国立天文台 理論研究部

田中雅臣助教が第28回井上研究奨励賞を受賞


田中雅臣助教

理論研究部の田中雅臣助教が第28回井上研究奨励賞を受賞しました。 この賞は、過去3年間に理学・工学・医学・薬学・農学等の分野で博士の学位を取得した35歳未満の研究者で、自然科学の基礎的研究において新しい領域を開拓する可能性のある優れた博士論文を提出した研究者に贈呈されるものです。 広い自然科学分野全体で、今年は田中氏を含め全国で30名のみが受賞しました。 贈呈式は2012年2月3日に行われます。

田中氏は、超新星爆発という宇宙における星の巨大爆発に関して、理論的・観測的両方の手法により研究を行い、東京大学で2009年に博士論文「超新星爆発の三次元構造」を提出し、博士の学位を取得しました。 超新星爆発は恒星が一生の最期に起こす大爆発です。 我々の周りにある炭素、酸素、鉄などの重元素の大部分は、恒星の内部で合成され、超新星爆発によって宇宙空間にばらまかれたと考えられており、超新星爆発は宇宙の進化を理解するために重要な天体です。 しかし、その爆発のメカニズムは半世紀以上にわたって謎のままで、天文学の重要な未解決問題となっています。

田中氏は博士論文で、超新星爆発から期待される放射をシミュレーションによって明らかにしました。また、理論的な予想に基づき、すばる望遠鏡を使って超新星爆発が放つ光の偏光を観測することで、超新星爆発がまん丸でなく、三次元的な形状をもっていることを明らかにしました。 近年、多次元的な形状が超新星爆発の成功の鍵となる可能性が注目されており、田中氏が博士論文にまとめた研究成果は、超新星爆発のメカニズムの理解に重要な貢献を果たしています。


田中氏がすばる望遠鏡を使って観測した
超新星爆発の画像
(矢印で示されているのが超新星爆発)

今回の受賞について田中氏は次のように話しています。
「博士論文の研究は、東京大学大学院で指導して下さった野本憲一教授、私に天文観測を丁寧に教えて下さった広島大学の川端弘治准教授を始め、多くの研究者の方々に支えられて実現したものです。 これまで一緒に研究して頂いた方々に感謝を申し上げます。 これからも理論研究部の方々と協力した理論的研究、すばる望遠鏡を始め世界中の観測施設を使った観測的研究、またそれらの融合研究を積極的に進めていきます。」

井上研究奨励賞の概要と、田中氏の研究については、以下のリンクをご覧下さい。