[MMS misson]

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MMS ミッション 非公式まとめページ

MMS ミッションについて

MMS (正式名は Magnetospheric Multiscale) は NASA が主導する国際ミッションで、 地球周辺の宇宙空間で起きる磁気リコネクションの いちばん奥底の電子スケール領域を直接観測し、 そのメカニズムを理解・解明することを目標としています。 これまでの衛星よりも時間分解能が2桁高い機器で プラズマ速度分布関数を取得するとともに、 4機の衛星を編隊飛行させることで 3次元のプラズマ構造を計測しています。

MMS ミッションには、 NASA ゴダード宇宙センター (NASA/GSFC)サウスウエスト研究所 (SwRI) の他、 日本の 宇宙科学研究所 (ISAS) をはじめとする多くの研究機関が開発・運用に参加しています。 例えば、衛星周辺のプラズマを計測する32台のプラズマ計測器(FPI)のうち、 イオン用の16台を NASA の依頼で宇宙研が製作しています(製造は明星電気です)。

MMS 衛星群は、2015年3月12日(米国東部時間)に アメリカのケープ・カナベラルから打ち上げられました。 打ち上げの様子は、YouTube の NASA 公式チャンネル にアーカイブされています。 2015年9月から1年半(Phase 1)は磁気圏昼側領域を重点的に観測します。 この間、衛星群は約1日で地球を周回していて、 衛星間距離は最も遠い時で 160 km、最も近い時には 7 km まで接近します。 そして、2017年5月からは磁気圏夜側の磁気リコネクション領域を観測します(Phase 2b; "Maha" phase)。 この期間、衛星群は3日で地球を周回します。

Q & A

  1. MMS は Magnetospheric MultiScale の略称?

    違います。最後の S がいったい何の S なのか、実はよくわかりません。 M が複数あるからでしょうか...?

  2. MMS ミッションのセールスポイントは何でしょうか?

    時間分解能・空間分解能の両面で、 電子の運動論物理を観測できるようになることです。 これは磁気圏のプラズマ観測史上、はじめてのことです。

  3. 観測の時間分解能は?

    電子計測器の時間分解能は 30 ms です。 これは、かにパルサーの回転周期 33 ms とほぼ同じです。

  4. MMS の観測は本当に multiscale なのでしょうか?

    正確には違うと思います。磁気リコネクションは、電子スケールの現象とイオンスケールの現象、そして磁気流体スケールの現象が複雑に影響しあう多階層現象ですが、MMS 衛星群で見えるのは電子スケールの現象です。MMS 単体では、イオンスケール・磁気流体スケールの周辺状況はわかりません。そういう意味では MMS は "Magnetospheric Microscale mission"(by 宇宙研 H. H. さん)なのかもしれません。周辺状況を Geotail, Cluster 2, THEMIS などの衛星ネットワークで同時観測することで、はじめて真のマルチスケール観測が実現するわけです。

  5. MMS 衛星群を見ることはできますか?

    場合によっては見えるかもしれません。地上から撮影した衛星群の写真が、NASA のウェブページで紹介されています。NASA's MMS Spotted from Tokyo(英語)

  6. 4つの衛星に、ビートルズのメンバーにちなんだ愛称がつけられている、というのは本当?

    研究の現場では愛称は使わず、普通に MMS1, MMS2, MMS3, MMS4 と呼んでいます。 論文・プレゼンテーションでは、MMS1, MMS2, MMS3, MMS4 のように黒・橙 (or 赤)・緑・青の4色で区別することが多いです。 愛称を使うようになれば、衛星をより身近に感じられますね。

  7. MMS は当面、ずっとデータを送り続けてくるのでしょうか?

    いえ、違います。軌道を変更する期間中(Phase 1x, Phase 2a)は、 観測オペレーションは保証されておらず、従ってデータも取得できないはずです。

  8. MMS がギネス記録を持っているというのは本当でしょうか?

    2つのギネス記録を持っていると聞いています。 1つめは、地上から最も高い地点(高度 70,135 km)で GPS を使った記録です。

    2つめは、史上最短の衛星間距離(7 km)のはずです。 記録を確認できましたら、改めてお知らせさせていただきます。

専門家向け

目的・概要

MMS ミッションの目的・概要については、Burch さんの SSR 論文を参照してください。

分野外の方々にとっては、以下の解説記事も参考になると思います。

観測機器

Space Science Reviews 誌の MMS 特集号 にまとめられています。

日本語では、宇宙科学研究所の北村さんの講演資料(MMS 衛星群の観測: PDFファイル)が参考になります。

ミッション成果

MMS ミッションの初期成果のハイライトは、2015年10月16日の観測でしょう。 MMS は、電子の速度分布関数の超微細構造をヒントにして、 地球磁気圏昼側の磁気リコネクションの X-line 領域を検出することに成功しました。

この観測を契機にした多くの初期成果論文が、Geophysical Research Letters (GRL) 誌の MMS 特集号 に収録されています。 多くの論文に宇宙研の FPI グループの方々が関わっている他、 宇宙研・東工大の研究者から3本の筆頭著者論文が出ています。 これらの初期成果を俯瞰した GRL 誌の Frontier 論文はこちらです。

今後、MMS の最初の観測シーズン(Phase 1)の成果は、Journal of Geophysical Research (JGR) 誌の MMS 特集号 に掲載されていく予定です。 また、MMS 研究チームによる 論文リスト も参考になるでしょう。

日本の MMS 関連学会・研究会

2016年から日本地球惑星科学連合(JpGU)大会で、MMS ミッションに関する国際セッションを運営しています。

衛星軌道

名古屋大学・宇宙地球環境研究所の ERG サイエンスセンターでは、 MMS を含む地球磁気圏周辺の観測衛星軌道を Web で確認できるようにしています。 "MM1"(赤紫)が MMS の軌道です。

データ解析ツール

MMS の観測データを解析するためには、 IDL 言語で構築された統合データ解析環境 SPEDAS を使うことが推奨されています。 現在、SPEDAS の開発版 (Bleeding Edge 版) に MMS 用モジュールが収録されています。 SPEDAS の日本語チュートリアルとしては、 IUGONET (UDAS) コミュニティの方々が作られた資料が参考になると思います。

リンク

公式サイト
日本国内の関連研究部門