衝突が可能であり,ガスの効果的な圧縮に伴い,激しい星形成が誘発される.20~30太陽質量の星が生まれると,電離・解離光子を含む紫外線により10万太陽質量程度の分子ガスが百度弱に暖められ,CO を含まない「見えない」分子雲となり星形成活動は止まる.その結果,星形成率は数%程度になる.分子雲の(全)散逸時間は10億年のオーダーとなり,Schmidt-Kennicutt則の起源を与える. 以上の過程を記述する方程式の定常解として分子雲の質量関数が決まり,それは空間平均ガス密度の関数になる.円盤銀河における渦状腕領域とそうでない領域の巨大分子雲の質量関数の違いを説明することが可能である.
10:20 - 11:00和田 桂一活動銀河核周辺の星形成活動とアウトフロー(招待講演)
最近の観測により、活動銀河中心核(AGN)の周辺では活発な星形成活動が行われており、AGNの進化や構造になんらかの影響を与えていることが示唆される。また、分子ガスアウトフローも観測されているがその起源ははっきりしない。本講演では、これらの現象に関するわれわれの数値輻射流体計算を用いた研究について紹介する。
11:00 - 11:20大朝 由美子Is the substellar IMF universal?
我々は,フィラメント状分子雲を中心に,太陽近傍(≤1kpc)の多様な環境を持つ星形成領域において,褐色矮星や惑星質量天体などの超低質量天体の普遍性や初期質量関数、形成過程を探るべく、超低質量天体が十分検出可能な観測探査プロジェクトを進めている。本講演では,これらの観測結果と,他の電波観測やスピッツァー宇宙望遠鏡による観測結果などと比較した議論を行う。
11:20 - 11:40斎藤 貴之金属量混合モデルを導入した銀河シミュレーション
化学進化は、銀河の形成過程、とくに星形成過程を明らかにする上で重要な指標を与える。実際に銀河の形成と進化の過程でどのように化学進化が進み、そして重元素が時間空間的にどのように分布するかを知るには、化学進化を組み込んだ銀河形成シミュレーションを行う必要がある。そこで、TypeII/TypeIa 超新星や AGB からの10種類の重元素放出を考慮した銀河進化モデルを構築しさらに金属量混合のモデルを ASURA に実装した。本講演では、このモデルを用いておこなった重力収縮する分子雲における金属量混合の結果を報告する。初期に星間ガスの平均的な金属量分散程度の金属量比(~0.3 dex)を与えた場合、重力収縮する過程で特に高密度領域で混合がおきて平均的な金属量を持つ。また、分子雲衝突を考えた場合でも同様に高密度領域は平均的な金属量を持つ。この結果は星団が非常に小さい金属量分散(~0.05dex)を持つという観測、また先行研究である Feng & Krumholz (2014) と整合的である。このような性質をもつモデルは、Chemical tagging への応用で重要な役割を果たすと期待される。講演では、このモデルを用いた銀河シミュレーションから得られた銀河円盤内金属量分布についても議論する。
11:40 - 12:00須田 拓馬恒星進化モデルで探る矮小銀河の星形成史
銀河系近傍にある矮小銀河は天の川銀河の構成要素の名残と考えられ、銀河系形成過程を理解するうえで重要な天体である。近年では赤色巨星の分光観測が盛んに行われ、中分散分光による組成解析が行われた恒星の数は 数千個に上る。本講演では、恒星の観測データと理論モデルを用いて、矮小銀河における宇宙初期の星形成史・化学進化について検証する。測光データによる矮小銀河の色等級図と恒星進化モデルとを比較することで個々の銀河の星形成史を調べるとともに、赤色巨星の詳細な元素組成データから、個々の星の形成時期に制限を与えられるか検討する。
セッション7 初期宇宙等 (座長:TBD)
13:00 - 13:40大向 一行宇宙初期の星形成過程(招待講演)
宇宙初期に起こったと考えられているゼロメタルおよび極低金属度のガスからの星形成過程について概観します。また外部輻射場の効果についても考察します。
13:40 - 14:00稲吉 恒平宇宙初期の超巨大ブラックホール形成
