ニュートン重力系の特異点と衝突
Singularities and Collisions of Newtonian Gravitational Systems
Donald G. Saari, Arch. Rational Mech. and Anal. 49(1973), 311-320
天体力学のn体の重要な未解決問題の一つは何がカタストロフを構成しているかを
決める問題である.もっと正確に言うと、微分方程式理論からするとn体問題の解は
独立変数tの解析関数である.カタストロフを解の特異性と解釈すれば、どんな物理的
事件が時刻t=0の特異性を引き起こし得るのか、と問題を言い換えることができる.
著者の信ずるところによれば、特異性はすべて衝突による.すなわち、
t --> 0+のとき、位置ベクトルr_iは慣性座標系で決まった極限位置に近づく.
(この予想が正しければ、[5,6]より、ほとんどすべての初期条件に対して一意の解が
すべての時間にわたって存在する.)
衝突でない特異性の存在はt --> 0のときに非有界な運動の存在と等価であることが
知られている.直観は有限時間内でのこの非有界運動の概念と相入れない
(いったいどこで、またどのように系は必要な速度を得るのだ?).また直観によれば、
そのような運動が可能なら、解の拡大率は「遅い」はずであると推測される.
(拡大率の自然な基準は慣性モーメントであり(1.2節参照)、ここでもそれを採用する.)
この逆が成り立つことを示すのがこの論文の目的のひとつである.もっと詳しく
言えば、慣性モーメントがゆっくり変わる関数なら、特異性は衝突による.
すなわち、衝突でない特異性の存在は「高速で」非有界になる運動の存在と
等価である.
この論文の第二の部分では、直線n体問題では特異性と衝突の問題は生じないこと、
つまり直線n体問題では特異性はすべて衝突であることを証明する.
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