ショートコロキウム 2013 アブストラクト

04/17 押野 翔一(CfCA) ホットジュピターが存在する系での微惑星集積のN体計算
アブストラクト
近年、観測技術の向上により多数の系外惑星が発見されている。ケプラー宇宙望遠鏡 の惑星候補も含めると既に3000個以上の系外惑星が検出されている。また、一つの恒星 に複数の惑星を持つ系外惑星系の観測が増えている。このように、次々と発見されてい る系外惑星系では内側領域に巨大ガス惑星を持つような系(ホットジュピター)や太陽系 と異なる惑星配置の系外惑星系が多数発見されている。  これらの惑星系は従来、太陽系の惑星形成論で考えられてきたその場形成では説明で きず、惑星移動などの効果を考える必要がある。太陽系と異なる惑星系での形成過程を 明らかにするためにここではホットジュピターが存在する系を仮定し、この系における 微惑星集積過程をN体計算を用いて調べる。
04/24 高橋 博之(CfCA) 超臨界降着流からの放射とアウトフローの形成
アブストラクト
ブラックホール候補天体からは様々な放射スペクトル/アクティビティが観 測されており、これらはブラックホールへのガス降着量によってその様相が 変わると考えられている。ガス降着量は通常エディントン降着率に比べて小 さいが、近年X線観測により、エディントン降着量を超えるような超臨界降着 円盤が示唆されており、さらにこれらの天体からは高速(ほぼ光速)のアウト フローが観測されている。しかしこの円盤の加速、収束機構はわかっていな い。本研究では特殊相対論的輻射磁気流体計算を用いることで高速アウトフ ローが輻射圧によって加速されることを明らかにした。 さらに本講演では アウトフロー収束の新しい可能性についても議論する。
05/08 浜名 崇(理論部) SuprimeCamのPSFの素性とそのcosmic shear statisticsへの影響
アブストラクト
タイトルとおりSuprimeCamのPSFの素性とそのcosmic shear statisticsへの影響 について話します。これは先月投稿した論文にまとめられた研究の紹介になります。 http://adsabs.harvard.edu/abs/2013arXiv1304.4992H 内容は理論の話ではなくどちらかというと実験の話になります。 かなりマニアックな内容になりますので、参加/不参加は各自判断して下さい。
05/15 平居 悠(理論部) Constrains on the volcanic activity of basaltic magma based on the distribution of radioactive elements on the Moon
アブストラクト
The investigation of the relationship between the abundance of radioactive elements and eruption ages of mare basalt units has been made by using the data of Kaguya gamma-ray spectrometer. We found that radioactive element concentrations for large mare units inside the PKT are higher than those for large mare units outside the PKT. Moreover, inside the PKT, we found that younger units have higher radioactive element concentrations, suggesting that long-lived radiogenic heating is very important for prolonged mare volcanism. In contrast, most of large mare units outside the PKT are estimated to be old, implying that old eruptions of these units occurred without substantial radiogenic heating by KREEP-rich material.
05/22 田中 雅臣(理論部) 中性子星連星合体は電磁波でどう見えるか?