宇宙初期(z>6)に観測されている超巨大ブラックホール(~10^9 Msun)の起源として、原始銀河の中で超大質量星(>10^5 Msun)の重力崩壊によりできる大質量ブラックホールが有力視されている。超大質量星を形成するためには、始原ガス中のH2分子冷却を抑制して、激しい分裂を回避させながら多隠逸の星を形成することが必要となる。本研究では、まず、原始銀河の高速衝突により誘発される超大質量星の形成過程を議論する。原始銀河が高速(>200km/s)で衝突しできた衝撃波領域では、ガスは冷却により収縮して密度が上昇して行く。結果、ガス中では衝突解離によりH2分子冷却が抑制されて、自発的に超大質量星形成の必要条件が満たされることが分かった。続いて、形成された種ブラックホールが超巨大ブラックホールにまで成長する過程を議論する。1次元輻射流体計算を用いた結果、中間質量BHへのガス降着の場合、輻射圧と電離加熱などの効果は重要ではなくなり、降着流は等温(~8000 K)の定常流の解(\dot{M}>5000L_Edd/c^2$)に収束することが分かった。この結果から、超大質量星の崩壊により形成されたブラックホールは超臨界降着により急成長することができ、超巨大BHの種として有望であると期待される。
14:00 - 14:20千秋 元低金属量ガス雲の重力収縮シミュレーション
 金属を含まないガス雲の収縮によって初代星は大質量(数10--1000 太陽質量)であると考えられている一方、現在の星は低質量(太陽質量以下)である。星形成は金属量が上昇する過程で遷移したと考えられている。初代星は金属を含まない始原ガスの収縮により形成されるが、金属やダストをある程度含むガス雲は放射冷却率が大きく、ガスの分裂が促進される。特にダストによる冷却は高密度で効果的となるため、低質量の分裂片が形成されると考えられている。本研究では、様々な金属量を持つガス雲の重力収縮過程について3次元流体計算を行った。 ダスト冷却率はダスト量、ダスト種の組成、サイズ分布に依存するため、本研究では初期宇宙において適切なダストモデルを用いる。初期宇宙において、ダストは主に超新星により供給される。一方、ダスト破壊によりダストを構成している金属原子の一部が気相中に遷移する効果もある。このことから、ダストと金属の質量比(金属の凝縮率)は近傍宇宙より小さいと考えられている。また、ガス雲の重力収縮の過程において、気相中の金属原子がダストに降着する現象(ダスト成長)が低金属量の環境でも重要となることが明らかになっている。 本研究では、超新星ダストモデルとダスト成長を考慮する。いくつかの超新星親星質量と金属量 10^{-6}--10^{-3} Zsun に対して計算を行い、ガス雲の分裂条件を調べた。
14:20 - 14:40櫻井 祐也始原ガス中での超大質量星形成と間欠的降着:輻射フィードバックの影響
観測で赤方偏移6-7に超巨大ブラックホール(SMBH)の存在が確認されているが、その起源についてはよく知られていない。近年、SMBH形成理論として、1-10万太陽質量程度の超大質量星がBHに直接崩壊し、そのBHがSMBHに降着・合体で成長していくという直接崩壊理論が注目されている。超大質量星形成で重要なことは、輻射フィードバックが星形成降着段階で起きるかどうかである。星の進化計算により、一定降着率の場合ではフィードバックが効かないことが知られている。しかしより現実的には円盤の不安定性・分裂によって星への質量降着は間欠的に変動しつつ起こる。この場合、降着率が低い時期(静的降着期)があり、その期間が千年以上であるとフィードバックが効くことが従来の星の進化計算から分かっている。しかし従来の研究では降着史をモデル化していた。本研究では現実的な間欠的降着史のもとでの星の進化計算を行った。降着史として2D流体シミュレーションから計算したものを用いた。静的降着期に星が収縮してUVが大量に出ると予想されるが、計算により星の収縮は起こらず、輻射フィードバックが起きないことが分かった。これは静的降着期の期間が千年未満程度と短いことが理由であると考えられる。
14:40 - 15:00平野 信吾Streaming Velocityによる宇宙初期の大質量ブラックホール形成
現代宇宙論より与えられる宇宙初期の密度・速度分布を初期条件とする宇宙論的シミュレーションを行うことで、初代星・初代銀河といった宇宙初期の天体形成過程が調べられている。近年、宇宙再結合期におけるバリオン・ダークマターの速度差 (Streaming Velocity) がこうした天体形成に影響するということが示され (Tseliakhovich & Hirata 2010)、特にStreaming Velocityが大きい場合には10^4 - 10^5太陽質量程度の大質量星が形成される可能性が示された (Tanaka & Li 2014)。この天体が大質量ブラックホールへと重力崩壊すると、形成過程が議論されている遠方クエーサーの種となりうる。我々はStreaming Velocityによる大質量天体形成の可能性を探るため、Tanaka & Li (2014)で示された物理的環境となる星形成領域を宇宙論的シミュレーションより取得し、星形成過程を調べた。その結果、Direct Collapseシナリオの条件である高温ガス雲が現れ、原始星への極めて大きなガス降着率を確認した。宇宙初期の始原的ガス雲においては、ガス降着は星からの輻射フィードバックによって止められるが、今回確認されたように降着率が十分大きいと、この輻射フィードバックは働かず原始星の質量は増え続ける。原始星の質量降着進化を3次元流体シミュレーションした結果、10^4太陽質量以上までの質量獲得を確認した。今回計算した星形成環境の出現率によって、観測されている遠方クエーサーの数を説明できる。
