研究紹介 | 国立天文台 理論研究部

Research Highlights: archives

2016年度



精密核物理でIa型超新星元素合成の謎にせまる



Ia型超新星は宇宙で最も激しい爆発現象の一つであり、宇宙の加速膨張の発見でも重要な役割を果たした天体現象です。ところが、その爆発機構の詳細はまだ明らかにされていません。Ia型超新星では地上では見ることのできない高温・高密度状態が実現され、不安定原子核による電子捕獲が次々に起きて、元素合成および超新星光度に重大な影響を及ぼすと考えられています。近年、実験技術の進展によって、私たちの共同研究者による新たな電子捕獲率(Gamow-Teller遷移強度)の理論予測が正しいことが示され、従来の元素合成計算で用いられてきた電子捕獲率は実験値と比べて定性的に違いがあることが判明しました。そこで本研究では、より現実的な原子核殻模型を用いて電子捕獲率を系統的に計算し、Ia型超新星の爆発的元素合成の計算に応用しました。その結果、クロム・鉄・ニッケル等の中性子数が過剰な同位体元素の過剰生成問題が解決され、爆発機構に関しても爆燃から爆轟に転じる爆発モデルがシリコンからニッケルまでの太陽系元素組成を系統的に良く再現できることが明らかになりました。
(2017/02/02)

図:(左上) Suzakuでとらえたティコの超新星残骸の画像 (C) RIKEN。 (右上)新たに計算されたGamow-Teller遷移強度。(下)理論計算による太陽系元素組成の再現。

"Impact of New Gamow-Teller Strengths on Explosive Type Ia Supernova Nucleosynthesis"
Kanji Mori et al., 2016, ApJ, 833, 179. [ADS]
森 寛治



宇宙の鉄はどこに?微小重力実験で迫る金属鉄の凝縮過程



北海道大学低温科学研究所、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立天文台理論研究部の研究チームは、観測ロケットS-520-28号機を用いた微小重力実験を行い、超新星爆発時に金属鉄の微粒子が作られる過程を再現しました。 この実験では、対流の発生を抑えた微小重力下において、鉄のガスから微粒子が生成する様子をその場観察し、鉄原子が固体として凝縮する際の付着確率(くっつきやすさ)を調べました。その結果、これまで100%と考えられていた付着確率が、実は0.002%程度であることがわかりました。これは、金属鉄粒子の生成は宇宙環境において非常に限定的なことを意味し、宇宙において鉄は化合物として存在している、または不純物として他の粒子に付着している、という可能性を示唆します。

詳しくは北海道大学のウェブリリースをご覧ください。

(2017/01/31)
"Pure iron grains are rare in the universe",
Yuki Kimura, Kyoko, K. Tanaka, Takaya Nozawa, Shinsuke Takeuchi, Yuko Inatomi
2017, Science Advances, 3, 1 [journal]
野沢 貴也 [personal webpage]



宇宙のレンズが裏付ける予想より速い宇宙の膨張


国際研究チームH0LiCOW(ホーリー・カウ)コラボレーションは、ハッブル望遠鏡やすばる望遠鏡などハワイそして全世界のたくさんの望遠鏡を用いて、強い重力レンズ効果を引き起こしている5つの銀河を観測し、宇宙の膨張率の値であるハッブル定数を従来の方法とは独立に調べました。その結果、これまで行われてきた超新星やセファイド変光星の観測で得られたハッブル定数の値と極めてよく一致していました。しかし、プランク衛星による宇宙背景放射の観測で得られた宇宙初期の観測に基づくハッブル定数の値とは一致しませんでした。この不一致は非常に興味深い問題です。この研究チームには、理論研究部のKenneth C. Wong研究員も参加しています。

詳しくはすばる望遠鏡のウェブリリースをご覧ください。
(2017/01/29)



磁気リコネクション系における新しい電子軌道の発見


 宇宙空間でおきる磁気爆発現象(磁気リコネクション)の振る舞いは、 プラズマ粒子の複雑な運動によって支配されています。 その中でも電子の運動はプラズマ系の物理を考えるうえの最小構成要素です。 リコネクション系での電子運動は主にプラズマ粒子シミュレーションによって研究されてきましたが、 最近のシミュレーションが巨大になりすぎたせいもあって、 個々の電子軌道を見ることは少なくなってきました。 また、基本的な軌道のタイプも1980年代に出揃ったと考えられていました。
 本研究では、リコネクション系での電子の運動を検証するために、 粒子シミュレーションで得た2000万個の仮想電子の軌道を徹底的にサーベイしました。 その結果、静電場に跳ね返されて中央平面を横切らない軌道など、 これまで知られていなかったタイプの軌道を多数発見しました。 図は代表的な電子軌道の例ですが、このうち太字が今回見つかった新しい軌道です。 驚くべきことに、こうした新タイプの軌道を通る電子は数の大半を占めているため、 粒子軌道論とそのうえに構築された多くの議論を考え直す必要がある、と私たちは考えています。
 なお、本論文はアメリカ物理学協会(AIP)の19ジャーナルの週間ハイライト論文に選ばれました。AIP の ニュースリリース でも紹介していただいています。
(2016/10/06)
S. Zenitani and T. Nagai, Phys. Plasmas 23, 102102 (2016)
銭谷誠司 (private website)



横顔が輝く宇宙灯台:
謎の超高輝度X線パルサーの正体をスパコンがあばく


 X線で通常の何百倍も明るい天体は、ブラックホールに多量のガスが流れ込んで明るく光っていると考えられていました。しかし最近この明るい天体のなかに周期的な明滅を示すものが発見され、その正体が大問題となりました。ブラックホールでは周期的な明滅は起こらず、一方でブラックホール以外の天体では明滅は可能でも明るく光るのは難しいとされていたからです。国立天文台の川島朋尚氏らの研究グループは、大量な柱状のガスの横顔が輝く「新タイプの宇宙灯台モデル」を提唱し、スーパーコンピュータ「アテルイ」による計算で、中性子星でもブラックホールと同程度に明るく光り得ることを示しました。これは、従来の考え方に見直しを迫る結果です。
詳しくは天文シミュレーションプロジェクトのウェブリリースをご覧ください。
(2016/09/08)

Kawashima, T., Mineshige, S., Ohsuga, K. and Ogawa, T., 2016, PASJ, published online [PASJ] [arXiv]
川島 朋尚(国立天文台)、嶺重 慎(京都大学)、大須賀 健(国立天文台)、小川 拓未(京都大学)



大学の天文台がタッグを組んで超新星の謎を解明


甲南大学、京都大学、国立天文台の研究者を中心とする研究グループは、光・赤外線天文学大学間連携を通じた共同研究によって、「限界を超えた超新星」の爆発前の姿を明らかにしました。
詳しくは甲南大学のウェブリリース国立天文台のウェブリリースをご覧ください。
(2016/06/07)
Yamanaka, M., Maeda, K., Tanaka, M., et al. 2016, PASJ, publised online [ADS] [arXiv]
山中雅之 (甲南大学)、前田啓一 (京都大学)、田中雅臣 (国立天文台)



2015年度


中性子星におけるクォーク相の形成過程


中性子星の内部構造や進化過程はほとんどが未解明であり、宇宙物理と原子核物理にまたがる重要な問題の1つである。地上などの密度が低い場所では、クォーク3つで構成される中性子や陽子などのハドロンが存在するが、密度の高い中性子星ではハドロンが分解され裸のクォークからなる相が存在する可能性がある。しかし、そのクォーク相がどのように形成されるかは、よく分かっていない。そこで流体保存則とクォークの拡散、弱相互作用反応を同時に解くことで、ハドロンからクォーク相への転換の素過程を、詳細に調べた。結果として、不可能とされてきた吸熱条件下でのクォーク相形成が起こることや、不安定だと考えられていた境界面が安定である可能性が高いこと等を示した。この研究は、世界で初めてクォーク相形成の素過程を明らかにし、30年ほど信じられてきた予想をいくつも覆す重要な成果である。(2016/3/31)

