ショートコロキウム 2010 アブストラクト

04/24井上茂樹(東北大)コア構造ハローによるdynamical friction抑制メカニズム
アブストラクト
dynamical frictionは粒子系において働く,力学的なエネ ルギー緩和のプロセスのひとつである.これにより,運動 する重い粒子は周囲の背景粒子によって,徐々に運動エネ ルギーを奪われていく.しかし,背景粒子の分布がコア構 造(中心部で密度が一定)であれば,なぜかそのコア構造 の中ではdynamical frictionが効かなくなるということが 知られている.本研究では,N体シミュレーションを用いる ことで,コア構造中で働く粒子の相互作用を調べ,dynamical frictionでは3体相互作用の効果が重要であることを示した. また,コア構造中ではその独特なポテンシャル形状のために, 3体相互作用の様子が変化し,一部の粒子がdynamical frictionの効果を相殺していることを発見した.
05/12押野翔一(総研大)惑星形成過程にガス抵抗があたえる影響について
アブストラクト
太陽系形成の標準モデルによると、現在の岩石惑星及びガ ス惑星のコアは微惑星同士が衝突合体することにより形成さ れたと考えられている。先行研究で行われているN体シミュ レーションでは計算量の問題から一つの微惑星の質量が10の 23乗gの初期条件が用いられている。一方、重力不安定説に よれば原始惑星系円盤中に存在するダストから形成される微 惑星の質量は不安定の波長内のダスト質量となるため、太陽 系標準円盤の面密度を仮定すると、重力不安定によって形成 される初期の微惑星の質量はより小さい可能性がある。また、 より小さい粒子ほど相対的に重力にたいするガス抵抗の影響 が大きくなる。本発表では現在行っているガス抵抗を考慮し たN体シミュレーションについて報告する。
05/19鈴木重太郎(総研大)超新星背景ニュートリノ検出率予測のニュートリノ温度依存性について
アブストラクト
重力崩壊型超新星爆発の際には、多量のニュートリノが発生して 束縛エネルギーの大半を持ち去ると考えられている。また、ニュ ートリノは他の物質との反応性が極めて乏しいことから、過去の 超新星爆発の際に発生したニュートリノが現在でも宇宙空間に存 在していると考えられており(以下SRN)、水チェレンコフ検出器 によってSRNを検出し、情報を解析することが出来れば、超新星爆 発やニュートリノ自体についての研究に大きく寄与すると考えら れる。但し、SRNの検出率に関しては幾つかの不定性が指摘されて おり、そのなかでも検出率に大きく影響を及ぼす要素として、超新 星内部のニュートリノ温度が明らかになっていないことがあげられ る。そこで、本研究では、超新星元素合成と銀河化学進化モデルを 元にフレーバーごとのニュートリノ温度を推定することで、SRN検出 率及びそのエネルギースペクトルをこれまでより精密に予測する方 法を提案する。今回の発表では、研究の概要と結果のうち、前回発 表以降に進展した部分を中心に報告する。
05/26佐々木明(総研大)化学反応の不定性や放射輸送の近似法がprimordial binary形成に与える影響
アブストラクト
まず、宇宙初期の星形成過程におけるガス雲の分裂可能性を 1ゾーンモデルで調べた結果を発表する。 高密度領域での水 素分子の量を決める3体反応の反応係数には大きな不定性があ ることが知られているが、この不定性がガス雲の安定性にお よぼす影響に ついて調べた。次に、近年Turk et al(2009)な どで第一世代星が単独ではなく、連星系として形成される可 能性が言われている。簡単なテスト計算で、Turkらの局所的 な密度から光学的厚みを計算する方法と、Sobolev法を用いた 計算法とで、光子の脱出確率を計算して比較した。そして、 異なる放射輸送の近似法を使うと第一世代星形成がどのよう に変わってくるか考えてみる。可能であれば、発表者の目指 すSobolev近似の高次項まで取り入れた脱出確率の計算方法も 紹介したい。
06/02馬場 淳一(CfCA)渦状腕構造の維持機構
アブストラクト
我々は,恒星系円盤の重力多体系ダイナミクスと,星間ガスの自 己重力,冷却や加熱過 程,星形成とそれにつづく超新星爆発と いった重要なプロセスを組み込んだ,銀河円盤全体の高精度3次 元数値シミュレーションにより,渦状腕構造のダイナミクスを調 べている.本講演では,恒星系渦状腕の変動性とその維持機構に ついて述べる予定である.また,最近,天の川銀河のミニチュア 版との呼ぶべき計算に成功した.その結果についても紹介したい.