15:00 - 15:20鄭 昇明宇宙論的環境下でのDirect CollapseシナリオによるSMBHの形成可能性
近年z~7において、すでに 10億Msunの質量を持った超大質量ブラックホール(SMBH)が存在する事が明らかになってきた。形成過程に関しては、初期宇宙において非常に特殊な環境下に存在するガス雲から超大質量星を経て~10万MsunのBHが形成されるDirect Collapse(DC)シナリオが提唱されている。このBHは観測されたSMBHの種となることが期待される。DCに関しては様々な研究がなされているが、現在のところ宇宙論的な状況で実際に超大質量星が形成される過程は確かめられていない。本研究では、DCが宇宙論的な環境下で起こりうるかを検証する。 宇宙論的な初期条件から始めるN体計算をGadgetを用いて行い、DCが起こりうる環境が実現しているかを確かめる。DCは非常に低金属なガス雲で、かつ非常に輻射の強い状況で起こると考えらる。このためにも、(1) 星形成活動による金属汚染の過程、(2) 近傍銀河からの輻射強度の計算、(3) 輻射場のもとでのガス雲の進化、を考慮する必要がある。本研究においては、N体計算をもとに準解析的に星形成史を再現することで(1)、(2) を考慮する。次に、得られた DC 候補ガス雲の進化を流体計算することで(3) の過程を追う。 本研究では、N体計算よりDCガス雲を探索した。 そのうち20個程度の DC候補ガス雲について流体計算を行った結果、1つのDCガス雲においてDCが起こることを確かめた。残りの 19 個の候補に関しては光源ハローからの潮汐力等により、崩壊は進行せず星形成には至らなかった。本講演では光源ハローとの相互作用を考慮した上でのDCが起こるための条件と、宇宙論的初期条件より得られた DCガス雲、またそこで形成される超大質量星の性質について議論する。
15:20 - 15:40羽部 朝男分子雲衝突による大質量星形成
最近,いくつかの大質量星形成領域やSpizter bubbleで分子雲衝突の観測的な証拠がみつかっていることなどから大質量星形成機構として分子雲衝突が注目されている。分子雲衝突による大質量星形成の可能性を探るため,分子雲に乱流を仮定して数値シミュレーションを行った。その結果,乱流分子雲が衝突する場合の高密度コアの質量関数は,大質量星形成領域であるオリオン分子雲で観測されている分子雲コアの質量関数と良く似た結果を得た。さらに大きな分子雲が衝突する場合は,大質量星によるUV feedbackも考慮する必要があり,現在その影響を調べている。講演では,こうした研究成果について報告する。
15:40 - 16:00熊本 淳星の年齢-速度分散関係に対するシミュレーション分解能の影響
GAIAのデータのリリースに伴い、太陽近傍に留まらず銀河系の広域に渡る約100億の星の位置や運動に関する情報が得られると期待される。一方で、近年の宇宙論的銀河形成シミュレーションの空間・質量分解能で銀河内のダイナミクスを再現できているかは自明ではなく、どの程度の分解能が必要か調べることが重要な課題となっている。そこで本研究では、星の年齢-速度分散関係(Age-Velocity dispersion Relation; AVR)に着目し、その再現に必要な分解能をN体/SPHシミュレーションにより調べた。シミュレーションは、ダークマターと恒星系円盤を定常外場として扱い、星間ガスの自己重力、輻射冷却、星形成、超新星フィードバックを考慮してある。AVRの再現に対する分解能の影響を見るため、重力ソフトニング長と星形成条件を系統的に変えて計算を行った。その結果、ソフトニング長や星形成条件がAVRに強く影響することが分かった。これは、ソフトニング長が長い場合に薄い円盤構造を再現できないことや、星形成密度閾値が小さい場合に重力的散乱を起こすGMCを再現できないためであると考えられる。すなわち、AVRは星形成を起こす場所や、星形成の場となる分子雲の分布と密接に関係することを示唆する結果が得られた。これらの結果を用いて観測から得られるAVRの再現に必要な分解能について議論する。
16:00 - 16:30細川 隆史TBD
TBA
16:30 - 17:00町田 正博大質量星からのアウトフロー(仮)
TBA
17:00 - 解散