"Hydrodynamical study on the conversion of hadronic matter to quark matter: I. Shock-induced conversion", Shun Furusawa, Takahiro Sanada, and Shoichi Yamada
Phys. Rev. D 93, 043018 [Journal] [ADS] [arXiv]

"Hydrodynamical study on the conversion of hadronic matter to quark matter: II. Diffusion -induced conversion", Shun Furusawa, Takahiro Sanada, and Shoichi Yamada
Phys. Rev. D 93, 043019 [Journal] [ADS] [arXiv]
古澤峻 [personal webpage]



宇宙における重元素の起源:
rプロセス元素の過少生成問題に解決の糸口


金・ウラン等、鉄より重い元素(rプロセス元素)の起源解明は、素粒子・原子核・天文学における今世紀最大の謎の一つである(Discover magazine)。柴垣翔太と梶野敏貴(東大・天文台)をはじめとする国際共同研究グループ(link)は、初期宇宙でまず超新星のrプロセスによって重元素が作られ始め、宇宙年齢10億年以後に遅れて起こった中性子星連星の合体における元素合成が徐々に寄与することによって、現在の太陽系rプロセス元素組成ができあがった、とする理論モデルを提唱した。この理論によって、元素量の極大値(質量数130, 165, 195)前後の同位体の過少生成問題が解決され、宇宙初期世代星と太陽系の元素組成間のユニバーサリティーをも説明できることが明らかになった。
図:太陽系rプロセス同位体組成比の観測値(黒丸)と理論予測との比較。理論曲線は、磁気流体ジェット型超新星爆発モデル(青)、ニュートリノ加熱型超新星爆発モデル(緑)、中性子星連星合体モデル(赤)からの寄与と全ての寄与の和(黒)。
(2016/03/25)

Relative contributions of the weak, main and fission-recycling r-process
S. Shibagaki, T. Kajino, G. J. Mathews, S. Chiba, S. Nishimura, and G. Lorusso, Astrophys. J. 816 (2016), 79. [Journal] [ADS] [arXiv]
柴垣翔太
梶野敏貴 (personal website)



スイング増幅により形成される銀河渦状腕の性質



銀河には渦状腕を持つものが数多く存在します。渦状腕を説明する理論モデルの1つにスイング増幅があります。 渦状腕は銀河回転のために徐々に巻き込まれていこうとします。 巻き込まれていく途中では、腕自身の重力の影響が強くなるため密度が増幅されて、はっきりとした渦状腕が形成されます。このようなメカニズムをスイング増幅と呼びます。 しかし、もしスイング増幅が働いた場合、どのような構造の渦状腕が形成されるのか、これまで詳しく研究されていませんでした。 そこで、理論解析とN体シミュレーションを用いて、形成される渦状腕の間隔や長さ、密度などを調べました。 その結果、腕の本数や腕の巻き込み具合といった構造を特徴付ける量が、銀河の回転速度勾配と星のランダム速度に関係があることが分かりました。 今後、これらの結果を観測やシミュレーションと比較することで、渦状腕形成におけるスイング増幅のはたす役割を理解できることが期待されます。
(2016/3/8)
"Galactic Spiral Arms by Swing Amplification", Shugo Michikoshi, Eiichiro Kokubo, 2016, Astrophysical Journal, [arXiv]
道越秀吾、小久保英一郎



運動論シミュレーションで明らかになった磁気リコネクションの大規模構造



プラズマがどのように加速・加熱されるかは、宇宙・天体プラズマ物理学における重要な問題の1つです。磁気リコネクションは、磁気エネルギーをプラズマの運動エネルギーに変換する現象として注目されていますが、その詳細な物理過程は明らかになっていません。これまでに提案された、運動論(ミクロ過程)モデルと磁気流体(マクロ過程)モデルとの間には大きな隔たりがあり、両者がどのように結合しているのかはよくわかっていません。本研究では、最新のスーパーコンピュータを用いて、大規模な運動論シミュレーションを実施することにより、ミクロ過程が大規模構造へとつながっていく結合過程を明らかにしました。特に、磁気流体近似では無視されるホール電流が広範囲にわたって流れることが見い出され、従来の磁気流体モデルが必ずしも妥当ではないことが示されました。本研究は、天文シミュレーションにおいて一般的に用いられる磁気流体近似が、大規模過程においても必ずしも適当ではないことを示唆する重要な研究です。
(2016/1/24)
"Ion and electron dynamics generating the Hall current in the exhaust far downstream of the reconnection x-line", Keizo Fujimoto and Makoto Takamoto (2016), Physics of Plasmas, 23, 012903
[doi] 藤本桂三 [personal website]



銀河の化学力学進化シミュレーションから探るrプロセス起源天体


鉄より重い元素の多くは、rプロセスと呼ばれる元素合成過程により合成されます。これらrプロセス元素は銀河系の矮小銀河やハロー星で観測されています。しかし、その起源天体は未だ明らかになっていません。連星中性子星合体は、元素合成計算から、rプロセスの起源天体として有力視されています。ところが、連星中性子星合体は合体時間が長く、発生頻度も低いため、従来の銀河形成過程を考慮しない銀河の化学進化計算では、超金属欠乏星におけるrプロセス元素の観測値を再現できないという問題がありました。そこで本研究では、連星中性子星合体をrプロセス元素の主な起源天体として、矮小銀河の流体シミュレーションを行いました。シミュレーションでは、合体時間1億年の連星中性子星合体でrプロセス元素を放出しても、超金属欠乏星の観測値と矛盾しない結果が得られました。これは、矮小銀河では、星形成効率が低く、最初の星形成が始まってから3億年程度は銀河内の重元素量が増加しないためであることがわかりました。さらに、星形成領域での重元素の混合を考慮することで、連星中性子星合体が低い頻度で起こっても、極端に高いrプロセス元素組成を持つ星は形成されないことも示唆されました。銀河系もこのような星形成効率の小さい銀河の集積により形成されたならば、連星中性子星合体でrプロセス元素を合成したとしても、観測と矛盾しない可能性があります。
(2015/11/24)

"Enrichment of r-process Elements in Dwarf Spheroidal Galaxies in Chemo-dynamical Evolution Model", Yutaka Hirai, Yuhri Ishimaru, Takayuki R. Saitoh, Michiko S. Fujii, Jun Hidaka and Toshitaka Kajino
2015, The Astrophysical Journal, 814, 41 [ADS] [arXiv]
平居 悠 [personal webpage]



土星の環の自己重力ウェイク構造の傾き角



土星の環の密度の高い領域には、数十メートル程度の大きさの自己重力ウェイクとよばれる構造があると考えられています。 これは、環の軌道方向に対して傾いた細長い構造で、環自身の重力の作用により形成されます。 観測により自己重力ウェイクの軌道方向に対する傾き角が、土星からの距離と関係していることが知られていましたが、その理由は分かっていませんでした。 そこで、自己重力ウェイクの性質が場所や環の状態とどのように関係するかを解明するために、N体シミュレーションを行いました。 その結果、自己重力ウェイクの軌道方向に対する傾き角が、土星からの距離が遠いほど大きくなることを示しました。 これはA環での観測的傾向と一致し、自己重力と潮汐の競合を考慮したモデルにより説明されます。
(2015/10/28)
"Dynamics of Self-Gravity Wakes in Dense Planetary Rings I. Pitch Angle", Shugo Michikoshi, Akihiko Fujii, Eiichiro Kokubo, and Heikki Salo, Astrophysical Journal, 812, 151 [ADS] [arXiv]
道越秀吾、小久保英一郎