アブストラクト
中性子星連星合体からの重力波は 近い将来に稼働する次世代重力波検出器の最も有望なターゲットである。 しかし、重力波の位置決定精度は数度程度であり、 重力波源の天体物理学的な起源を明らかにするためには、 電磁波観測による天体の同定が必要不可欠である。 中性子星連星合体ではr-process元素合成が起き、 一部の放射性元素の崩壊による電磁波放射が期待されていた。 しかし、放出される物質のほとんどが鉄より重い元素のため、 そのような系から期待される放射を正確に予想することはこれまで不可能だった。 今回、初めて連星合体により放出される物質中の 3次元輻射輸送シミュレーションを行うことに成功した。 その結果をもとに、どのような電磁波フォローアップ観測が必要かを議論する。
05/29 富阪 幸治(理論部) Structure and Critical Mass of Filamentary Cloud
アブストラクト
Herschel observation has recently revealed that interstellar molecular gas forms many filamentary clouds. Polarization observations in optical and infrared wavelengths indicate that the magnetic field is often running perpendicular to the filament. In this paper, the magneto- hydrostatic configuration of isothermal gas is studied, in which the thermal pressure and the Lorentz force is balanced against the self-gravity and the magnetic field is globally perpendicular to the axis of the filament. The model is controlled by three parameters as center-to-surface density ratio ($\rho_c/\rho_s$), plasma beta of surrounding interstellar gas ($\beta$) and the initial radius of the filament nomarized by the scale-height ($R'_{0}$), although there remains a freedom how the mass is distributed against the magnetic flux (mass loading). In the case that $R'_0$ is small enough, the magnetic field plays a role in confining the gas. However, the magnetic field has generally an effect in supporting the cloud. There is a critical line-mass (mass per unit length) above which the cloud is not be supported against the gravity. Comparing with the critical line-mass of non-magnetized cloud ($2c_s^2/G$, where $c_s$ and $G$ represent respectively the isothermal sound speed and the gravitational constant), the mass of the filament is more than twice as large as the non-magnetized one. It is shown that the critical mass of the filamentary cloud is much affected by the effect of the magnetic field.
06/05 小久保 英一郎(理論部) Formation of Terrestrial Planets from Protoplanets: Effects of System Size and Position
アブストラクト
The final stage of terrestrial planet formation is known as the giant impact stage where protoplanets collide with one another to form planets. We have been investigating this final assemblage of terrestrial planets from protoplanets using N-body simulations. So far we have systematically changed the surface density and orbital separation of an initial protoplanet system, and the bulk density of protoplanets, while the initial system radial range has been fixed as 0.5-1.5 AU. For the standard disk model, typically two Earth-sized planets form in the terrestrial planet region. In the present paper, we systematically change the initial system radial range and position to investigate how they affect terrestrial planet formation. We find that as we increase the radial range with the fixed inner edge, the number of Earth-sized planets increases, while the number of planets per radial width decreases. The mass of planets and their radial accretion ranges increase with the system radial range. We also find that as we shift the inner edge outward with the fixed system radial range, the numbers of Earth-sized planets and planets per radial width decreases. The position of the inner most planet almost corresponds to the initial system inner edge. From all simulation results, we confirm that it is the system total mass that determines the mass of large planets. The masses of the largest and second-largest planets increase almost linearly with the system total mass. The typical mass ratio between the largest and second-largest planets is about 0.6.
06/26 中村 文隆 (理論部) 星形成における磁場の役割の解明に向けて
アブストラクト
星は分子雲中に点在する分子雲コア(密度10^4 cm^-3程度)から誕生する。 しかし、コアの進化を決定する重要な要因である、磁場の役割については 理論的にも観測的にも理解が進んでおらず、世界中で大きな論争を生む種となっ ている。 その理由の一つは、これまでの磁場強度測定は、主にOHやHIのスペクトル線や OH、H$_2$Oメーザー線のゼーマン分裂が用いられており、前者では100cm^-3程度の 低密度領域の磁場が、後者では星形成後の高密度スポットの磁場がそれぞれ求め られている に過ぎず、コアに直接付随する磁場強度を測定した例はほとんどないからである。 我々は、星なしコアに付随する磁場強度をCCS(J_N=4_3-3_2, 45.379GHz)のゼー マン分裂を 用いて検出し、コア進化における磁場の役割に強い制限を与えることを目標に、 野辺山45m鏡用の新45GHz帯受信機Z45の開発を進め、3月末に45m鏡に搭載し、 試験観測を行った。講演では、受信機の開発状況、試験観測の結果について 紹介する。
07/03 工藤 哲洋(理論部) 宇宙線パーカー不安定性の2次元MHD数値シミュレーション
アブストラクト
河面に重力成層した星間ガスには磁場が存在するため,浮力型のパーカー不安 定が成長し,星の母体となる分子雲の形成や銀河磁場のダイナモ機構に寄与して いると考えられている.また,星間ガスには超新星爆発などによって高エネル ギーに加速された宇宙線が存在し,その単位体積あたりのエネルギーは星間磁場 のエネルギーと同程度である.宇宙線は磁力線に沿った方向には拡散しやすい が,磁力線に垂直な方向には拡散しにくい.そのため,宇宙線の存在はパーカー 不安定を促進させる働きがある.宇宙線の影響を受けたパーカー不安定性を数値 シミュレーションによって研究したものは少ない.そこで,私たちは宇宙線の効 果を含めたパーカー不安定性のMHD数値シミュレーションコードを作成し,星間 ガスにおけるパーカー不安定を研究している.その途中経過を報告する.