06/09大栗 真宗 (理論部)重力レンズ時間の遅れの現状と将来
アブストラクト
重力レンズクエーサー複数像間の時間の遅れは宇宙の距離 スケールを直接測定できる手法として古くから知られているが、理 論面の進展及び新しい観測によりここ数年急速な進展をみせている。 今回の発表ではまず現在の状況を紹介し、その後将来の展望を議論す る。
06/23佐藤 奨 (理論部)NDWとGRBにおけるr-processの可能性
アブストラクト
r-processは速いタイムスケールでの中性子捕獲によって 鉄よりも重い元素の約半数を生成する過程であり、特に ウランなどの放射性元素の起源である。そのような過程 を引き起こす環境は高温・高密度なものであり、候補と なる天体サイトとしてはニュートリノ駆動風、中性子星連星合体 などが考えられているが、はっきりとは分かっていない。 また、元素合成の基礎となる核反応率に関しても 不定性は大きい。本発表ではr-processの候補として 有力であるニュートリノ駆動風と、新たな天体候補の 可能性があるガンマ線バーストにおけるr-process元素合成 についての計算結果の紹介をする。
06/30高橋 博之 (CfCA)相対論的Sweet-Parker型磁気リコネクションは速いリコネクションか?
アブストラクト
磁気リコネクションの重要性は地球磁気圏、太陽、実験室プラズマなど 幅広い分野で認識されているが、近年その重要性は高エネルギー天体現 象でも注目されている。これは磁気リコネクションによって磁気エネル ギーを効率的に熱・運動エネルギーに変換するためである。遅い衝撃波 を伴わないSweet-Parker型(以下,SP)非相対論的磁気リコネクションにお いては磁気リコネクションによって磁気エネルギーが運動エネルギーに 変換され、それによって形成されるアウトフローはアルヴェーン速度ま で加速されることが知られている。 では、磁気エネルギーが静止質量エネルギーを超えるような相対論的状 況下ではアウトフロー速度はどうなるのか。非相対論的磁気リコネクシ ョンモデルから推測すると磁気エネルギーは運動エネルギーに変換され、 アウトフロー速度は流入する磁場強度に比例して増加する。従って相対 論的リコネクションではアウトフローは相対論的速度まで加速されると 考えられる。また、相対論的アウトフローが形成されるとローレンツ収 縮の効果によってエネルギー変換効率も上がることが理論的研究によっ て指摘されている(Blackman & Field '94, Lyutikov & Uzdensky '03)。 一方、磁気エネルギーが熱エネルギーに変換される場合には、相対論的 速度を持つアウトフローは形成されず、エネルギー変換効率の上昇も見 込めないことが理論的研究によって指摘されている(Lyubarsky '05)。 これら二つの異なるモデルは数値シミュレーションによって確かめる必 要がある。本講演では相対論的磁気流体シミュレーションを用いてSP型 磁気リコネクションによって形成されるアウトフロー速度とエネルギー 変換効率について調べた結果について報告する。
07/07中村 航ガンマ線放射核26Alに関する研究の現状
アブストラクト
放射性同位体である26Alは、約1Myrの半減期で崩壊する。そのときに 放出される1808.65keVガンマ線が銀河平面に沿って観測される事から、 26Al生成は現在も継続的に起きている事が示唆されており、超新星爆発 は有力な生成源であると考えられている。しかし観測から推定される量 と数値計算の結果との間には隔たりがあり、この問題は未だ解決されて いない。26Alの天体起源に関する研究をレビューするとともに、我々の 取り組みを紹介する。
07/14斉藤 貴之階層的星団形成
アブストラクト
衝突/相互作用銀河のなかでは多数の星団が見つかっている。これらの質量やサ イズは現在の球状星団のそれに匹敵し、現在の球状星団に対応するものであると 考えられている。しかしその形成過程は全く明らかになっていない。そこで我々 は、大規模銀河衝突シミュレーションから星団の形成過程について調べた。 そ の結果、星団形成過程が、(1)初期に衝突によって形成されたショック領域で多 数の小さな星団が形成され、(2)それらが重力的に集積し大質量星団になるとい う、階層的星団形成であることを明らかにした。