プレソーラー粒子から星の爆発を探る

f5c


プレソーラー粒子とは、隕石中で発見され、太陽系外にその起源をもつ (太陽系ができる前から形成されていた)と考えられる固体微粒子です。 その代表的なものの一つにプレソーラーAl2O3粒子がありますが、 その多くは0.5umより大きくまたそのいくつかは同位体組成の特徴から 超新星爆発時に形成されたと推測されています。
本研究では、この超新星起源のAl2O3粒子の形成環境を調べるために、 様々な物理条件のもとでダスト形成計算を行いました。 その結果、これらの比較的大きいAl2O3粒子が形成されるためには、 超新星放出ガスの特に密度の高いガス塊中で凝縮する必要があることが わかりました。 これはつまり、爆発によって放出されたガスは、密度の濃淡が激しい 非常に不均質な構造していたことを示唆します。 このように、プレソーラー粒子のサイズの情報からその形成環境 (星の爆発の物理状況)に制限を与えたのは、本研究が初めてです。
図は、凝縮時におけるAl原子の数密度の関数として計算したAl2O3粒子の 平均半径(赤線)。 網掛けの領域は、球対称の典型的な超新星モデルから見積もられた 放出ガス中のAl原子の密度範囲(Kozasa et al. 2009より)。 隕石中で発見された直径0.5um(半径0.25um)以上のAl2O3が形成される ためには、球対称の超新星モデルが予想するよりも一桁以上高い密度 (黒の破線)が必要であることがわかる。
(2015/10/9)

Probing the Physical Condition of Supernova Ejecta with the Measured Sizes of Presolar Al2O3 Grains, by Takaya Nozawa, Shigeru Wakita, Yasuhiro Hasegawa, Takashi Kozasa, 2015, ApJ Letters, 811, L39 (5pp)
[ADS] [arXiv]
野沢貴也 [personal website]



全天にわたる重力レンズシミュレーション


全天重力レンズシミュレーションによる計算結果の一例。 赤色の領域が高密度領域、青色の領域が低密度領域に対応する。

重力レンズ効果は、前景の物質分布がつくる重力場が背景の遠方銀河の像を歪める一般相対論的な効果です。 この現象は、宇宙の物質分布を調査するための有望な手段の一つとして今注目を集めています。 多くの場合、重力レンズ効果による像の歪みは極めて小さいですが、多数の背景銀河の像の歪みを統計解析することにより、 前景の物質分布を明らかにすることができます。 この重力レンズ効果をつかった方法論により、現在運行中のすばる望遠鏡広視野カメラHyper Suprime-Cam (HSC)では、 1000平方度以上の広い視野にわたって暗黒物質の地図を描き出される予定です。 そのため、広視野にわたる暗黒物質地図から得られる宇宙論的な情報を明らかにし理解することは、将来観測に応用する上で極めて重要です。 私たちは、重力レンズ効果の現実的な観測状況をできるだけ考慮するために、図に示しているような 全天にわたる重力レンズシミュレーションを行いました。 この全天シミュレーションから、HSCの観測領域を切り出すことで、200回の模擬HSC観測を行い、 重力レンズ効果で描き出される暗黒物質地図の統計的な性質を調査しました。 本文中では、私たちのシミュレーション結果と大規模構造形成理論モデルの詳細な比較を行っています。
(2015/9/3)
Probing cosmology with weak lensing selected clusters – I. Halo approach and all-sky simulations , Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, 453, 3043-3067 [ADS]
Masato Shirasaki



磁場で支えられた分子フィラメントの偏波構造

Fig.png
Herschel衛星によるダスト熱輻射の観測から、分子雲がフィラメント状の要素からなることが知られるようになった(Menshchikovら2010)。一方で、近赤外線領域の星間偏光の観測からは、このフィラメントが星間磁場に垂直であることが示された(Sugitaniら2011)。
観測に対応する、垂直な磁場によって支えられた等温の平衡形状(重力と磁場によるローレンツ力、圧力、回りの星間外圧の力学的釣り合い)を自己無撞着場の方法で計算し、重力に抗して支えられる臨界線質量λmaxを得た(Tomisaka 2014)。今回、このフィラメントで予想されるダスト熱輻射の偏波構造を調べた。
熱輻射の偏波は星間磁場に垂直方向に星間ダストの長軸が整列していることによって生じる。図でカラーは偏波度を、棒線は偏波のBベクトルを表し、左の図でθ=80度、φ=90度、つまり、z方向に伸びるフィラメントのほぼ真横で、大局的な磁場Bの方向から観測した場合を示している。中央の図は、フィラメントの中心と表面の密度比が10倍である低密度フィラメントに、右の図は、同じく密度比が300倍の高密度フィラメントに対するものを示している。
この例のように、星間磁場の方向から観測した場合、中央の図のように一般に偏波は弱くなることが予想されるが、高密度フィラメントの場合は、横向きに星間磁場が貫いているときの偏波構造を示すことがわかった。これは、フィラメントの軸と星間磁場が垂直な観測例が多いことへの説明になっていると考えられる。
(2015/5/25)
Polarization Structure of Filamentary Clouds, by Tomisaka, Kohji, 2015, ApJ, in press
[ADS] [arXiv]
富阪幸治 (private website)



r過程元素の起源解明に大きく前進


理化学研究所のEURICA国際共同研究グループは、重イオン加速器施設「RIビームファクトリー」を用いて、110個の中性子過剰な原子核の寿命を高い精度で測定しました。測定された110個の原子核のうち、40個の寿命は世界で初めて測定されたものです。国立天文台理論研究部の柴垣翔太(東京大学博士課程2年)と梶野敏貴准教授らと協力して、新たに得られた原子核の寿命を取り入れたr過程の理論計算を行いました。太陽系や金属欠乏星の元素組成比と比較すると、超新星爆発の元素合成シナリオと矛盾しない結果が得られました。

(左図)太陽系(現在)と金属欠乏星(初期銀河)の間の重元素組成パターンの普遍性(ユニバーサリティー)。原子番号50-55を除く重元素の全領域で、超新星爆発でのr過程元素合成シナリオと矛盾しない。
(右図)超新星爆発からさまざまな重元素が形成・放出される場面のイメージ図。
Credit: 超新星イラスト:池下章裕/粒子CG制作&合成:三上真世(国立天文 台広報室)

詳しくは下記ウェブサイトをご覧下さい。
理化学研究所プレスリリース
国立天文台
(2015/05/14)
β-Decay Half-lives of 110 Neutron-Rich Nuclei across the N = 82 Shell Gap: Implications for the Mechanism and Universality of the Astrophysical r-process
G. Lorusso, et al., Phys. Rev. Lett. 114.192501
柴垣翔太、梶野敏貴 (personal website)



相対論的プラズマ速度分布関数の生成アルゴリズム


プラズマ粒子シミュレーションやモンテカルロシミュレーションでは乱数を使って粒子の速度分布関数を生成しますが、相対論的に動く系での分布を扱う方法は実はよく知られていませんでした。本稿では、棄却法を使って分布関数全体をローレンツ変換するアルゴリズムを提案しています。
(2015/05/07)
Seiji Zenitani, Phys. Plasmas 22, 042116 (2015).
[Journal] [arXiv]
銭谷誠司 (personal website)