07/10 大須賀 健(理論部) 「京」時代の輻射流体力学計算法
アブストラクト
宇宙物理学において輻射流体力学が重要であることは論を俟たない。 これまではEddington近似やFLD近似が広く用いられてきたが、 多次元問題や対称性が悪い問題などでは正しい解が得られる保証がない。 そこで我々は「京」をはじめとするスパコンでの実行を視野に、 より厳密に輻射場を解く新たな計算法を開発している。 現状までの開発状況にについて報告する。
07/17 野村 真理子(お茶の水女子大学/国立天文台 理論部) 『AGN outflow の輻射流体シミュレーション』
アブストラクト
活動銀河核(AGN)の輻射スペクトルに吸収線が発見され、ジェットとは異なる ガス噴出現象があることがわかってきた。その正体は巨大ブラックホール周囲 の降着円盤から噴出する円盤風であると考えられてるが、その噴出メカニズム や構造は解明されていない。 本研究は現在有力視されているラインフォース駆動型円盤風モデルに着目し、 その噴出メカニズムと構造を輻射流体シミュレーションを用いて明らかにしよ うとするものである。空間3次元でシミュレーションを行うことを目標として いるが、前段階として、降着円盤の回転軸に対して対称性を仮定した2次元シ ミュレーションを行った。コロキウムではその結果を紹介する。
07/24 柴垣 翔太(東大/国立天文台理論部) 中性子星合体におけるr-process元素合成
アブストラクト
r-processが起こる候補天体のひとつに中性子星の合体が挙げられる。中性子星の合体では中性子数密度が高いため、非常に重い元素まで作られる。重い元素は核分裂を起こし、元素組成に大きな影響があると考えられる。我々は核分裂についての最新の理論モデルを用いて、核分裂の影響を調べている。本講演ではその経過報告を行う。
10/02 吉田 春夫(理論部) ハミルトン系の可積分性の必要条件とその周辺
アブストラクト
古典力学の研究における基本問題の一つに「具体的に与えられたハミルトン系が 可積分か否かを判定すること」がある。ハミルトン系が可積分であるとは,運動 方程式の一般解を解析的に求めることができることを意味する。例えば万有引力 で相互作用する2質点の運動を記述する2体問題は可積分であるが3体問題は可 積分でない。この可積分性の判定条件へのイントロを目的として最近の結果まで を振り返る。1989年に提出した予想に対する反例の発見に関するエピソードも紹 介する。ついでに過去に出版した自著の宣伝も試みる。
10/09 梶野 敏貴 (理論部) ブラックホール vs. 中性子星? -- 元素合成から超新星爆発の中心天体を探る --
Black hole vs. neutron star as a supernova remnant: r-process perspective
アブストラクト
Abundance measurements of extremely metal-deficient halo stars with Subaru Telescope and Hubble Space Telescope exhibit extremely large scatter in neutron-capture elements. Their production sites are presumed to originate from rapid-neutron capture proces (r-process) in supernovae because they satisfy the "universality" that is theoretically predicted as a piece of clear evidence for the primary r-process.
However, our SUBARU-HDS (High Dispersion Spectrograph) team has found also that the abundance ratios between the light-to-heavy mass elements like Sr/Ba or Sr/Eu progressively deviate from the "universality" as the metallicity becomes lower in [Fe/H]<-2. A contribution from a new rank of the r-process is therefore expected, but neither astrophysical site nor the process is known.