07/21松井秀徳multiple nuclei をもつULIRGsの起源
アブストラクト
HSTによるI-bandでの観測から、z~0.1にあるULIRGs のサンプル のうち20%がmultiple (N>3) nucleiをもっていることが示され ている。これらのULIRGsは、短いタイムスケール(数100 Myrの間) に銀河が複数回以上衝突したと解釈されている。しかしながら、 z~0.1において理論的に見積もられる銀河合体率は低く、その解釈 が正しいとすると、観測から示されているmultiple nucleiを持つ ULIRGsの割合は理論から見積もられる割合と比較して多すぎる。 我々は、銀河衝突合体の超高分解能シミュレーションをおこなった。 その結果、銀河衝突合体過程において、10^8Msunを超える hypermassive star clustersが銀河中心領域に複数個形成されること がわかった。これらのclustersは、I-bandで強く光り、luminosityが z~0.1で観測されているULIRGsのnucleiと同程度であることがわかった。 このことは、multiple nucleiを持つULIRGsを一回のMajor mergerで説 明できることを示唆している。これらの結果を報告する。
10/06石山智明Cosmogrid Project
アブストラクト
我々は「Cosmogrid Project」を推進してきた。このプロジェクト では、 (i) 異機種混合グリッドコンピューティングの技術開発、超大規 模宇宙論的N体シミュレーションへの応用 (ii) 小スケールのダークマターハローの統計的性質の解明 を目的としてきた。今回はプロジェクト概要を説明した後、後者に ついて詳しく述べる。
10/13加瀬 啓之新しいベクトル化手法の開発と重力相互作用計算への適用
アブストラクト
近年の汎用プロセッサにおいては、IntelアーキテクチャにおけるSSE など、演算性能の向上を目的とした拡張命令の整備が行われてきた。 特にPhantom-GRAPEライブラリ(Nitadori et.al. 2006)は、SSEを用いて 重力相互作用計算を実装し、通常のC言語による実装と比較して10倍程 度高速化することを示した。しかし、プロセッサの命令を直接埋め込む 実装であるため、コードの可読性や可搬性、SPH法などへの実装ノウハウ の流用の困難さなどの問題がある。我々は演算のベクトル化に関して、 これらの問題を解決できる手法を開発し、ライブラリ化を行った。重力 相互作用計算を実装したベンチマークでは、Phantom-GRAPEの7割程度ま で高速化した。
10/20塚本裕介(東京大学)parallel GSPHコードの開発とその星周構造進化への応用
アブストラクト
近年、中心星から離れた領域(数十AU程度)に惑星を持つ系外惑星系 GJ758b,c、HR 8799b,c,dが見つかった。このような惑星系はDodson- Robinson et al 2009らが指摘するようにコア集積モデルではコアの 集積に時間がかかり過ぎるため形成が難しく、重力不安定モデル (いわゆるキャメロンモデル)によって形成されたことが強く示唆さ れる。太陽系内の惑星の形成モデルとしては棄却されたキャメロンモ デルではあるがいくつかの系外惑星を説明するモデルとして近年見直 されてきており、星周円盤の不安定性をその熱進化との関連性で調べ た研究は近年多くなされてきた。(ex., Boley et al 2010,Mayer et al 2007、Stamatellos et al 2007)しかしながらこれらの研究は初期に 準安定な比較的重い円盤を仮定しており、いわば初期条件から不安定 な円盤を仮定していると言える。そのような問題点から分子雲コアから 星形成、その後の星周構造の進化までを一貫して調べた研究も近年なさ れるようになっている。(Machida etal 2010, Walch 2009,2010, Vorobyov 2010) しかしながら、これらの研究はそれぞれシミュレーショ ンにある種の対称性を仮定する、分解能が低い、2Dであるといった問題 点が存在する。そこで、我々はparallel godunov SPHコードを開発し上 記の問題点を解消した星周構造進化のシミュレーションを行っている。 本発表ではまず前半にコードの各種テスト結果、特にSPHが不得意とする KH instabilityをGSPHが適切に扱えることを紹介する。そして後半に星 周構造の進化についてのシミュレーション結果について発表する。