星団の初期質量関数



星団は分子雲での集団的な星形成によって生まれ、その質量は天の川銀河の星団で数十〜数万太陽質量と様々です。観測されている星団の質量関数は約-2のべき乗であることが知られていますが、その起源はまだ明らかになっていません。乱流を持つ分子雲では、分子雲がフィラメントと節を持つ構造を作り、その構造に沿って星、星団が形成します。これまでの星団形成シミュレーションは星団一個程度の規模でしたが、今回の研究では流体シミュレーションとN体シミュレーションを分けることでシミュレーションを単純化し、これまでより大規模な星団形成シミュレーションに行いました。シミュレーションでは、一つの巨大分子雲から百から数万太陽質量の星団が数十個形成しました。形成した星団の質量関数は分子雲の質量を用いSchechter関数で表すことができ、そのべきは2Myr後で-1.73、10Myr後で-1.67で、Carina領域の星団の質量関数と一致しています。この結果を用い、銀河の分子雲の質量関数を基に銀河全体での星団の質量関数を求めると、そのべきは-2程度になり、天の川銀河、M31、M83で観測されている若い星団の質量関数と一致しました。これらの結果は、分子雲の分布とその乱流によって星団の質量関数が決まっていることを示唆しています。
(2015/4/23)
Michiko Fujii and Simon Portegies Zwart, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, 449, 726-740 [ADS]
藤井 通子 [personal webpage]



ニュートリノ散乱の物質効果を量子論的に解明:
超新星爆発への応用が可能に


千明起(Cheoun, Myun-Ki, 韓国崇実大)、梶野敏貴(国立天文台/東大)ら国際共同研究グループは、超新星爆発の際に誕生し極限的な超高温・高密度環境にある原始中性子星内部で起こると考えられるニュートリノと高密度核物質との相互作用をクォーク・メソン結合型量子力学モデルで研究し、これを模した高エネルギー巨大加速器の素粒子衝突実験で生成されるニュートリノと核物質との反応断面積を再現することによって、ニュートリノ散乱における高密度物質効果を明らかにしました。論文は英国物理学会誌ハイライトの一つに選ばれ、"When and how do we include the in-medium effects in neutrino scattering off target nuclei? "と題した labtalk-article (http://iopscience.iop.org/0954-3899/labtalk-article/59987) に掲載され、質の高い論文を生み出す研究室として千研究室および梶野研究室が写真入りで紹介されています。

図:高エネルギー素粒子実験が、超新星爆発で発生するニュートリノと原始中性子星内部の高密度物質との相互作用を解き明かすために利用されることを示す概念図。超新星内部ではストレンジネス自由度を持つハイペロンの存在が予測されている。ストレンジニス自由度を考慮した理論モデルが、高エネルギーニュートリノ散乱断面積の実験結果を合理的に説明できることを示している。(写真は http://www-boone.fnal.gov/virtual_tour/ より)
M.-K. Cheoun, K.-S. Kim, H.-C. Kim, W.-Y. So, T. Maruyama and T. Kajino,
J. Phys. G42 (2015) 045102.
[http://iopscience.iop.org/0954-3899/42/4/045102/article]]
梶野敏貴 (http://th.nao.ac.jp/MEMBER/kajino/)
(2015/04/09)

2014年度



リコネクションジェットの中のショックダイアモンド


 戦闘機のエンジンのジェットの中には、ショックダイアモンドという不思議なパターンが見えることが知られています。これはジェットの排出速度が超音速になると見える現象で、宇宙ジェットのノット構造との関連性も議論されています。
 プラズマ中で磁力線が繋ぎ換わる磁気リコネクションは、高速のジェットを排出します。ジェットの速度が音速を超えると、同じ原理でショックダイアモンドが出来ることが、高解像度の磁気流体シミュレーションで明らかになりました。上の図はプラズマ流の上下成分を表していて、三角形のパターンがショックダイアモンドに対応します。この場合は不足膨張型(左)と過膨張型(右)の2タイプのダイアモンド列が出来ています。
 最近、天体プラズマ分野では激しい流れを扱う機会が増えています。これからの研究には、高速流体力学の知識がますます重要になってくると思います。
(2015/03/27)
Seiji Zenitani, Phys. Plasmas, 22, 032114
[Journal] [arXiv]
銭谷誠司 (personal website)



スーパーコンピュータ「京」で解き明かした宇宙線加速:
天体衝撃波における高エネルギー電子生成機構の新理論を発表

f5c


千葉大学大学院理学研究科 松本洋介 特任助教、東京大学大学院理学系研究科 天野孝伸 助教、星野真弘 教授、国立天文台天文シミュレーションプロジェクト 加藤恒彦 専門研究職員らの研究グループは、スーパーコンピュータ「京」を用いたシミュレーションによって、超新星残骸衝撃波を始めとする様々な天体衝撃波で高エネルギーの電子を効率よく生成することができるメカニズムを明らかにしました。宇宙物理学の謎のひとつである「相対論的エネルギーを持つ電子の存在」の解明に大きく迫ることができると期待されることから、本成果は、アメリカ科学振興協会(AAAS)発行の Science 誌に2月27日に掲載されました。詳しくはCfCAプレスリリース「スーパーコンピュータ「京」で解き明かした宇宙線加速:天体衝撃波における高エネルギー電子生成機構の新理論を発表」をご覧ください。
(2015/02/27)
“Stochastic electron acceleration during spontaneous turbulent reconnection in a strong shock wave”, by Yosuke Matsumoto, et al., 2015, Science, Vol. 347 no. 6225 pp. 974-978
[Full Text]
加藤 恒彦 [personal website]



宇宙初期における大量のダストと特異な減光曲線の起源

f1b


高赤方偏移クェーサーの減光曲線は、近傍の銀河のものと異なることが知られ ています。また、このようなクェーサーの母銀河中には大量の星間ダスト(星間塵)が存 在することも確認されています。これらの観測は、宇宙初期において星間ダストが急速に増加し、またそのダス トの性質が現在の宇宙のものとは異なっていることを示唆します。
本研究では、星間ダストのサイズ分布を考慮した世界最先端のダスト進化モデルに基づき、高赤方偏移クェーサーのダスト量と減光曲線の進化について調べました。その結果、クェーサーの母銀河中に密度の高い分子雲が豊富に存在していれば、ダスト上への重元素ガスの降着とダストの合体成長が効率的に起こり、宇宙初期で観測された大量のダストの存在と特異な減光曲線を同時に説明できることを明らかにました。また、このような宇宙初期における炭素質ダストは、グラファイトではなく主に非晶質炭素であることも突き止めました。
図は、モデル計算によって導かれた1Gyrでの減光曲線(ここでは0.3 μmの 減光量で規格化された減光量波長依存性)。 点線、太い実線、破線は、クェーサー母銀河中の分子雲の質量割合がそれぞれ 0.5、0.7、0.9として計算した結果、影付きの領域は赤方偏移6.2のクェーサー J1048+4637で観測された減光曲線のレンジを示す(Maiolino et al. 2004)。 比較のため、小マゼラン雲の減光曲線も示される(細い実線)。
(2014/12/9)
Evolution of grain size distribution in high-redshift dusty quasars: integrating large amounts of dust and unusual extinction curves by Takaya Nozawa, Ryosuke S. Asano, Hiroyuki Hirashita, Tsutomu T. Takeuchi, 2015, MNRAS Letters, 447, L16-L20
[ADS] [arXiv]
野沢貴也([personal website])