We have proposed a model in which the core-collapse of type II supernovae associated with black hole formation would produce a pronounced light r-process elements relative to the heavy r-process elements, thus leading to an enhanced [Sr/Ba] and [Sr/Eu] ratios in single-site r-process enriched stars. This model is consistent with Galactic chemical evolution of the observed elements whose deviation from "universality"or equivalently the gradual enhancement in the ratios of [Sr/Ba] and [Sr/Eu] as the metallicity becomes lower is well explained. We have studied the effects of turbulence in ejecta in hybrid numerical simulation model of supernova explosions which are proved to be important in explaining the observed large scatter in the [Sr/Ba] data.
10/30 和田 智秀(4D2U) コンピュータグラフィックスによる研究者向けから一般公開用の映像コ ンテンツ作成
アブストラクト
科学データをもとに広報用の映像コンテンツを作る事は古くから行われて来ました が、多くの場合、研究 の後にできる副産物であることが多いようです。 コンピュータグラフィックス(CG)は複雑な物理現象をよりわかりやすく表現するツー ルとなり得ますが、 どのような表現が有効なのかはあまり議論されておらず、また研究者もどのような表 現がCGで可能なのか を知らないため映像作成の依頼ができないという問題があります。 問題解決のためには研究者側にCGでどのような表現が可能なのかを知っていただき、 目的に合わせた依頼 をしてもらう必要があります。 そこで現在、進行中の以下の映像作成の途中経過および、その表現手法について紹介 します。
-超新星爆発
-中性子星連星合体
-彗星
-微惑星形成
-重力波観測機器の紹介
-ジェット的超新星の元素合成
-パルサー磁気圏
-多体衝突による大質量星の飛び出し

映像作成の一連の流れとして研究者の研究発表時の資料の作成やモデル説明図などを 通して最終的に 一般向けのわかりやすい映像コンテンツを作成する手順をふむと、研究にも正の寄与 を与えながら、 よりよい映像を作ることができるとわかりました。
11/06 銭谷 誠司(理論部) Magnetic diffusion and ion nonlinear dynamics in magnetic reconnection
アブストラクト
Magnetic reconnection is a fundamental process in many plasma systems, ranging from laboratory and solar-terrestrial environments to extreme astrophysical settings. The reconnection process is controlled by magnetic dissipation physics in a small-scale region near the reconnection point (X-line), and therefore the structure of the reconnection site is of strong interest. According to the standard picture of collisionless reconnection, the X-line is surrounded by a compact electron diffusion region and by an outer ion diffusion region. While the electron region has been extensively studied, much less is known about the ion region. In this work, we examine key aspects of the ion region in magnetic reconnection. First, we evaluate the "diffusion" of magnetic field lines, going back to the topology theorems. Unlike in the MHD, the idealness, the frozen-in, magnetic diffusion, and the energy dissiation can be all different in a kinetic plasma. We will apply these concepts to the reconnection site in two-dimensional particle-in-cell (PIC) simulations. Importantly, in the outer part of the ion region, even though the ion ideal condition is violated, the magnetic fields are frozen to plasma fluids. This raises a serious question to the widespread definition of the ion diffusion region, based on the ion nonidealness. We further examine the ion velocity distribution function in the same region. The distribution function contains multiple populations such as global Speiser ions, local Speiser ions, and trapped ions. The particle motion of the local Speiser ions in an appropriately rotated frame explains the plasma nonidealness. The trapped ions are the first demonstration of the regular orbits in the chaotic particle dynamics [Chen & Palmadesso (1986)] in self-consistent PIC simulations. They would be observational signatures in the ion current layer near reconnection sites.
