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ビッグバン宇宙論リチウム問題、解決か? ーエレガントな解


宇宙マイクロ波背景放射ゆらぎの理論の成功および宇宙大規模構造の観測によって、1948年にジュージ・ガモフによって提案されたビッグバン宇宙論は、いまや膨張宇宙を記述する揺るぎない理論モデルであると考えられています。しかし、この理論によると、初期宇宙で合成される軽元素のうちリチウムの理論予測だけが宇宙初期世代星の観測値よりも大きすぎるため、理論モデルの破綻あるいは新しい素粒子的宇宙モデルの必要性を示唆する矛盾(ビッグバン宇宙論リチウム問題)として、永い間、研究者を悩ませてきました。中国・日本・欧米にまたがる国際研究チームは、急激に膨張し変化する初期宇宙では、素粒子・原子核の運動が古典的なマックスウェル‐ボルツマン分布には従わず、カオスやフラクタル現象の熱統計過程を記述すると考えられるTsallis統計分布に従うと仮定することによって、この問題が解決されることを示しました。この解決案はより完全なビッグバン宇宙論の構築に寄与するとして、AAS NOVA (リンク)で「エレガントな解」として紹介されました。
(2017/03/04)

図:ビッグバン元素合成と宇宙の進化(AAS NOVA から) (C) NASA。

"Non-extensive Statistics to the Cosmological Lithium Problem"
S. Q. Ho, et al. with T. Kajino 2017, Astrophys. J. 834, 165. [ApJ]
梶野敏貴



rプロセス元素から探る銀河の初期進化史


超金属欠乏星のrプロセス元素 (Eu, Baなど) 組成は銀河の初期進化史を反映している可能性があります。しかし、銀河形成初期の化学力学進化がrプロセス元素組成に与える影響は未だ明らかになっていません。そこで本研究では、異なる密度、質量を持つ銀河の重力・流体シミュレーションを行い、その中でのrプロセス元素の進化を計算しました。その結果、力学時間が1億年程度銀河では、初期の星形成率が10-3 太陽質量/年以下となり、rプロセス元素組成が超金属欠乏星の観測値と矛盾しない結果が得られました (図A, B)。この結果はハロー質量には依存しませんでした。一方、ハローの密度が高く、力学時間が0.1億年程度の銀河では、初期の星形成率が10-2太陽質量/年以上となり、最初にrプロセス元素が現れる金属量がより高くなることがわかりました (図C, D)。さらに、星形成率の低い銀河ほど、元素が銀河内で混合されるまでに時間がかかり、rプロセス元素組成比の分散が大きくなることが示唆されました。今後超金属欠乏星のrプロセス元素組成の観測が進めば、rプロセス元素を指標として銀河進化を理解することが可能になることが期待されます。
(2017/02/20)

図:[Eu/Fe]と[Fe/H]の関係。グレースケールは計算値。左から順に初期の力学時間1億年 (A)、0.7億年 (B)、0.3 億年(C, D)のモデル。ただし、モデルDは他のモデルと密度プロファイルの形が異なる。点(小)、点(大)はそれぞれ銀河系ハロー、矮小銀河の観測値。

“Early chemo-dynamical evolution of dwarf galaxies deduced from enrichment of r-process elements”
Yutaka Hirai, Yuhri Ishimaru, Takayuki R. Saitoh, Michiko S. Fujii, Jun Hidaka and Toshitaka Kajino
2017, Monthly Notices of Royal Astronomical Society, 466, 2474 [ADS] [arXiv]
平居 悠 [personal webpage]



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