世界最大規模の天の川銀河シミュレーション

f5c


オランダ・ライデン大学のユルン・べドルフ氏、シモン・ポルテギースズワート氏、国立天文台理論研究部の藤井通子 特任助教(国立天文台フェロー)らの研究チームはアプリケーション「Bonsai」を開発し、18600台のGPUを用いた計算により、これまでで最大規模の天の川銀河進化の数値シミュレーションを成功させました。計算に用いた粒子数は約2400億であり、この計算により初めて、天の川銀河の星の観測データと直接比較可能なシミュレーションデータを得ることができるようになりました。さらにこのシミュレーションでは使用したGPUの数に対して単精度で世界最速の実効性能 24.77Pflops(1秒間に2.477京回の計算)を達成しました。このシミュレーションの性能と科学的意義が評価され、2014年のゴードン・ベル賞のファイナリストとして選出されました。詳しくはウェブリリース「世界最大規模の天の川銀河シミュレーション」をご覧ください。
(2014/11/12)
“24.77 Pflops on a Gravitational Tree-Code to Simulate the Milky Way Galaxy with 18600 GPUs”, by Jeroen Bédorf, et al., 2014 ACM/IEEE conference on Supercomputing (SC14), New Orleans, Louisiana, USA, Nov. 2014
[ACM Digital Library]
藤井 通子 [personal website]



超新星SN 2011dhの出現場所に明るい青い星を発見

f5c


東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構、ラプラタ大学、京都大学、国立天文台などの国際研究グループは、およそ3年前に近傍銀河M51で起こった超新星SN 2011dhの場所をハッブル宇宙望遠鏡を用いて観測し、そこに明るい青い(質量の大きい)星が存在していることを発見しました。この大質量星は、超新星SN 2011dhの爆発前の(黄色超巨)星と対をなす(主系列)星としてその存在が理論的に予測されていましたが、それが今回の観測によって実証されたことになります。この発見により、超新星SN 2011dhは大質量連星系で起こった爆発であることが明らかになり、連星系の進化と超新星爆発の関連性ついて大きく理解が進むと期待されます。
詳しくは、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の [ウェブリリース]をご覧ください。 (画像は、NASA/カブリ数物連携宇宙研究機構より)
(2014/9/19)
A Blue Point Source at the Location of Supernova 2011dh, by Gaston Folatelli, et al., 2014, ApJ Letters, 793, L22 (5pp) [ADS] [arXiv]
野沢 貴也 [personal website]



"すかすか"ダストはどう観測する?


惑星の種であるダストは、その合体成長過程においてすき間の多い構造を持つことがわかってきました。このようなダストは観測できるのでしょうか?
我々は、すき間の多い"ダストアグリゲイト"の観測的な特徴を調べました。その結果、従来1ミリメートルのコンパクトなものだと思われていた原始惑星系円盤の電波放射は、惑星形成理論で予測される半径10m・充填率0.0001のダストアグリゲイトでも解釈可能であることがわかりました。更に我々は、今後ALMAで期待される観測によって、ダストはすかすかなのかコンパクトなのかを区別できることを示しました。
(2014/09/10)

Kataoka et al. 2014, A&A 568, A42, "Opacity of fluffy dust aggregates"
[ADS]
片岡 章雅 (personal website)



宇宙リチウム問題の解決と暗黒物質及び原初磁場の発見へ前進 --- 複合ビッグバン元素合成モデル ---


宇宙の極初期にビッグバン元素合成によって生成された元素の組成は、その後の物理・天体現象の性質を決定付ける非常に重要な物理量である。しかし、観測の向上や理論の進展にも関わらず、恒星の観測から推定できる 7Li 量と、標準的なビッグバン元素合成から予想される 7Li 量との乖離が解決できず、7Li 問題と呼ばれている。 現在、ビッグバン元素合成直後の光子冷却や、ダークマター候補であるX粒子による光分解反応、原初磁場等を考慮した新しいモデルによって、この7Li 問題の解決に向けた研究が盛んに行われている。
数マイクロガウスの磁場が銀河団スケールに存在していることが観測によって確認されている。この銀河団磁場の起源として最有力候補の一つが原初磁場である。最近の研究の結果、このような原初磁場は、初期密度場、宇宙背景放射、背景重力波、初期天体形成、およびビッ グバン元素合成に無視できない影響を与えることが分かってきた。
このような背景のもと、山崎大博士、梶野敏貴准教授(国立天文台)らのグループは、最新の観測によって制限された宇宙の軽元素組成の結果と、この新しいビッグバン元素合成モデルから算出した理論値と比較して、7Li 問題が解決できる原初磁場およびX粒子のパラメータを探し出した。
(2014/07/08)

Cosmological solutions to the Lithium problem: Big-bang nucleosynthesis with photon cooling, X-particle decay and a primordial magnetic field
Phys. Rev. D 90, 023001 [ADS] [arXiv]
詳しくはこちらをご覧ください.
山崎 大 (personal website)



宇宙最初の塵は巨大質量星が作る?
‐太陽よりも500倍も重い星での炭素質ダスト形成‐


今世紀に入ってから、宇宙初期(現在の宇宙年齢のおよそ10分1程度)にも大量の宇宙ダスト(宇宙塵)が存在することが確認されました。この発見以降、初期宇宙でのダストの起源は解明されるべき重要な研究課題となっており、これまで数多くの議論が展開されています。
本研究では、宇宙最初の星として有力視されている太陽の500倍もの初期質量をもつ星について、その表面から放出されるガス中でのダスト形成の可能性を調べました。その結果、このような巨大質量星は、その寿命の間におよそ太陽質量程度(地球の質量の30万倍!)もの炭素質ダストを生成し得ることを明らかにしました。これより、もし宇宙最初に形成される星が巨大質量星ばかりであったとすれば、これらの星は宇宙最初のダスト生成工場として、地球などの固体惑星の種となる固体微粒子を大量に供給していたことを示唆します。
図は、質量放出率(1年の間に星の表面から放出される太陽質量単位でのガスの質量)を横軸にとった場合の、形成され得る炭素質ダストの総質量(太陽質量単位)の計算結果。図より、1年あたり太陽の300分の1程度の質量のガスを放出する場合、そのガス中で0.02μmの平均サイズをもつ炭素質ダストが太陽質量の1.7倍もの量で形成され得ることを示しています。
(2014/5/30)

Dust Production Factories in the Early Universe: Formation of Carbon Grains in Red-Supergiant Winds of Very Massive Population III Stars, by Takaya Nozawa, et al., 2014, ApJ Letters, 787, L17 (5pp)
[ADS] [arXiv]
野沢貴也



超高エネルギー宇宙ニュートリノの新しい生成メカニズムを提唱


梶野敏貴、徳久章(国立天文台/東大)ら国際共同研究グループ は、一垓(10の20乗)電子ボルトにも及ぶ超高エネルギー宇宙線の正体がタウ(τ)型ニュートリノではないかとする新理論を提唱した。昨年、南極の巨大ニュートリノ観測装置 IceCube で千兆(10の15乗)電子ボルトを超えるニュートリノが観測されたが、超高エネルギー宇宙線の起源は未だに謎である。新理論では、マグネターや活動銀河核のような百兆ガウスを越える超強磁場を帯びた天体に陽子が突入し、強い相互作用によるシンクロトロン放射を次々と起こしてウプシロンなどの重い中間子を生成し、これらが瞬時に短寿命のτレプトン対に崩壊するため、タウ(τ)型ニュートリノが千兆(10の15乗)電子ボルトを超える高いエネルギーを保ったまま銀河間空間に放出されて太陽系に到達できることを、理論的に発見し証明した。
(2014/05/09)
T. Kajino, A. Tokuhisa, G. J. Mathews, T. Yoshida & M. A. Famiano., ApJ. 782 (2014), 70.
[ADS]
梶野敏貴 (personal website)



