国立天文台 理論研究部

Research Highlights

宇宙核時計98Tcは超新星での電子型反ニュートリノ反応で合成される


COSNAPグループの梶野敏貴および日下部元彦(2018年度国立天文台外国人客員教授等)を含む国際共同研究により、短寿命核種98Tcが超新星で電子型反ニュートリノと原子核の反応により有意に合成されることが分かった。大質量星の進化の最後に、超新星が起こり莫大な数のニュートリノと反ニュートリノが星の中心にある中性子星から放出される。共同研究グループは原子核とニュートリノ、反ニュートリノとの反応を含む98Tcの元素合成計算を行い、反ニュートリノの荷電カレント反応が、超新星での98Tc合成量に大きく寄与することを示した。98Tcは、その合成量が反ニュートリノのエネルギースペクトルに大きく依存することが示された最初の原子核である。その短寿命特性により、太陽系形成前に起こった最後の超新星から、隕石形成までの時間を測る核時計となりうる。従って、隕石の将来観測により、反ニュートリノのスペクトルと隕石形成の時間スケールを決定するために有益である。

図:超新星ニュートリノが生成する放射性元素で測る太陽系の時間(イメージ)。ある種の超新星ニュートリノは、特定の放射性元素を選択的に生成することがわかった。この元素の痕跡を、太陽系ができたときの物質分布を保っている隕石のなかに見いだすことで、太陽系をつくる物質がいつ作られたかがわかると期待される。(クレジット:国立天文台)


詳しくは、 国立天文台プレスリリース記事 をご参照ください。

梶野敏貴 (personal website)

元素合成を通して探るIa型超新星の爆発機構の解明


Ia型超新星は、宇宙論的な距離を決定するための標準光源として使われている重要な天体です。しかし、その親星の構造進化や爆発機構については未解明な部分が多く、未だに議論が続いています。爆発機構を解明する方法の一つとして、超新星爆発の理論モデルによって計算された元素合成量と観測から得られたデータとを比較することが考えられますが、そのためには、天文学と核物理学の理論・観測・実験を横断する注意深い共同研究が必要とされます。最近の観測によって、マンガン・鉄・コバルト・ニッケル等を含む重要な幾つかの放射性元素の存在量が明らかになってきました。私たちは超新星理論・天文観測・実験核物理学の研究者よりなる国際共同研究によって、これらの鉄族元素の同位体比の精緻なる理論計算を実行しました。その結果、新たに測定された観測量と爆発モデル計算結果との比較から、現在提案されている超新星の異なる爆発機構を区別できる可能性を明らかにしました。また、超新星爆発で生成される中性子過剰核の一部が爆発時の物質密度に著しく依存するため、こうした元素を観測することができれば、親星の進化や爆発機構に対して強い制限を与え得ることを理論的に予言しています。

図:超新星残骸の観測により得られた鉄族元素の存在比と超新星理論モデルによる結果の比較。


"Nucleosynthesis Constraints on the Explosion Mechanism for Type Ia Supernovae"
K. Mori, M. A. Famiano, T. Kajino, T. Suzuki, P. Garnavich, G. J. Mathews, R. Diehl, S. -C. Leung and K. Nomoto, The Astrophysical Journal, 863, 176
[ADS]
[arXiv]

森 寛治



明らかになった大質量星の最期の姿 — 厚いガスに包まれた星の終焉


大質量星が一生の最期に起こす超新星爆発.その爆発直前の星が大量のガスを放出していることが、このたび明らかになりました.これは標準的な星の進化の理論では考えられていなかったことです.爆発直前に放出される厚いガスに包まれた超新星爆発のシミュレーションと,爆発直後の超新星を多数観測したデータとの詳細な比較とを行った,国立天文台の守屋尭 特任助教らの研究の結果,星の進化の最終段階に新たな知見が加わったのです.本研究は,2018年9月3日付の英国の科学雑誌「Nature Astronomy」オンライン版に掲載されました.

