国立天文台 理論研究部

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理論研究部は2019年4月から科学研究部に統合されました. 科学研究部のサイトができるまではこちらに科学研究部の情報を載せます.

Research Highlights

「光子渦」の相対論的量子力学記述、宇宙観測を提案

「光子渦」は、角運動量と位相がマクロに揃ったコヒーレンスを持つ特別な量子状態であり、中性子星やブラックホールから飛来するX線パルスやガンマ線バーストでも容易に生成されてさまざまな宇宙現象に影響を及ぼすと考えられる。既に実験室では超高輝度レーザーのモードの一つとして生成され、広い工学応用が期待されている。しかし、その性質の理論的な解明の多くは、古典電磁気学を駆使した研究に限られていた。我々は、ラゲールガウシアン波と呼ばれる最も基本的な「光子渦」と電子のコンプトン散乱を、初めて相対論的量子力学で計算し、「光子渦」が飛来した証拠となる天文観測量を定量的に示すことに成功した。本理論研究の成果を元に光子渦の識別可能な次世代ポラリメーターを作成し、人工衛星INTEGRAL-SPIやソーラーパワーセーラーIKAROS上に搭載することによって、通常の円偏光と同時に「光子渦」が計測できれれば、発生源の磁場の強さや電子エネルギーについてより詳細な評価が可能になり、宇宙における磁場環境の研究が新しい時代にはいると期待される。
(2019/3/17)
T. Maruyama, T. Hayakawa, and T. Kajino, 2019, Sci. Rep, 9, 51
[Scientific Reports]
梶野敏貴 (personal website)

非一様原始磁場は「ビッグバンリチウム問題」を解決できるか?


ビッグバン元素合成の標準モデルによる軽元素の原始存在量の予言は観測による制限とよく一致しますが、7Liに関してのみ矛盾が生じます。このことは標準宇宙論における「ビッグバンリチウム問題」と呼ばれています。私たちは、原始磁場の存在に起因する効果を調べました。 原始磁場の強度は、宇宙マイクロ波背景放射の非等方性の観測から、空間的に非一様であることが示唆されています。もし、原始磁場の局所エネルギー密度のゆらぎによって元素合成時に空間領域ごとの温度の違いが生まれるとしたら、複数の空間領域にわたって平均した粒子速度の有効分布関数にマクスウェル・ボルツマン分布からのずれが生じます。私たちの元素合成計算によって、原始磁場のゆらぎの効果を考慮することで原始7Li存在量が減少し、「ビッグバンリチウム問題」の解決に寄与することが明らかになりました。
(2019/3/1)

"Big Bang Nucleosynthesis with an Inhomogeneous Primordial Magnetic Field Strength"
Luo, et al. 2019, ApJ, 872,172
[arXiv]
[ADS]

Yudong Luo

最新の原子核物理学で探るIa型超新星爆発の点火条件


Ia型超新星と呼ばれる爆発的現象は、宇宙論的標準光源として用いられる重要な天体ですが、その親星や爆発機構の詳細はいまだによく分かっていません。Ia型超新星は炭素・酸素型白色矮星の熱核爆発だと考えられており、その点火は炭素の核融合反応が引き起こすものとされています。近年まで、炭素核融合反応の「起こりやすさ」(反応断面積)はこれまで知られておらず、超新星爆発の点火条件にも大きな不定性がありました。ところが、2018年にイタリアの実験グループがNature誌に新しい共鳴状態が存在するとの実験結果を発表し、炭素核融合反応の反応率が従来使われてきたものより数十倍大きい可能性が明らかになりました。そこで本研究では、彼らの実験結果を受けて、量子力学的に共鳴状態が許されるかどうかの妥当性を含めて理論的な考察を加え、従来のものより大きな炭素核融合の反応断面積がIa型超新星の点火に与える影響を調べました。その結果、白色矮星連星合体が超新星爆発を起こす前に中性子星として崩壊する確率が大きくなることが明らかになりました。

(2019/2/22)

図: 白色矮星連星合体の進化のゆくえ。M_1は主星の質量、M_2は伴星の質量を表す。青い領域の中にある系は、炭素核融合の反応率を変えることで進化のゆくえが変わる。

"Impacts of the New Carbon Fusion Cross Sections on Type Ia Supernovae"
Kanji Mori, Michael A. Famiano, Toshitaka Kajino, Motohiko Kusakabe, Xiaodong Tang, 2019, MNRAS, 482, L70
[arXiv]
[ADS]

森 寛治

中性子星の連星をつくる、外層が大きく剥がれた星の超新星爆発を発見


2017年、連星を成す二つの中性子星の合体現象が、重力波と電磁波を用いた観測によって世界で初めて捉えられました。実は、中性子星どうしの連星が作られる条件はたいへん難しいと考えられており、その形成過程はこれまで明らかになっていませんでした。この問題を解決するために、国立天文台理論研究部の守屋尭 特任助教らの研究チームは、次のような理論が唱えてきました。中性子星と連星を成している星の外層が大きく剥がれ、その状態で超新星爆発を起こすと、結果、中性子星どうしの連星が作られるという説です。そしてついに、この理論で予測された外層が大きく剥がれた超新星とよく一致する特徴を示す超新星が、過去の観測データからこのたび発見されたのです。これは、中性子星どうしの連星を形成すると考えられる超新星爆発を、世界で初めて捉えた観測と言えます。

詳しくは、理論研究部プレスリリース「中性子星の連星をつくる、外層が大きく剥がれた星の超新星爆発を発見」をご覧ください。
(2018/10/12)

図:超新星 iPTF14gqr の出現前と出現後の画像。破線の丸で囲まれた部分が超新星。超新星出現前のスローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)による画像(赤、緑の2色合成画像、左)と、2014年 10月 19日の超新星出現時のパロマー 60 インチ望遠鏡による観測画像(赤、緑、青の3色合成画像、右)。(クレジット:SDSS/Caltech)

"A hot and fast ultra-stripped supernova that likely formed a compact neutron star binary"
K. De, M. M. Kasliwal, E. O. Ofek, T. J. Moriya et al., Science, Vol. 362, Issue 6411, pp. 201-206
[Science]

守屋尭 (personal website)



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