11/10関口雄一郎(理論部)NSE (nuclear statistical equilibrium) electron capture rate
アブストラクト
大質量星の重力崩壊では電子補核反応が重要な役割を果たす。 大質量星の重力崩壊のシミュレーションで使われる状態方程 式では、陽子(p)、中性子(n)、α粒子、代表重元素(A)の4種 類の要素のみが存在するとしてNSEを解く。 代表重元素は通常熱力学的特性を再現する安定核となるが、 代表重元素では表現されない不安定核は、存在量こそ少ない ものの、個々の電子捕獲反応率は大きく、これを無視できる かどうかは自明ではない。そこで、NSE back ground のもと で電子捕獲反応を計算し、それを用いて重力崩壊シミュレー ションを行う研究を開始したので、その概要と方法について 発表する(ほとんど結果はなし)。
11/17富田研吾(総研大) 低質量分子雲コア中のファーストコアの進化と観測可能性
アブストラクト
星形成過程の初期に形成されるファーストコアは角運動量問題と 関連して、双極分子流の駆動や連星形成、星周円盤形成など興味 深い現象の舞台である。ファーストコアは過渡的な天体でありそ の寿命は数百から千年程度と短く、また分子雲に深く埋もれてい るためその観測は困難であると考えられてきた。 この発表では低質量な分子雲コア中でのファーストコアの性質に ついて報告する。典型的な分子雲コア中のファーストコアと異な り、低質量分子雲コアにおいては分子雲中のガスが早く枯渇する ため、ファーストコアはより長いタイムスケールで進化する。こ のような系の進化には輻射による冷却の効果が重要であるため、 三次元多重格子輻射流体シミュレーションを行い、このようなフ ァーストコアが少なくとも10000年以上もの非常に長い寿命を持ち 得ることを示した。更にこのようなファーストコアは典型的なフ ァーストコアと比べて暗いものの十分観測可能であること、星形 成過程の他の段階と観測的に区別可能であることを示した。この ような低質量の分子雲コアが重力的に不安定になって収縮する可 能性は低いが、コア質量関数の観測では多数の低質量コアが存在 するため、これまでの予測よりもファーストコアが多数存在し観 測できる可能性を示唆する。
12/1藤井 顕彦(東京大学) local simulations of dense planetary rings
アブストラクト
惑星の環の動力学について、基本的事項のレビューと、 シミュレーションのためのコードの開発状況を報告し たいと思います。
12/1佐藤 奨(東京大学) R-process nucleosynthesis in Gamma Ray Burst
アブストラクト
「ガンマ線バースト(GRB)は宇宙で最も激しい爆発現象であり、 初期の宇宙を探査する指標でもあります。また、GRBの発生し た場所は重元素量が少ないことが観測によって確かめられて いるものもあります。そこでGRBにおける元素合成を計算する ことで、GRBはweak r-element (Baより軽い元素)の起源であ るのか、あるいはuniversality(元素の組成パターンは一定)が 宇宙初期から保たれているのかを検証したいと思います。」
12/5佐々木明(東京大学) 様々な不定性を考慮した第一世代星形成
アブストラクト
まず、宇宙初期の星形成過程におけるガス雲の分裂可 能性を1ゾーンモデルで調べた結果を発表する。高密 度領域での水素分子の量を決める3体反応の反応係数 には大きな不定性があることが知られているが、この 不定性がガス雲の安定性におよぼす影響について調 べた。熱的不安定になるのは、比較的低密度な領域 (10^10(/cc)くらい)とより高密度な領域(10^15(/cc) くらい)の2つがあることが知られているが、その両 方について調べた。 また3体反応の反応率と、放射輸送の近似法を系統的 に変化させた3次元のシミュレーションのスナップシ ョットを使った解析結果も紹介する。可能であれば、 1ゾーンモデルに使われている化学進化のコードを gadgetに組み込んだ計算結果についても報告したい。
