国立天文台 理論研究部

Research Highlights

磁場で支えられた分子フィラメントの偏波構造

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Herschel衛星によるダスト熱輻射の観測から、分子雲がフィラメント状の要素からなることが知られるようになった(Menshchikovら2010)。一方で、近赤外線領域の星間偏光の観測からは、このフィラメントが星間磁場に垂直であることが示された(Sugitaniら2011)。
観測に対応する、垂直な磁場によって支えられた等温の平衡形状(重力と磁場によるローレンツ力、圧力、回りの星間外圧の力学的釣り合い)を自己無撞着場の方法で計算し、重力に抗して支えられる臨界線質量λmaxを得た(Tomisaka 2014)。今回、このフィラメントで予想されるダスト熱輻射の偏波構造を調べた。
熱輻射の偏波は星間磁場に垂直方向に星間ダストの長軸が整列していることによって生じる。図でカラーは偏波度を、棒線は偏波のBベクトルを表し、左の図でθ=80度、φ=90度、つまり、z方向に伸びるフィラメントのほぼ真横で、大局的な磁場Bの方向から観測した場合を示している。中央の図は、フィラメントの中心と表面の密度比が10倍である低密度フィラメントに、右の図は、同じく密度比が300倍の高密度フィラメントに対するものを示している。
この例のように、星間磁場の方向から観測した場合、中央の図のように一般に偏波は弱くなることが予想されるが、高密度フィラメントの場合は、横向きに星間磁場が貫いているときの偏波構造を示すことがわかった。これは、フィラメントの軸と星間磁場が垂直な観測例が多いことへの説明になっていると考えられる。
(2015/5/25)
Polarization Structure of Filamentary Clouds, by Tomisaka, Kohji, 2015, ApJ, in press
[ADS] [arXiv]
富阪幸治 (private website)



r過程元素の起源解明に大きく前進


理化学研究所のEURICA国際共同研究グループは、重イオン加速器施設「RIビームファクトリー」を用いて、110個の中性子過剰な原子核の寿命を高い精度で測定しました。測定された110個の原子核のうち、40個の寿命は世界で初めて測定されたものです。国立天文台理論研究部の柴垣翔太(東京大学博士課程2年)と梶野敏貴准教授らと協力して、新たに得られた原子核の寿命を取り入れたr過程の理論計算を行いました。太陽系や金属欠乏星の元素組成比と比較すると、超新星爆発の元素合成シナリオと矛盾しない結果が得られました。

(左図)太陽系(現在)と金属欠乏星(初期銀河)の間の重元素組成パターンの普遍性(ユニバーサリティー)。原子番号50-55を除く重元素の全領域で、超新星爆発でのr過程元素合成シナリオと矛盾しない。
(右図)超新星爆発からさまざまな重元素が形成・放出される場面のイメージ図。
Credit: 超新星イラスト:池下章裕/粒子CG制作&合成:三上真世(国立天文 台広報室)

詳しくは下記ウェブサイトをご覧下さい。
理化学研究所プレスリリース
国立天文台
(2015/05/14)
β-Decay Half-lives of 110 Neutron-Rich Nuclei across the N = 82 Shell Gap: Implications for the Mechanism and Universality of the Astrophysical r-process
G. Lorusso, et al., Phys. Rev. Lett. 114.192501
柴垣翔太、梶野敏貴 (personal website)



相対論的プラズマ速度分布関数の生成アルゴリズム


プラズマ粒子シミュレーションやモンテカルロシミュレーションでは乱数を使って粒子の速度分布関数を生成しますが、相対論的に動く系での分布を扱う方法は実はよく知られていませんでした。本稿では、棄却法を使って分布関数全体をローレンツ変換するアルゴリズムを提案しています。
(2015/05/07)
Seiji Zenitani, Phys. Plasmas 22, 042116 (2015).
[Journal] [arXiv]
銭谷誠司 (personal website)



星団の初期質量関数



星団は分子雲での集団的な星形成によって生まれ、その質量は天の川銀河の星団で数十〜数万太陽質量と様々です。観測されている星団の質量関数は約-2のべき乗であることが知られていますが、その起源はまだ明らかになっていません。乱流を持つ分子雲では、分子雲がフィラメントと節を持つ構造を作り、その構造に沿って星、星団が形成します。これまでの星団形成シミュレーションは星団一個程度の規模でしたが、今回の研究では流体シミュレーションとN体シミュレーションを分けることでシミュレーションを単純化し、これまでより大規模な星団形成シミュレーションに行いました。シミュレーションでは、一つの巨大分子雲から百から数万太陽質量の星団が数十個形成しました。形成した星団の質量関数は分子雲の質量を用いSchechter関数で表すことができ、そのべきは2Myr後で-1.73、10Myr後で-1.67で、Carina領域の星団の質量関数と一致しています。この結果を用い、銀河の分子雲の質量関数を基に銀河全体での星団の質量関数を求めると、そのべきは-2程度になり、天の川銀河、M31、M83で観測されている若い星団の質量関数と一致しました。これらの結果は、分子雲の分布とその乱流によって星団の質量関数が決まっていることを示唆しています。
(2015/4/23)
Michiko Fujii and Simon Portegies Zwart, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, 449, 726-740 [ADS]
藤井 通子 [personal webpage]

Conference/Workshop

第3回 DTAシンポジウム:
The Origins of Planetary Systems: from the Current View to New Horizons

2015年6月1日(月)〜 4日(木)
国立天文台 三鷹キャンパス 大セミナー室
webpage: http://th.nao.ac.jp/meeting/dta2015a_planet/

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