空気の重さと密度を測る実験のレポートから

 

1998年後期に行った空気の重さと密度を特別な器具を用いないで測定するというテーマの実験で空気の重さの測定方法について質問した。実験では、スプレー缶に空気入れで詰め、空のスプレー缶の自重を引くことによって空気の重さを測定した。その後これを水上置換し体積、温度を測定し、理想気体の状態方程式との比較を行った。その実験を行って後以下のような課題を実験レポートとともに提出させた。

 

課題

「空気にも重さ(正確には質量だが以下問題がない限り重さと呼ぶ)があることは、ポリエチレンのゴミ袋に空気を詰めて投げたものを受け取ってみれば衝撃を受けることからも体感することはできる。

ただしこのように袋に詰めた空気の重さを測ろうとして、空気+袋の重さと空の袋のみの重さを上皿天秤で量り、正味の空気の重さを求めようとしてもうまくゆかない。

問い:この理由はどうしてか。レポートにその理由を記せ。」

 実験の説明

 

答えの例

 

A.内外の密度差が問題であるとするもの

正解にかなり近いといえる。ただし、どうして密度差がないと質量が測定できないのかについて言及しているものはいない。

 

○ただ袋に空気を詰めただけだと、袋の中の空気の密度と袋の外の空気の密度とはほぼ同じなので、空気+袋の重さと空の袋のみの重さを測っても、正味の空気の重さを求めることは難しいから。

 

○袋の中の空気の密度と、外の空気の密度に差がないからである。

 

○袋の中の空気の密度と、外の空気の密度に差がないので、正味の空気の重さを求めようとしても上手くいかないから。

 

○周囲の空気と袋の中の空気の密度が等しいために、うまく測定することができない。

 

○袋に詰めた空気と、周りの空気との密度差がないために正味の空気の重さを測り取ることができないからである。

 

B.圧力に差がないからだとするもの

むしろこれのほうが正解に近いが、これもどうして圧力差がないと質量が測定できない(なにか変?)のかについて言及しているものはいない。

 

○これは袋の中と外の気圧が等しいため、均等に圧力がかかって重量がなくなってしまうためではないだろうか。

 

○なぜなら袋の中に空気を入れても外気圧とあまり圧力差を作り出せないからである。袋の中の空気圧と外気圧が同じでは、たとえ見た目で袋が膨らんでいてもしぼんでいるのと何ら変わらないのだ。ただ袋の形が変わっただけなのである。

 

C.圧縮することができないからと考えたもの

これはスプレー缶で行った同じ実験がゴミ袋でできない理由を答えたようにも見えるが、上皿天秤で測ったらどういう結果がでるだろうかとは考えなかったらしい。

 

○袋では、空気を圧縮することができないので、密度を求めることができないからである。

 

○日常の生活で経験があることだが、袋に空気を入れてどんなに強く縛っても、放置しておくだけで、空気が抜け、しぼんでいってしまう。こういった理由から、上手くいかないと思う。

 

○風船がいつの間にかしぼんでしまうのと同じように、ポリエチレンのゴミ袋に入れた空気もいつの間にか抜け出てしまっているはずである。このように、袋には気密性において問題があるために正確には測れないのだと考えられる。

 

D.空気の重さが非常に軽いと考えるもの

実験では1気圧で約2リットルの空気が3g程度であることを確認しているにもかかわらず、その十倍は入るであろうゴミ袋に入っている空気の重さを上皿天秤で量れないような少量だと誤解している。

 

○まず、空気が軽すぎることがその理由としてあげられるであろう。通常の気圧下においては体積が大きく密度が低い。上皿天秤で測るには[]単位で測りたい。そのためポリ袋に空気を詰めなければならないが、ポリ袋の限界から考え微量の空気しか詰められないだろう。やはり、空気の重さを測るには空気を圧縮し、容器内の圧力を外圧よりも数段上げてやる必要がある。そのため高い内圧に耐える容器を用いる方がよい。そのためポリ袋等ではない方が望ましい。

 

○空気に質量があるといっても、よほど大量でない限り上皿天秤などの器具を用いて測り取れるほど大きいものではない(空気のおよその分子量はおよそ29である)。このことは、常に我々の頭上に何千mにもわたり空気が存在しているが、その重さを感じることのないことからも、窺い知ることができる。

 

○普通に空気を入れただけでは袋だけの時とあまり差がなく測定しにくいと思う。また外部の変化、たとえば温度変化や気圧の変化に影響を受けやすく正確な測定がでないのではないだろうか。

 

E.はじめに袋から空気を完全に抜くことが難しいとするもの

実験技術的な問題。Cとおなじでスプレー缶で行った同じ実験がゴミ袋でできない理由を答えたようにも見えるが、上皿天秤で測ったらどういう結果がでるだろうかとは考えなかったらしい。

 

○袋の中に空気が入っていて、袋の正確な重さを測ることはできないためだと思われる。

 

○空の袋にも多少の空気が入ってしまうため正味の空気の重さを求めようとしてもうまくゆかない。

 

F.複合型

○空気の重さを測ろうとしたとき、かんではなくビニール袋に入れて測ろうとしてもうまくゆかないのは、容器としての耐久性がなく、密封もしにくい。ビニール袋に重量がないため風などにより袋が浮いてしまうおそれがある。ゆえに空気の重さを測るときは、スプレーかんの様なものを使用するのが望ましいと思われる。

 

○袋の中の空気を完全に抜くことは難しいから。袋自身が軽いため、空気を入れて体積が増えると浮力を受け、実際の重さより軽くなってしまうから。

袋の中には空気を押し詰めることができないため、少量しか入れることができず、重さの差が出難いのだと思われる。

 

その他

意味不明や明らかに間違ったもの。

○いろいろ考えた結果、その理由として袋を用いては正確な体積が出せないからではなかろうか。袋に詰める空気の量をいつも一定にはまずできないと思われる。よって正確な重さも出てこないはずだ。

 

○形が一定していないので、中に入った空気を全て量り取ることができないから。袋の重さが軽すぎるため、空気の重さとの差がはっきりでないから。

 

○ポリエチレンの密度が空気よりも低いために測定できない、もしくは、袋を密封することができないためではないだろうか。