11/27 藤本 桂三 (理論部) 磁気リコネクションのセパラトリクス領域におけるプラズマ波動と粒子加速
アブストラクト
プラズマ波動は、無衝突プラズマ系において粒子種間のエネルギー・運動量交換を実現する唯一の媒体である。とりわけ、磁気リコネクション過程においては、運動量輸送にともなう電気抵抗によって磁気散逸が生じたり、共鳴粒子が加速されることによって非熱的プラズマが生成されるため、その発生機構の解明は重要である。近年、地球磁気圏における衛星観測によって、磁気リコネクション領域周辺でミクロスケールの強いプラズマ波動(ラングミュア波、ESW(Electrostatic Solitary Wave)、ホイッスラー波)がしばしば検出されている。これらの波動は、観測的には非常に顕著であるにもかかわらず、数値シミュレーションではこれまでのところ再現できておらず、その発生機構は明らかになっていない。本研究では、従来よりも現実的なパラメータ設定の下で大規模な粒子シミュレーションを実施し、観測に合致する波動を再現することに成功した。その結果、これまでは直感的に電子アウトフローがエネルギー源であると考えられていたのに対し、実際には電子インフローが強く加速され、その結果として強い波動が発生することが明らかになった。本講演では、最新のシミュレーション結果を紹介し、運動論的線形波動解析に基づく波動励起機構と電子加速機構を解説する。
12/04 石津 尚喜 (CfCA) 重力不安定性の数値シミュレーション
アブストラクト
微惑星の形成モデルとして重力不安定性による微惑星形成について考える。原始 惑星系円盤の中心面ではダストが沈殿してダスト層が形成されて十 分に薄くな り、臨界密度に達すると重力不安定性によりダスト層は分裂する。分裂したダス ト層のダストが集積することによって微惑星は形成され る。しかしながら、乱 流が存在すると、ダストは巻き上げられるために臨界密度に達することができな い。本研究では円盤が層流状態で、かつ重力 不安定の臨界密度に達しうる状況 を仮定する。 重力不安定性に関して、ガスとダスト間の相互作用がない場合や考慮されていて も2次元での数値シミュレーションのみが行われてきた。本研究で は、ガスとダ ストの相互作用を考慮した3次元数値シミュレーションを行った。ダストサイズ の違いによる、不安定性の性質の違いを議論する。
12/11 鈴木 昭宏(CfCA) 無衝突プラズマ研究のための相対論的Vlasovコード開発
アブストラクト
宇宙空間には至る所に無衝突プラズマ(粒子間の相互作用が無視できるほど希薄なプラズマ)が 存在し、様々な天体現象で重要な役割を担っている。このようなプラズマでは、粒子の速度分 布が熱的分布からずれた際に再びある温度の熱的分布に落ち着くまでの時間が長いため、非熱 的な粒子が発生し得る。こういったプラズマの振る舞いを知るには、物理空間だけでなく、速 度空間の情報も合わせた位相空間中の構成粒子の分布の時間発展を追うことが必要となる。 また、天体物理学的には高エネルギー放射の放射源として相対論的な速度にまで加速された荷 電粒子からの放射を考えることが多く、非熱的な荷電粒子がどのように生成されるかが大きな 関心の一つとなっている。 無衝突プラズマの挙動を再現するシミュレーション技法としては粒子法(Particle in cell:PIC)が 主流であるが、近年では位相空間中の分布関数の時間発展を記述するVlasov方程式を差分法に よって解く手法(Vlasov simulation)が検討されている。 このような現状を踏まえ、本研究では相対論的Vlasov simulationコードの開発を行なっており、 現在テスト計算を行なっている。本発表では、コードの詳細とテスト計算の結果について紹介 する。
12/18 滝脇 知也(CfCA) Current status report and highlight of central engine of core-collapse supernovae at 2013
アブストラクト
超新星爆発の中心エンジン研究は近年のコンピューターシミュレーション技術の進化により、 目覚ましい発展を遂げている。 天文台で何度か発表したように、我々がセルフコンシステントな3次元爆発モデルを提出した他にも、 親星の小ささや自転の強さが爆発に与える影響が熱心に調べられ、 超新星の物理の本質的な理解に迫りつつある。 今回は直近に二つの国際会議が行われたため、最新の状況を整理する機会に恵まれた (京都大学でのSupernovae and Gamma-Ray Bursts 2013、福岡大学でMMCOCOS)。 この2つの国際会議のハイライトを紹介し、 2013年現在における超新星爆発の理解の最前線を紹介する。
