n体問題の特異点について
Sur les singularites du probleme des n corps
H. von Zeipel, Arkiv for Matematik, Astronomi och Fysik 4(1908), 1-4



n体問題のある実数解が、時間tが実領域0 ≦ t< t_1に属するとき正則(holomorphe) であるとする.t_1がこの解の臨界点であれば、よく知られているように、
lim_{t=t_1} ρ = 0, (1)
である.ここでρは相互距離のうち最小のものである. Uで力関数を表わし、Vで系の重心に関する慣性モーメントを表わすと、運動方程式と エネルギー積分からただちに次の関係が導ける.
d^2 V / d t^2 = 2U + 4h . (2)
ここでhはエネルギー積分の値である.tがt_1に向かうと、(1)によりlim U = ∞ である.方程式(2)によれば、
lim_{t=t_1} V = c, (3)
である.ここでcは正またはゼロの有限または無限の決まった量である. パンルベ(M. Painleve)は微分方程式の解析理論講義(Lecon sur la theorie analytique des equations differentielles, p.583)において、関係式(1)からは 必ずしもt=t_1に2つまたはそれ以上の質点が空間のある特定の点で衝突するとは 言えないと注意している.tがt_1に近づくとき質点のどれかが極限位置に近づかない こともあり得る.
この論文の目的は問題のこの不定特異点(?)(singularites indeterminee)の研究に 貢献することである.筆者はその存在を扱うのではない.ただ以下の定理を示す つもりである.
定理. tがt_1に近づくときに質点のどれかが有限距離の極限位置に近づかなければ、 必然的に
lim_{t=t_1} R = ∞, (4)
を得る.ここでRは相互距離の最大のものである.

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