スーパーコンピュータ「京」を用いた計算で超新星爆発のニュートリノ加熱説が有望に


国立天文台 天文シミュレーションプロジェクトの滝脇知也 特任助教らの研究チームは、スーパーコンピュータ「京」を用いて超新星爆発の大規模数値シミュレーションを行い、超新星爆発がニュートリノ加熱によって起こる可能性を示しました。詳しくはこちらをご覧ください。
(2014/04/18)
A Comparison of Two- and Three-dimensional Neutrino-hydrodynamics simulations of Core-collapse Supernovae
Tomoya Takiwaki, Kei Kotake and Yudai Suwa
[ADS] [arXiv]
滝脇知也 (personal website)




2013年度



宇宙背景放射と背景原初磁場 ---原初磁場効果の修正---


当研究で国立天文台理論研究部の山崎大氏 (現 特別客員研究員)は、 いままで見落とされていた背景原初磁場が宇宙背景放射に及ぼす影響を初めて解析した。 その結果、背景原初磁場を正しく考慮した場合、宇宙背景放射温度揺らぎの最初のピークの 位置を大きいスケールの方へずらし、振幅を小さくすることがわかった。 さらに、標準宇宙論パラメータと背景原初磁場のエネルギー密度との相関関係が無視できないことを示し、 宇宙背景放射から、原初磁場の生成過程の情報を取り出すことや、 原初磁場の非線形領域の時間進化モデルの検証ができることを示した。

*本研究は、2014年03月31日にPhysical Review Dにアクセプトされました。
CMB with the background primordial magnetic field
Dai G. Yamazaki, Accepted 31 March 2014
詳しくはこちらをご覧ください. 山崎 大 (private website)



運動論リコネクションにおける「磁気拡散」再考


 磁気リコネクションの物理では、磁力線の繋ぎ変わるX点付近を「磁気拡散領域」と呼んで重要視している。運動論プラズマでは、この磁気拡散領域と思われる領域の議論がとても難しいことが知られている。
 本研究では、この問題を基礎概念に立ち返って再検討した。移流する面要素を貫く磁束量が一定であるとき、磁束が流れに凍結していると言う(Newcomb 1958)。MHDでは電気抵抗由来の拡散項が磁束凍結条件を破るが、運動論ではこの関係は自明ではなくなる。そこで我々は、これまであまり議論されなかった磁束凍結の圧縮成分(図参照)に注目したうえで、「磁気拡散」が凍結状態への緩和過程で、なおかつ基準場の選び方に依る相対的な概念であると解釈した。そして、ブラソフ法による運動論プラズマシミュレーションで、リコネクション点付近に局在化して磁気拡散が起きることを確認した。
 この研究成果は、磁気拡散の概念を運動論プラズマに拡張するとともに、磁気拡散と磁力線の繋ぎ変えの関係という重要問題にヒントを与えるものである。
(2014/03/31)
Seiji Zenitani and Takayuki Umeda, Phys. Plasmas, 21, 034503
[Journal] [arXiv]
銭谷誠司 (personal website)



磁場で支えられた分子フィラメントの構造

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Herschel衛星によるダスト熱輻射の観測から、分子雲がフィラメント状の要素からなることが 知られるようになった。一方で、近赤外線領域の星間偏光の観測は、このフィラメントが星間磁場に垂直であることを示している。 これまで知られていなかったフィラメントを横切る磁場によって支えられた等温星間雲の力学的釣り合い状態を自己無撞着場の方法で計算した。
図は奥ゆき方向に伸びるフィラメントの断面の構造の一例で、破線が磁力線、閉じた実線が密度の等高線を示す。 このような解118通りから、重力に抗して支えられる星間雲の最大質量(臨界質量)の実験式を得ることが出来た。その結果、この臨界質量はほぼフィラメントを貫く磁束に比例することがわかった。
この研究の意義は、横方向の磁場に貫かれたフィラメントという分子雲の構成要素の構造と最大質量が理論的に初めて決められたということにある。
(2014/3/21)
Magnetohydrostatic Equilibrium Structure and Mass of Filamentary Isothermal Cloud Threaded by Lateral Magnetic Field, by Tomisaka, Kohji, 2014, ApJ, 785, 24 (12pp)
[ADS] [arXiv]
富阪幸治 (personal website)



大質量星が星団の力学的進化に与える影響



星団のコアコラプス(中心密度の上昇)にかかる時間は星団の力学的進化における重要なタイムスケールである。全ての星が等質量であると仮定した理想的なモデルは理論的によく理解されているのに対し、星団の星が質量関数を持つ現実の星団に近いモデルについては、コアコラプスにかかる時間が等質量モデルと比べ短くなることが知られているものの、理論的な理解は確立されていなかった。本研究では、N体シミュレーションと解析的な計算によって、コアコラプス時間が最も重い星の力学的進化のタイムスケールで起こる(コアコラプス時間は最も重い星の質量に反比例して短くなる)ことを示した。質量関数を持つ系は、実行的には最も重い星で構成されている小粒子系と近い力学的進化をし、特に星団のコア質量と最も重い星の質量が同程度の場合、星団は中心密度の上昇をほとんど示さずに、星団の中心でできた大質量星の連星によって密度が下がっていく。大質量星を含む散開星団は、このような力学的進化を起こしていると考えられる。

動画の説明:質量関数を持つ星団の進化
赤:平均質量より100倍以上重い星、オレンジ:10-100倍重い星、黄:2-10倍重い星、緑:1-2倍、青:平均より軽い星重い星(赤やオレンジ)は力学的摩擦によって星団の中心に沈む一方、軽い星(青、緑)は外側に広がる。T=10頃に星団の中心でできる連星(赤とオレンジの星)によって、星が高速で星団の外に弾き出される。
(2014/3/17)
Michiko Fujii and Simon Portegies Zwart, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, 2013, 439, 1003 [ADS]
藤井 通子 [personal webpage]



未知のニュートリノ振動の性質を決定する超新星元素合成理論を提唱
— 2013年英国物理学会誌ハイライト論文 —


電子型、ミュー型、タウ型と呼ばれる3世代の素粒子・ニュートリノはわずかな質量を持つことが知られており、宇宙空間や星の内部を移動する間に互いに周期的に入れ替わる振動現象を引き起こす。ニュートリノが質量を持つことは標準理論を越える理論を必要とする唯一の実験事実であるにも関わらず、ニュートリノの質量階層(順質量階層か逆質量階層か)とCP対称性の破れの位相は未決定であり、世界中の研究者がその決定を目指して凌ぎを削って来た。鈴木俊夫(日大/国立天文台)と梶野敏貴(国立天文台)は、超新星爆発で放出される高エネルギーニュートリノ・原子核反応によって作られた特殊な元素に刻まれた物質振動効果(MSW効果)を利用して、未知の質量階層を決定する方法を提唱し、この決定方法が量子反応過程を記述するハミルトニアンにほとんど依存しない優れた方法であることを理論的に証明し、英国物理学会誌に発表した。この論文は2013年英国物理学会誌のハイライトに選ばれた。
図は、提唱した超新星元素合成理論を用いて予言した元素量とプレソーラーグレインに検出された観測値との比較から、逆質量階層が統計的に優位であることを示している。
(2014.02.12)
T. Suzuki and T. Kajino, J. Phys. G40 (2013), 083101.
IOP science
http://th.nao.ac.jp/MEMBER/kajino/



宇宙核時計ニオブ 92 の起源が超新星爆発ニュートリノであることを理論的に解明 〜超新星爆発から太陽系誕生まで100万〜3000万年と評価〜

2013.11.22


日本原子力研究開発機構・量子ビーム応用研究部門の早川岳人研究主幹、国立天文台・理論研究部の梶野敏貴准教授、東京工業大学の千葉敏教授らの共同研究グループは、太陽系初期にのみ存在した放射性同位体ニオブ92(半減期は約3千5百万年)が、超新星爆発のニュートリノで生成されたことを理論的に解明しました。

詳しくはこちらをご覧ください.



