理論研究部の滝脇知也助教*が第7回自然科学研究機構若手研究者賞を受賞しました.この賞は若手研究者の育成を目的としたもので,新しい自然科学分野の創成に熱心に取り組み,萌芽的研究連携を促進して成果をあげた優秀な若手研究者に送られます.滝脇氏の研究テーマは「3次元シミュレーションによる重力崩壊型超新星の爆発メカニズムの解明」です. 2018年6月3日に行われる Rising Sun Ⅶ 自然科学研究機構 第7回 若手研究者賞記念講演にて表彰され,その後受賞者による講演が行われます.
(2018年5月7日 掲載,2018年6月22日 受賞記念講演報告 を追記)
* 総合研究大学院大学 物理科学研究科 天文科学専攻 助教
滝脇氏の研究は,太陽の8倍以上の質量の星が一生の最期に起こす重力崩壊型超新星の爆発メカニズムの解明です.過去50年近い研究の歴史を持つ超新星爆発の研究ですが,そのメカニズムには未だ多くの謎が残されています.シミュレーション技術が発展してもなお,数値計算によって爆発を再現することは,長年困難とされてきました.
滝脇氏は星が重力崩壊したときにできる原始中性子星から放射されるニュートリノに着目し,独自のニュートリノ輻射流体計算コードを開発しました.このコードを用いて,理化学研究所の「京」や国立天文台の「アテルイ」などのスーパーコンピュータ上で重力崩壊型超新星の3次元シミュレーションを世界で初めて行いました.その結果,ニュートリノ加熱によっての衝撃波が外側へ押し進められ,爆発が始まる過程を明らかにしました(2014年4月CfCAウェブリリース).
さらに,滝脇氏の計算によって,爆発時に放射されるニュートリノや重力波についても予測が可能となり,超新星のマルチメッセンジャー天文学に重要な役割を果たしています.また,次世代のスーパーコンピュータを使った3次元長時間計算の実現に向けて,滝脇氏を中心とした研究チームによるコード開発が進められています.
このように,超新星爆発メカニズム解明への貢献や,今後のさらなる活躍が期待され,第7回自然科学研究機構若手研究者賞が授与されることとなりました.今回の受賞について,滝脇氏は次のように受賞の喜びを語ります.「私の研究を多くの方に知っていただいたこと,そして天文学者以外の方からも,研究を高くご評価いただけたことを大変嬉しく思っています.この賞に慢心せず,超新星シミュレーションやマルチメッセンジャー天文学のコミュニティをより大きく発展させるため,これからも頑張っていきたいです.受賞講演では高校生にも来ていただけるようですが,彼らが将来そういったコミュニティに入ってくれると嬉しいですね.」
滝脇氏の研究は,文部科学省HPCI戦略プログラム分野5「物質と宇宙の起源と構造」,ポスト「京」重点課題9「宇宙の基本法則と進化の解明」および計算基礎科学連携拠点(JICFuS)のもとで実施されました.
■「宇宙・生命・脳・物質・エネルギー」若手研究者による Rising Sun Ⅶ ※終了しました
―自然科学研究機構若手研究者賞記念講演―
日時:2018年6月3日(日)12:30 - 17:00(開場 11:30)
会場:日本科学未来館
記念講演会:7階 未来館ホール
ミート・ザ・レクチャラーズ:7階 コンファレンスルーム木星
参加費:無料
主催:自然科学研究機構
要申込(申込締切:2018年5月29日).お申込と詳細は以下のURLより.
第7回若手研究者賞記念講演(自然科学研究機構ウェブ)
【6/22 追記】自然科学研究機構若手研究者賞記念講演 が開催されました
2018年6月3日,日本科学未来館で Rising Sun Ⅶ 自然科学研究機構若手研究者賞記念講演 がおこなわれました.はじめに授賞式が執り行われ,小森彰夫機構長より賞状が手渡されました.講演会では「星はなぜ爆発するのか?」という題で,滝脇助教が行う超新星爆発のシミュレーション研究の解説のみならず,自身が宇宙物理学の研究を志すきっかけを少年時代のエピソードも交えながらお話しました.講演会には滝脇助教の母校から招待された中高生も参加し,熱心に耳を傾けていました.
講演会終了後には "ミート・ザ・レクチャラーズ" と題して,講演者と参加者が交流する機会が設けられました.中高生をはじめ,多くの来場者が滝脇助教に質問をなげかけ,交流を楽しんでいました.
講演会の様子は計算基礎科学連携拠点のページでもご覧いただけます.:「【受賞式報告】国立天文台・滝脇知也助教が第7回自然科学研究機構若手研究者賞を受賞」
■滝脇氏の研究成果に関連するリンク