図:本研究により明らかになった大質量星の最期のイメージ.星のごく近傍を星から放出されたと考えられる厚いガスが取り囲んでいる.
クレジット: 国立天文台

詳しくは理論研究部プレスリリース「明らかになった大質量星の最期の姿 — 厚いガスに包まれた星の終焉」をご覧ください.
(2018/09/04)

"The delay of shock breakout due to circumstellar material evident in most type II supernovae"
F. Förster, T. J. Moriya et al. (2018) Nature Astronomy
[link]


守屋尭 (personal website)



生命の起源と左利きアミノ酸の謎を解く ― 素粒子起源論を提唱 ―


国立天文台,東京大学,ウェスタン・ミシガン大学,オハイオ州立大学の研究者からなる国際共同研究グループは、宇宙空間で左手系の鏡像キラリティー(左利き)を持つアミノ酸が選択的に生き残るメカニズムを考え出し,新理論を提案しました.この理論は,自然界の基本的な対称性に関する素粒子物理学,電磁気学,生物学および化学の諸原理を組み合わせたもので,理論を宇宙・天体現象に応用して,キラリティーの選択性を定量的に実証したものです.素粒子レプトン(電子およびニュートリノを含む自然界の最も小さな単位)もまた,キラリティーを持ちます.ニュートリノは全て左利きです.宇宙磁場中の分子は、レプトンと相互作用することができ,レプトンとアミノ酸のキラリティーの組み合わせに依存した異なる相互作用を示します。その結果,一方の鏡像を他方の鏡像よりも選択的に破壊することができるのです.自然界におけるアミノ酸キラリティーの偏りは,約170年前にルイスパスツールが分子キラリティーを研究して以来,未解決の問題でした.地球上の生命が殆ど完全に左利きアミノ酸から作られている謎の解明に結びつくものと期待されます。本研究成果は,2018年6月11日付でサイエンティフィック・レポート(ネイチャー・ジャーナル)に掲載されました.

図:「左利き」と「右利き」のアミノ酸アラニン。灰色、赤色、青色、白色の球体は、それぞれ炭素、酸素、窒素、水素を表わします。

詳しくはこちら
(2018/07/25)

"Amino Acid Chiral Selection Via Weak Interactions in Stellar Environments: Implications for the Origin of Life" Famiano M.A., Boyd, R.N, Kajino, T., Onaka, T., & Mo, Y., Scientific Reports, vol 8. (2018)
[link]

"Selection of Amino Acid Chirality via Neutrino Interactions with 14N in Crossed Electric and Magnetic Fields" Famiano, M.A., Boyd, R.N., Kajino, T., & Onaka, T., Astrobiology 18, 190 (2018).

梶野敏貴 (personal website)



地球型惑星形成の最新シミュレーション


惑星は、恒星の周りに存在する円盤状のガス(原始惑星系円盤)の中で形成したと考えられています。この円盤から形成中の惑星は様々な影響を受けるため、惑星形成を研究する際には円盤の性質に注意することが重要になります。私たちは、最新の原始惑星系円盤進化理論(例えば磁気駆動円盤風の効果)を考慮したシミュレーションによって、地球型惑星の形成を調べました。研究の結果、太陽系では水星よりも内側の軌道には惑星が存在しませんが、この特徴は磁気駆動円盤風の影響による1kmより小さな天体の軌道移動で説明できるという説を提唱しました。また、これまでに発見された太陽系外惑星の大部分を占める「短周期スーパーアース」の軌道の性質も、現実的な円盤進化を考えることによって説明できることを示しました(図参照)。
(2018/06/18)

Ogihara, Kokubo et al. 2018, A&A, 612, L5
[ADS] [arXiv]

Ogihara, Kokubo et al. 2018, A&A, in press
[ADS] [arXiv]

荻原正博 (personal website)



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