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太陽の黒体放射

地球近傍の大気圏外で、太陽に垂直な面が単位時間、単位面積当たりに受ける輻射エネルギーはほぼ一定であり、1366 J s$^{-1}$ m$^{-2}$ (1.96 cal cm$^{-2}$ min$^{-1}$)となる。これを太陽定数と呼ぶ。 地球の軌道半径( $1.496 \times 10^{11}$m )と太陽定数より、太陽が単位時間当たりに放射するエネルギー 1$L_{\odot}$

\begin{displaymath}
L_{\odot} = 4 \pi (1.496 \times 10^{11})^2 \times 1366 = 3.826 \times 10^{26} \mbox{J~s$^{-1}$}
\end{displaymath} (4.18)

とわかる。これを太陽光度(Solar Luminosity)と呼ぶ。

前節で示したように太陽は十分に不透明なので、太陽放射は黒体放射(Black Body Radiation)で近似することができ、Planckの式

\begin{displaymath}
B_{\nu} (T) = \frac{2 h \nu^3}{c^2} \frac{1}{\exp(\frac{hv}{k_{\rm B}T}) -1}
\end{displaymath} (4.19)

で表される。 これは単位面積を単位時間・単位方向・単位周波数あたりに放射されるエネルギー(intensity) [J s$^{-1}$ m$^{-2}$ sr$^{-1}$ Hz$^{-1}$]である。 単位周波数当たりという次元が入っているために、単位波長当たりの場合は別の形になるので注意、
\begin{displaymath}
B_{\lambda} (T) = \frac{2 h c^2}{\lambda^5} \frac{1}{\exp(\frac{hv}{k_{\rm B}T}) -1}
\end{displaymath} (4.20)

図4-9のように太陽の放射スペクトルは紫外線より短波長を除いて5800Kの黒体放射とみなせる。 赤外と可視光での放射をあわせると全放射エネルギーの91%となる。

\includegraphics[width=7.5cm, clip]{Lean1995_SolarRadiation.eps}

図4-9.太陽の放射スペクトルと5770Kの黒体放射(Lean 1991より)

  1. 質量欠損と太陽の寿命
    この太陽光度と水素核融合反応による放出エネルギー(4.8)の知識を元に太陽の残りの寿命を見積もる。 単位時間にヘリウムに変換される水素(陽子)は、
    \begin{displaymath}
4~m_{\rm P} \times \frac{L_{\odot}}{4.262 \times 10^{-12} } = 6.004 \times 10^{11} ~~~~ \mbox{[kg s$^{-1}$]}
\end{displaymath} (4.21)

    つまり、太陽の水素全の質量$XM_{\odot}$が全てヘリウムになるには、 $XM_{\odot}/6.004 \times 10^{11} = 1.56 \times 10^{18}$ sかかるこのになる(約440億年)。 しかし、実際には太陽の水素核燃焼核の周りには安定な放射層が取り巻いておりおよそ10%の水素しか燃やすことができない。 よって残りの寿命は大おそ44億年と見積もることが出来る。 いい加減な計算だが、これは悪くない値である。

  2. 惑星の平衡温度
    中心の星(例えば太陽)放射のエネルギーが、定常的に球対称に流れ出していくと仮定する。 光度$L$の中心星から距離$a$では、星に垂直な単位面積を単位時間に通過するエネルギー(エネルギー流速またはflux)は$L/(4 \pi a^2)$となる。 よって、半径Rの惑星が単位時間に星の放射から得るエネルギーは、反射を無視すると $\pi R^2 L/(4 \pi a^2)$となる。 一方、半径Rの天体が単位時間に放出するエネルギーはStefan-Boltzmannの法則より、 $4 \pi R^2 \sigma_{\rm S} T_{\rm S}^4$となる(惑星が黒体であると仮定)。 $\sigma_{\rm S}$はStefan-Boltzmann定数 $\sigma_{\rm S}$ = $ 5.6703 \times 10^{-8}$ J s$^{-1}$ m$^{-2}$ K$^{-4}$ であり、 $T_{\rm S}$は天体の表面温度。

    平衡状態にあるとすると、

        $\displaystyle \displaystyle\frac{\pi R^2}{4 \pi a^2} L = 4 \pi R^2 \sigma_{\rm S} T_{\rm S}^4$  
      $\textstyle \Rightarrow$ $\displaystyle T_{\rm S} = 280 ~~
\left(\frac{L}{L_{\odot}}\right)^{1/4} \left(\frac{a}{\mbox{1AU}}\right)^{-1/2}
~~\mbox{K}$ (4.22)

    となる(1AUとは1天文単位のこと)。 表4-2に実際の観測値のとの比較をした。 実際の惑星表面温度が高くなるのは、主に惑星大気による温暖化が原因である(それ以外に惑星自身が発熱している)。

    表4-2. 惑星の表面温度    
    惑星 軌道半径$a$ 輻射平衡温度 実際の表面温度(平均)
    金星 0.72 AU 326 K 730 K
    地球 1 AU 280 K 290 K
    火星 1.52 AU 220 K 220 K
    木星 5.20 AU 122 K 170 K
    土星 9.54 AU 90 K 160 K



  3. 輻射圧

    エネルギー$h \nu$の光子の運動量は$h \nu /c$である。 不透明で光の波長に比べて十分に大きな物体が単位面積当たりに、中心星からの輻射を吸収することで受ける運動量は、

    \begin{displaymath}
F_{\gamma} (a) = \frac{L}{4 \pi a^2 c}
= 4.56 \times 10^{-6...
...) \left(\frac{a}{\mbox{1AU}} \right)^{-2} ~~~\mbox{N~m$^{-2}$}
\end{displaymath} (4.23)

    となる。

    一方、中心星(質量$M$)が質量$m$の物体に及ぼす重力は、

    \begin{displaymath}
F_{\rm g} (a) = \frac{G M m}{a^2}
\end{displaymath} (4.24)

    となる。 物体が一様密度$\rho$を持ち、半径$R$の球形だとすると、質量 $m = \frac{4 \pi}{3} R^{3} \rho$また、輻射を受ける断面積は$\pi R^2$となる。 中心星の輻射圧と重力がこの物体に及ぼす力の比は、
    $\displaystyle \frac{F_{\gamma}(a)}{F_{\rm g} (a)}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{\pi R^2 L}{4 \pi a^2 c} /\left( \frac{G M}{a^2}\frac{4 \pi}{3} R^{3} \rho \right)$  
      $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{3 L}{16 \pi G M c R \rho}$  
      $\textstyle =$ $\displaystyle 5.79 \times 10^{-7}
\left(\frac{L}{1 L_{\odot}} \right)
\left(\...
... m}} \right)^{-1}
\left(\frac{\rho}{\mbox{$10^{3}$\ kg m$^{-3}$}} \right)^{-1}$ (4.25)

    ちなみに$\rho = 10^3$ kg m$^{-3}$ (1 g/cc)は水の密度。 このように輻射圧の影響は中心星からの距離$a$に依存しない。 サイズが小さいものほど輻射圧の影響を受けるようになるが、少なくとも我々自身にとっては太陽系のどこにいても無視できる力であることがわかる。 太陽系でもミクロンサイズの小さなダスト粒子は太陽の輻射圧を受けて運動する。


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saigo 平成21年7月26日