宇宙背景放射による原初磁場検出の可能性


磁場は、天文・天体物理学の主要な分野で重要な役割を担っている。一方、宇宙論に おいても無視できない影響が示唆されており、初期宇宙に存在すると予想される”原 初磁場”の研究は、国内外で活発に行われている。国立天文台理論研究部の山崎大 研究員、名古屋大学の市來 浄與 助教、および熊本大学の高橋 慶太郎 准教授の研究 グループは、宇宙背景放射の偏光揺らぎから、原初磁場が強く制限でき、将来の観測 研究の精度向上によっては、原初磁場の強度と特徴的なスケールが検出できることを 示した。
(2013/11/11)
詳しくはこちらをご覧ください。
山崎 大 (private website)



第4世代のニュートリノに強い制約:
ビッグバン元素合成理論からの導出に成功



素粒子の標準理論によると、物質粒子である電子・ミュー・タウと対をなすニュートリノは3世代に限られるが、宇宙背景放射ゆらぎの観測や高エネルギー素粒子実験から、ステライルニュートリノと呼ばれる第4世代のニュートリノの存在を示唆するデータが得られている。日下部元彦、梶野敏貴、Baha Balantekin、Yamac Pehlivan は、磁気モーメントを持つステライルニュートリノが崩壊する際に放出する非熱的光子がビッグバン元素合成に影響することを発見し、宇宙背景放射の考察と合わせて、ステライルニュートリノの質量と崩壊寿命を強く制限することに成功した。
図の青塗りの部分がビッグバン元素合成理論から制約される許容領域を示す。これまでの原子炉実験 や赤色巨星の冷却率の研究からは、磁気モーメントの上限値しか制限されていなかった。
(2013/11/01)
Kusakabe, M.,et al. 2013, Phys. Rev. D87, 085045.
http://th.nao.ac.jp/MEMBER/kajino/



惑星の種はすき間だらけ



片岡章雅氏(総合研究大学院大学/国立天文台理論研究部)を中心とする研究グループは,ミクロンサイズ注1のダストから,10キロメートルの微惑星注2までのひと続きの進化理論を構築することに成功しました.詳しくはこちらをご覧ください.
(2013/10/04 プレスリリース)



磁気リコネクションに見るプラズマ粒子の非線形力学



宇宙の無衝突プラズマ環境でおきる磁気リコネクションの基礎的な性質を、プラズマ粒子シミュレーションを使って研究している。本研究では、シミュレーションで得られたリコネクションジェット領域のイオン分布関数を解析し、(1) 曲率磁場中の粒子軌道モデルを分布関数の解釈に応用できること、(2) 非ジャイロ的粒子運動によって理想 MHD 条件(E+VxB≠0)が破れていること、そして (3) 非線形力学における規則的軌道(regular orbit)を通る粒子群が存在することを突き止めた。これらの結果は、非線形力学(カオス力学)的な見方が現代プラズマ物理で有効であることを示している。このムービーは粒子軌道を特徴付けるポアンカレ図であるが、模様を眺めるだけでも楽しめるだろう。
(2013/09/03)
Seiji Zenitani, Iku Shinohara, Tsugunobu Nagai, and Tomohide Wada, Phys. Plasmas, in press
[ADS] [arXiv]
銭谷誠司 (private website)



連星中性子星合体からの電磁波放射の様子が明らかに



KAGRAなどの次世代重力波検出器により、連星中性子星の合体からの重力波が検出されることが期待されている。しかし、重力波だけでは到来方向を正確に知ることができないため、重力波源の研究をするためには、電磁波で重力波の対応天体を探すことが鍵となる。本研究は、連星中性子星合体における詳細なrプロセス元素組成を考慮した初めての輻射輸送シミュレーションに成功した。その結果、連星中性子星合体からの可視光、赤外線放射はこれまで予想されていたよりも10倍暗いものの、4-8m級の口径をもつ可視光望遠鏡で検出が可能であることが分かった。この結果は、重力波検出に続いて行うべき電磁波観測の指針となるもので、重力波と電磁波を使った新しい天文学への足がかりになると期待される。(動画は連星中性子星合体で放出される物質中の光の強度の時間進化)
(2013/8/27)
Masaomi Tanaka and Kenta Hotokezaka, Astrophysical Journal, 775, 113 [ADS]
田中 雅臣 [personal webpage]



相対論的ジェットの境界で成長する非軸対称モードの
Rayleigh-Taylor不安定性とRichtmyer-Meshkov不安定性



活動銀河核からのジェットやガンマ線バーストなどの相対論的ジェットでは、ジェットとその外側の媒質との速度シアーによりジェットの境界でKelvin-Helmholtz不安定性が成長することが古くから指摘されている(Ferrari et al.1978)。本研究では、相対論的ジェットの伝播方向に対し垂直な動径方向の構造を考慮すると、ジェットの動径方向の振動にともなってジェットの境界で非軸対称モードのRayleigh-Taylor不安定性とRichtmyer-Meshkov不安定性が成長することを相対論的流体数値シミュレーションを用いて示した。上記の動画は、相対論的ジェットの断面の実効的な慣性の時間発展。紙面に垂直な方向に相対論的な流れが存在。
(2013/7/2)
Jin Matsumoto and Youhei Masada 2013 ApJ 772 L1 [link] [arXiv]
松本仁



ブラックホールを残す超新星でのrプロセスと初期銀河の進化


すばる望遠鏡HDS観測によって、金属量が-3.5<[Fe/H]<-2の金属欠乏星では、Ba(Z=56)に代表される重いrプロセス元素群(Z>52)が満たすユニバーサリティーを、Sr(Z=38)のような軽いrプロセス元素は大きく破って過剰に生成されていることが発見された(Aoki et al. 2005, ApJ, 632, 611)。初期銀河ではブラックホールを残す超新星の頻度が高く、これを説明できるとする理論モデル(Boyd et al., 2011, ApJ 744, L14) が提案されたが、[Sr/Ba]比の観測値は+2を上限として3桁にも及ぶ大きな分散を示すことが謎として残されていた。国立天文台の観測・理論共同研究チームは、ブラックホールからの距離に応じて中性子過剰性が異なるためrプロセス元素の生成核種が異なり、爆発過程で起きる放出物の混合の仕方の違いが[Sr/Ba]比の大きな分散を引き起こす原因であることを理論的に示しAstrophysical Journal Letterに発表した。
(2013/06/17)
Aoki, W., Suda, T., Boyd, R.N., Kajino, T., Famiano 2013, M.A., ApJ 766, L13. [link]
http://th.nao.ac.jp/MEMBER/kajino/



惑星形成におけるダストの静的圧縮過程

A&A誌6月号のhighlighted papersに選出されました



原始惑星系円盤では、ダストは周囲のダストとの合体成長を通して内部に空隙を持った構造を持つ。これらのダストの構造進化を解明することは、原始惑星系円盤の観測や惑星形成理論において重要である。従来の研究では衝突による圧縮を考慮するとダスト内部密度は0.00001 g/ccまで下がる一方、内部密度がそれ以上にあがらず、微惑星の内部密度が0.1-1 g/ccであるという予測に反すると指摘されていた。すなわち、微惑星形成を説明するには別のダスト圧縮メカニズムが必要である。そこで本研究では数値計算を用いて空隙率の高いダストの静的圧縮過程を調べ、圧縮強度を求めた。
(2013/3/15)
Kataoka, et al. 2013, A&A 554, A4 [link]
片岡章雅 (private website)