01/08 片岡 章雅(総合研究大学院大学) 高空隙ダストの光学特性と原始惑星系円盤における観測可能性
アブストラクト
ダストの合体成長過程は惑星形成の第一段階として重要である。電波観測によって、原始惑星系円盤内のダストはミリメートルサイズまで成長していることが示唆されてきた。このような観測の解釈においては、ダストはコンパクトであることが仮定されていた。一方、近年の理論的研究によって原始惑星系円盤においてダストは高空隙構造を持ち、内部密度は 10^{・4} g cm{^-3} まで下がることが示された (Okuzumi et al.2012, Kataoka et al. 2013a,b)。このような高空隙ダストの光学特性はわかっておらズ、原始惑星系円盤において高空隙ダストがどう観測されるかはわかっていなかった。 我々は有効媒質理論を採用し、Mie計算を用いて原始惑星系円盤で想定される高空隙ダストの吸収係数・散乱係数を計算した。その結果、高空隙ダストの吸収係数は基本的にダスト半径 a と体積充填率 f の積 af によって特徴付けられることを示した。更に、コンパクトなダストにおいてみられる吸収係数の増大が高空隙ダストでは現れないことも分かった。この違いはダスト半径と波長が同程度の時に現れる。我々は、この違いを利用することでダスト吸収係数のミリ波での傾き beta から原始惑星系円盤においてコンパクトダストと高空隙ダストを区別できることを示した。更に、長波長での散乱係数においても空隙率とダスト半径を区別できることがわかった。
01/22 藤井 顕彦 (東京大学) 惑星リングに形成される自己重力ウェイク
アブストラクト
惑星リングは多数の氷粒子によって構成されると考えられてい る。土星リングには、大きなスケールでみられる模様のほかに、差動回転と自己重力の競合によって形成される自己重力ウェイクと呼ばれる空間構造があることが知られている。今回のショートコロキウムでは、ウェイクのピッチ角を空間相関の方法を使って計算する方法を紹介し、円盤銀河などの無衝突系円盤の摂動増幅理論との関係を述べる。
01/22 橋詰 克也 (総合研究大学院大学) The super-critical accretion disk and outflow; an origin of the ULX nebula
アブストラクト
近年の観測によって、X線領域で大変明るく輝く天体、 超光度X線源(ULXs; Ultra-luminous X-ray sources)が 発見されている(K. Makishima et al. 2000)。 ULXsの光度は恒星質量ブラックホール(BH)のEddington光度(L_Edd) を超えていることがわかっているが、どのようなメカニズムで輝いているのかは 未だに解明されていない。標準円盤(Shakura & Sunyaev 1973)の光度は L_Eddを超えることができないため、恒星星質量BH(太陽質量の10倍程度)を 取り巻く標準円盤という従来の理論モデルが適用できないからである。  このULXsの光度を理解する一つの仮説が中質量BH(太陽質量の100倍から 1000倍を超える質量のBH)を取り巻く標準円盤というシステムである。L_Eddは 中心天体の質量に比例するため、中質量BHが存在すれば、ULXsの大きな光度を 無理なく説明できる。しかし、中質量BHが存在するという確かな証拠は未だ得られていない。 ULXsの光度を理解するもう一つの仮説が、L_Eddよりも明るく輝く超臨界降着円盤と呼ばれる 降着円盤が存在するという仮説である。もし超臨界降着円盤が存在すれば、 すでに観測されている恒星質量BHが中心天体でもULXsの光度を説明できる。ただし、 超臨界降着円盤が存在するか否かについてはまだはっきりとはわかっていない。  近年の多波長観測によって、ULXs周囲にはnebula(ULXs nebula)が発見されている。 ULXs nebulaの起源はまだ理解されていないが、ULXsの中心天体を明らかにする上で 重要な現象だと考えられる。そこで、我々は2次元の輻射流体計算を用いて恒星質量 BH周囲の超臨界降着円盤を調べた。結果、超臨界降着円盤を再現することができ、 また円盤表面からは広い開口角(20°~85°)を持った強力なアウトフローが発生する ことを明らかにした。さらに、アウトフローの運動エネルギーはULXs nebulaに 供給されるエネルギーとおおよそ一致することも確かめることができた。 この結果は、ULXsの中心天体が恒星質量BHとそれを取り巻く超臨界降着円盤であること を示唆する。