1/5西村信哉(理論部) 重力崩壊シミュレーションの為のNSE弱過程反応率テーブル作成
アブストラクト
大質量星の重力崩壊と超新星爆発、高密度天体の形成とその後の進 化過程は、天文学の中でも重要な研究対象であり、これまで理論や 観測など様々な観点から研究されてきた。重力崩壊型超新星につい ては、シミュレーションによる爆発の再現ができていないことなど により、多くの不定性が残されている。また、関係する物理過程の 不定性とも相俟って、天文と物理双方からの精力的な研究が行われ ている。 今回、我々は重力崩壊から超新星爆発において重要となるような、 高温かつ高密度な状態において重要である電子捕獲反応などの弱い 相互作用による反応に着目した。原子核が電子に捕獲されて中性子 数が増える過程は重力崩壊そのものや中性子星の形成において本質 的であるが、これまでの研究においては、重い原子核の存在は無視 されてきた。現在のシミュレーション研究の厳密さにおいてはその 簡易化は致命的と言える。 本講演では、我々の反応率テーブルについて用いた物理、利用した 反応率、計算法などの概要を解説しながら、特に、これまでの取り 扱いがいかに不十分であったかを示したい。次に、応用例として重 力崩壊シミュレーションに適用したテスト計算を示す。また、そも そも基礎としている原子核の反応率等の不定性にも言及し、その重 要性を示す。
1/5滝脇 知也 (理論部) 超新星爆発の3Dニュートリノ輻射輸送計算の進捗状況
アブストラクト
超新星の爆発メカニズムは50年に渡って天体物理学者を悩ませて きた。大質量星の重力崩壊によって生じる重力エネルギーは99% ニュートリノによって持ち去られるが(冷却される)、このニュー トリノは原子中性子星形成時に作られる衝撃波の背面を暖める。冷 却、加熱両方に寄与するニュートリノの取り扱いは本分野の研究に とってクリティカルなものである。 精密なニュートリノ輸送を計算するために、今までは星の形状を球 対称に仮定し簡単化してきたが、そのような仮定のもとでは超新星 爆発を成功させることは難しい。2000年代前半に分かったこと である。2011年の現在、コンピューター資源が増加したおかげ で、計算を球対称から星の自転軸に沿った軸対称に拡張することが できている。そして、その拡張によって衝撃波背面での物質の輸送 のされ方が本質的に変わり、爆発に成功したという報告がなされた (Marek & Janka 2009)。しかし、軸対称の計算ではまだ物質の輸送 のされ方に大きな制限をかけていることは間違いない。我々はそう した仮定なしに、ニュートリノ輸送を精密に解きながらも3次元的 な物質の輸送を解く野心的な研究を行い始めた。今回の発表ではそ の研究で得られた初期の成果と、さらに定量的な予言をするための 計算の精密化の現状についてお話する。
1/26安武伸俊 (理論部) 高密度天体内部におけるストレンジネスとその天体現象に与える影響
アブストラクト
近年、格子QCD計算における目覚ましい研究成果により、ハイペロン を含んだバリオン間相互作用が理論計算によって直接導きされつつ ある。さらに実験においてもJ-PARCによって今後数年以内にハイペ ロン=核子間相互 作用が明らかにする計画が進んでおり、バリオン 間相互作用の定量的な理解も今後10年にわたって議論されていくに 違いない。 我々は、そのバリオン間相互作用を直接用いてハイペロ ンやクォークの自由度も考慮にいれ、さらに相転移における非一様構 造を考えた。ハドロンにおいてはBrueckner-Hartree-Fock模型におけ る完全計算、混合相におい てはパスタ構造まで考え、現状でもっと も手堅い手法で相転移を考えることで、必然的に多くのクォーク模型 が制限されてしまう可能性に触れる。 また、発表では天文学的影響を 意識して有限温度、ニュートリノ込みで中性子星物質、超新星物質、 そして連星中性子星物質と三つにカテゴライズして紹介する。3者と もおのおの明確な特徴をもつことを示す。 最後に具体的な天文現象に 適用した例を紹介する。