ビッグバン元素合成リチウム問題の解決案:
アクシオンと長寿命暗黒素粒子の混合模型を提唱

宇宙の初期世代星に検出されたリチウム7の始源組成は、標準ビッグバン元素合成モデルの予言値より有意に大きく、リチウム6の始源組成もまた理論予測の千倍以上である可能性が示唆されており、これらは標準ビッグバン宇宙論の土台を揺るがしかねない大問題である。日下部元彦・梶野敏貴らは、謎の暗黒物質が素粒子アクシオンと非熱的な高エネルギー光子に崩壊する超対称粒子のような長寿命の暗黒素粒子からなるとする混合模型を提唱し、ビッグバン・リチウム問題を解決できる可能性があることを明らかにした。

上図は、ビッグバン元素合成が非熱的光子に強く影響されることを、下図はアクシオンが元素合成終了時から光子の最終散乱時までの間にBose-Einstein凝縮を起こして、宇宙背景放射を冷却する可能性があることを示している。
(2013/05/11)
Kusakabe, M. et al. 2013, Phys. Lett. B718, 704-708. Science Direct
http://th.nao.ac.jp/MEMBER/kajino/



2012年度

2012年 理論研究部+CfCAの研究紹介 (pdf, 14MB)


すばる望遠鏡、
遠方銀河核からのアウトフローの立体視に挑戦



信州大学、奈良高専、国立天文台、東京大学カブリ IPMU の研究者を中心とする研究グループは、およそ 100 億光年彼方にあるクェーサー (銀河中心核) の姿を2つの別の角度から観測することに成功しました。
詳しくはすばる望遠鏡のウェブリリースをご覧ください。

(2013/02/20)
T. Misawa, N. Inada, K. Ohsuga, et al. 2013, AJ, 145, 48 [ADS] [arXiv]
三澤透 (信州大学)
大須賀健 (private website)



ロング・ガンマ線バーストからの早期X線放射


ロング・ガンマ線バーストは大質量星の重力崩壊に伴って起こる、高エネルギー光子の放出現象である。 近年、ロング・ガンマ線バーストの初期放射のX線観測から熱的成分の検出が報告されている。 本研究は、大質量星中心部に注入されたジェットのダイナミクスを2次元相対論的流体力学コードによって計算するとともに、 ジェットの噴出に伴って形成される、コクーン成分からの光球放射を計算したものである。 この光球放射によって前述のX線放射の熱的成分は説明可能であることが分かり、 放射の明るさや継続時間が大質量星の星周物質の密度に強く依存することを示した。
(2013/01/17)
A. Suzuki and T. Shigeyama 2013, ApJL in press (arXiv:1301.2421)
[ADS] [arXiv]
鈴木昭宏 (private website)



無衝突磁気リコネクションにおける新たな磁気拡散機構の発見

国立天文台とアルバータ大学の研究グループは、大規模な3次元プラズマ粒子シミュレーションを実施することによって、無衝突磁気リコネクションにおける新たな異常磁気拡散機構を発見した。とくに、プラズモイドの発生にともなって乱流が強化され、異常拡散が増大するこを明らかにした。今後、本研究の結果がマクロなシミュレーションに“埋め込まれる”ことによって、宇宙に偏在する爆発的な磁場開放過程の解明につながることが期待される。
(2012/12/28)
K. Fujimoto and R. Sydora 2012, Phys. Rev. Lett., 109, 265004 [DOI]
藤本桂三 (private website)



BALクェーサーのラインフォース駆動型円盤風モデル

クェーサーで観測された幅広い吸収線(Broad Absorption line; BAL)は、ジェットとは異なる新たなアウトフロー成分の存在を示唆している。降着円盤表面から噴出する円盤風がその起源と考えられているが、噴出メカニズムはわかっていない。本研究は、金属元素がUV光を束縛-束縛遷移吸収することで加速する円盤風(ラインフォース駆動型円盤風)に着目し、輻射流体計算によってその構造を調べたものである。結果、ブラックホール(図の原点)周囲の降着円盤表面(赤道面)から、すりばち状に円盤風(赤線)が噴出することがわかった。また、その速度、電離度、柱密度は観測とよく一致することがわかった。
(2012/12/20)
Nomura, M., et al. 2012, PASJ in press (arXiv:1212.3075)
[ADS] [arXiv]
野村真理子 (private website)



偏光観測で探る星形成過程における磁場構造


星形成過程において磁場は重要な役割を果たすため、星形成過程における磁力線構造の解明は非常に重要である。 本研究は3次元MHDシミュレーションを用いて星形成過程を追い、更に各進化段階を磁場によってダストが整列したと仮定し、偏光観測を想定した観測的可視化を行った。 その結果、特に初期の回転軸が磁場と非平行な場合、従来言われていたような砂時計型ではなくS字型の磁力線構造になることを示した。
(2012/10/30)
Kataoka, A., et al. 2012, ApJ, 761, 40
[ADS] [arXiv]
片岡章雅 (private website)



原初磁場と宇宙論


国立天文台理論研究部の山崎大 研究員、同 梶野敏貴准教授、米ノートルダム大学の Grant J. Mathews教授および名古屋大学の市來浄與助教の研究グループは、 原初磁場が宇宙背景放射や初期密度場揺らぎに与える影響を定量的•定性的に研究し、 宇宙論的観測から原初磁場を多角的に制限した。この研究により、 宇宙論における原初磁場の役割が重要であることが分かった。 さらに同研究グループの手法と今後の宇宙論的な観測を組み合わせれば、 精度よく原初磁場が検出できる可能性を示した。 (詳細はこちら)
(2012/08/15)
Physics Reports Volume 517, Issue 5, August 2012, Pages 141-167
[Physics Reports] [arXiv]



超新星爆発の形、実はでこぼこ?

詳しくはすばる望遠鏡のウェブリリースをご覧ください。
(2012/08/03)
Tanaka, M., et al. 2012, ApJ, 754, 63
[ADS] [arXiv]
田中雅臣 (private website)



磁気リコネクションの内部構造のプラズマ衛星観測

磁気リコネクションは、天体・宇宙プラズマ環境で起きる重要な物理素過程である。国立天文台・宇宙研・東工大の研究グループは、ジオテイル衛星が地球磁気圏夜側で観測したリコネクションイベントを解析し、中心のエネルギー散逸領域と双方向に吹き出す高速プラズマジェットを検出した。最も重要な散逸領域を惑星磁気圏夜側で観測したのは初めてであり、次世代衛星観測への波及が期待される。
(2012/06/27)
Zenitani, S., et al. 2012, Geophys. Res. Lett., 39, L11102 (2012)
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銭谷誠司 (private website)



ニュートリノ加熱による 3次元超新星爆発シミュレーション

星の重力崩壊から生じる超新星爆発の詳細な機構は明らかになっていない。 国立天文台理論研究部の研究者らは世界に先駆けて 波長依存性を考慮したニュートリノ輻射輸送法を用いて 超新星の3次元シミュレーションを行った。 計算の結果は、3次元的な対流がニュートリノの加熱を促進し、 超新星を爆発に導くことを示唆した。
(2012/05/29)
Takiwaki, T., et al. 2012, ApJ, 749, 98
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滝脇知也 (private website)


2011年度

惑星環におけるプロペラ構造の形成
道越秀吾(現 同志社大学)、小久保英一郎
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ダスト層の永年重力不安定
道越秀吾(現 同志社大学)、小久保英一郎 、犬塚修一郎 (名古屋大学)
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超新星の磁気爆発と重力波
滝脇知也
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無衝突磁気リクネクションの内部構造 再考
銭谷誠司
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